トランジスタのバイアス回路(固定・自己・電流帰還) とらんじすたのばいあすかいろ
トランジスタを増幅器として働かせるため、信号が無いときのベース電流とコレクタ電流(動作点)を決めておく直流回路。ベース抵抗のつなぎ方で固定バイアス・自己バイアス・電流帰還バイアスに分かれ、温度に対する安定度が違う。
令和8年1月期 問11 は自己バイアス回路で IC = 2〔mA〕にする IB と RB を求める計算(hFE = 200、VBE = 0.6〔V〕→ IB = 0.01〔mA〕、RB ≒ 540〔kΩ〕)。IC = hFE·IB と、RB の両端電圧が「コレクタ電圧 − VBE」であることが鍵です。3 方式の安定度の順(電流帰還 > 自己 > 固定)と、各方式の IB の式の穴埋めも定番です。
トランジスタは、ベースに少し電流を流しておかないと信号の負の側が切れてしまいます。そこであらかじめ直流のベース電流 IB を流し、コレクタ電流 IC を電源電圧の真ん中あたりに置いておきます。これがバイアスです。IB をどこから取るかで 3 つの回路があり、温度が上がったとき IC がどれだけ増えてしまうか(安定度)が変わります。

hFE はエミッタ接地の直流電流増幅率(100〜数百)。IC を決めてから IB = IC/hFE で逆算するのが計算の出発点
RB を電源 V から直接ベースへ。V と RB だけで IB が決まり hFE の変化に追従しないので、温度で IC が増えても止める仕組みがない(安定度が最も悪い)
RB はコレクタからベースへ。IC が増えるとコレクタ電圧 VC が下がり IB が減るので、IC の増加が抑えられる。RC には IC + IB が流れることに注意
R1・R2 の分圧でベース電圧を固定し、RE で IE を決める。IC が増えると RE の電圧が上がり VBE が減って IB が減る。hFE にほとんど依らず最も安定。RE の交流分はバイパスコンデンサで逃がす

典型問題の解き方(自己バイアスで IC = 2〔mA〕、hFE = 200、VBE = 0.6〔V〕、RC = 2〔kΩ〕、V = 10〔V〕)
手順
- ベース電流を出す IB = IC/hFE = 2/200 = 0.01〔mA〕
- RC に流れる電流 RB がコレクタから分岐しているので RC には IC + IB = 2.01〔mA〕が流れる
- コレクタ電圧 VC = V − RC(IC + IB) = 10 − 2×10³×2.01×10⁻³ ≒ 5.98〔V〕
- RB の両端電圧 RB はコレクタとベースの間なので VC − VBE = 5.98 − 0.6 = 5.38〔V〕
- RB を出す RB = 5.38/(0.01×10⁻³) = 538×10³ ≒ 540〔kΩ〕。電源 10〔V〕から引いた (10 − 0.6)/0.01m = 940〔kΩ〕は固定バイアスの式で誤り
安定度の順と理由

自己バイアスの RB は「電源」ではなく「コレクタ」につながっています。RB の電圧を V − VBE で計算すると値が 2 倍近く違います。また VBE は 0〔V〕ではなく 0.6〜0.7〔V〕を引きます。IB = IC/hFE の hFE は直流の電流増幅率で、小信号の hfe と混同しないこと。安定度は「電流帰還 > 自己 > 固定」で、肢では順を逆にして出ます。

この用語を押さえる問題
図に示すトランジスタ (Tr) の自己バイアス回路において、コレクタ電流 IC を 2〔mA〕にするためのベース電流 IB と抵抗 RB の値の組合せとして、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、Tr のエミッタ接地直流電流増幅率 hFE を 200、回路のベース-エミッ...
正答: IB=0.01〔mA〕 RB=540〔kΩ〕
正しい。IB = IC/hFE = 2〔mA〕/200 = 0.01〔mA〕。RC には IC + IB ≒ 2.01〔mA〕が流れるので、コレクタ電圧は VC = 10 − 2×10³×2.01×10⁻³ ≒ 5.98〔V〕。RB はコレクタとベースの間にあり、両端電圧は VC − VBE = 5.98 − 0.6 = 5.38〔V〕。RB = 5.38/(0.01×10⁻³) = 538×10³ ≒ 540〔kΩ〕。
この問題を解く問われた問題 3
- 一陸技 令和8年1月期 問11 図に示すトランジスタ (Tr) の自己バイアス回路において、コレクタ電流 IC を 2〔mA〕にするための...
- 二陸特 令和3年10月期 問14 図のようなトランジスタに流れる電流の性質で、誤っているのはどれか。
- 二陸特 平成31年2月期 問14 半導体を用いた電子部品の温度が上昇すると、一般にその部品に起こる変化として、正しいのは次のうちどれか。