直列形定電圧回路と電流制限形保護回路 ていでんあつほご
負荷と直列に入れた制御用トランジスタの電圧降下を、誤差増幅器が基準電圧(ツェナー)と出力の分圧を比べて調節し、出力電圧を一定に保つ回路。負荷電流を検出抵抗で見張り、規定を超えると制御用トランジスタのベース電流を減らすのが電流制限形保護回路。
回路図を見て Tr1〜Tr3・R1〜R5 の役割を当てる穴埋め。負荷電流が流れる検出抵抗は R4、その電圧が VS(約 0.6〔V〕)を超えると導通する保護用が Tr2、ベース電流を減らされる制御用が Tr3、ツェナーと分圧を比べる誤差増幅器が Tr1。「出力電圧が下がる→誤差増幅器のコレクタ電流が減る→制御用のベース電位が上がる→出力が戻る」の向きを追えるようにしておく。
直列形定電圧回路は、水道の蛇口のようなものです。入力と負荷の間にトランジスタ(蛇口)を置き、出力電圧を見張る係(誤差増幅器)が蛇口の開き具合を調節します。出力が下がれば開き、上がれば絞ります。基準になる水位がツェナーダイオードの電圧です。保護回路は、流れ過ぎたときに蛇口を強制的に絞る安全装置です。

各素子の役割
- Tr3(制御用トランジスタ) 入力と出力の間に直列に入り、負荷電流 IL を全部流す。ベース電位を上げると出力電圧が上がる
- R5 入力からTr3 のベースへバイアスを与える抵抗。Tr1 と Tr2 はこのベース電流を「横取り」して Tr3 を絞る
- Dz と R3 基準電圧。R3 でツェナーに電流を流し、ほぼ一定の VZ を作る
- R1・R2 出力電圧 VO を分圧して誤差増幅器に渡す。出力の「見張り」
- Tr1(誤差増幅器) R1・R2 の分圧とツェナー電圧を比べる。分圧が高いとコレクタ電流が増えて Tr3 を絞り、低いと減らして Tr3 を開く
- R4(電流検出抵抗) 負荷電流の戻り線に入れた小さな抵抗。IL に比例した電圧 IL×R4 を作る
- Tr2(保護用トランジスタ) R4 の電圧がベース・エミッタ間にかかる。約 0.6〔V〕を超えると導通して Tr3 のベース電流を奪い、IL を制限する
VZ はツェナー電圧、VBE は Tr1 のベース・エミッタ間電圧(約 0.6〔V〕)。誤差増幅器は「R2 の電圧 = VZ+VBE」になるように Tr3 を動かす。R1 を大きくすると VO が上がる
VS は Tr2 が導通し始めるベース・エミッタ間電圧(シリコンで約 0.6〔V〕)。R4=0.6〔Ω〕なら約 1〔A〕で制限が始まる。R4 を小さくすると制限電流は大きくなる

典型問題の解き方(回路図の穴埋め)
手順
- 負荷電流の道をたどる 入力+ → Tr3(コレクタ→エミッタ)→ 負荷 → R4 → 入力−。この道にある抵抗が検出抵抗 R4、トランジスタが制御用 Tr3
- R4 の両端につながるトランジスタを探す R4 の電圧をベース・エミッタ間に受けているのが保護用 Tr2。IL が増えて IL×R4 > VS で導通
- Tr2 のコレクタの行き先を見る Tr3 のベース。Tr2 が導通すると R5 からのベース電流を横取りし、Tr3 のベース電流が減って IL の増加が止まる
- 残ったトランジスタが誤差増幅器 Tr1 のベースは R1・R2 の分圧、エミッタは Dz。VO が下がる → 分圧が下がる → Tr1 のコレクタ電流が減る → R5 の電圧降下が減る → Tr3 のベース電位が上がる → VO が戻る
- 答え A=Tr2、B=R4、C=Tr3、D=Tr1
R5 には負荷電流は流れません(Tr3 のベースバイアス用)。検出抵抗は負荷電流が「全部」通る R4 です。また「出力電圧が低下すると誤差増幅器のコレクタ電流が増える」は逆です。減るからこそ制御用のベース電位が上がって出力が回復します。制御用と誤差増幅器を入れ替えた肢に注意してください。
直列形は応答が速くリプルも小さい反面、制御用トランジスタに (Vi−VO)×IL の損失が出て熱くなります。大電流では放熱器が必須で、効率はスイッチング方式より劣ります。単純な電流制限形は短絡時に ILmax×Vi の損失が制御用トランジスタにかかるため、短絡時に電流をさらに絞るフォールドバック(垂下)形にすることがあります。

この用語を押さえる問題
次の記述は、図に示す直列形定電圧回路に用いられる電流制限形保護回路の原理的な動作等について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。なお、同じ記号の[ ]内には、同じ字句が入るものとする。 (1) 負荷電流 IL〔A〕が規定値以内のとき、保...
正答: A=Tr2 B=R4 C=Tr3 D=Tr1
正答。負荷電流 IL は制御用トランジスタ Tr3 と検出抵抗 R4 を流れ、R4 の電圧降下が Tr2 のベース・エミッタ間にかかる。IL が増えて R4 の電圧が VS(約 0.6 V)を超えると保護用 Tr2 が導通し、Tr3 のベース電流を横取りして IL を制限する。一方、VO が低下すると R1、R2 の分圧が下がり、Dz を基準とする誤差増幅器 Tr1 のコレクタ電流が減って Tr3 のベース電位が上がり、VO を回復させる。
この問題を解く