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FET の動作原理と増幅回路(接地方式・カスコード) えふいーてぃーのかいろ

一陸技

ゲート電圧でチャネルの電流を制御する FET の動作(MOS 形の空乏層・反転層、エンハンスメント/デプレッション)と、ソース接地・ドレイン接地・ゲート接地の増幅回路の性質。等価回路は電流源 gm·VGS で表し、出力インピーダンスなどを導く。

試験ではここ

令和8年1月期 問13 はドレイン接地(ソースホロワ)の出力インピーダンス Zo = RS/(1 + gmRS) を、短絡電流 Iso = gmVi と開放電圧 Voo から導く穴埋め。7月期 問11 は MOS 形 FET の「空乏層・エンハンスメント・反転層」の穴埋め、問12 はカスコード増幅回路(ソース接地 + ゲート接地、漂遊容量の結合が疎、高入力インピーダンス、高周波用)です。

FET はゲートの電圧で、ソースとドレインの間の通り道(チャネル)の太さを変えて電流を制御します。ゲートには電流がほとんど流れないので入力インピーダンスが高く、電圧で動く素子です。回路の計算では、FET を「VGS に比例した電流 gm·VGS を流す電流源」に置き換えると見通しがよくなります。

エンハンスメント形 N チャネル MOS FET の動作
エンハンスメント形 N チャネル MOS FET。VGS = 0 では空乏層で電流が流れず、VGS を正にするとゲート直下に反転層(チャネル)ができる

MOS 形 FET の 2 つの形式

  • エンハンスメント(増強)形 VGS = 0 では N⁺ 領域と P 形基板の PN 接合に空乏層があり D-S 間に電流が流れない。VGS を正にするとゲート直下の正孔が追い払われ、電子が集まって N 形の反転層ができ導通する
  • デプレッション(空乏)形 あらかじめチャネルがあり VGS = 0 でも電流が流れる。ゲート電圧でチャネルを狭めて電流を減らす。接合形 FET もこの動作
  • ユニポーラ どちらも 1 種類のキャリア(N チャネルなら電子)だけで動く。バイポーラトランジスタとの違いを示す分類の語で、形式名ではない
小信号の等価回路
I_D = g_m V_{GS}, \qquad g_m = \dfrac{\Delta I_D}{\Delta V_{GS}}\ [\mathrm{S}]

gm は相互コンダクタンス。ゲートは開放、ドレイン・ソース間に電流源 gmVGS を置く。ソース接地の電圧利得は Av = −gmRD(RD はドレイン抵抗)

FET の 3 つの接地方式
ソース接地・ドレイン接地・ゲート接地の 3 方式と、入力・出力インピーダンス、利得の大小

接地方式の性質

  1. ソース接地 入力インピーダンス高、電圧利得大(−gmRD、出力は逆相)。最も一般的。ゲート・ドレイン間容量がミラー効果で (1 + |Av|) 倍に見え、高周波で利得が落ちる
  2. ドレイン接地(ソースホロワ) 電圧利得は 1 弱(同相)、入力インピーダンス高、出力インピーダンス低 Zo = RS/(1 + gmRS) ≒ 1/gm。インピーダンス変換・バッファに使う
  3. ゲート接地 入力インピーダンス低(≒ 1/gm)、電圧利得大、入出力間の容量結合が小さく高周波で安定。カスコードの 2 段目に使う
ドレイン接地の出力インピーダンス
Z_o = \dfrac{V_{oo}}{I_{so}} = \dfrac{R_S}{1 + g_m R_S} \fallingdotseq \dfrac{1}{g_m}

Voo は出力開放時の電圧、Iso は出力短絡時の電流。gmRS ≫ 1 なら 1/gm。gm = 10〔mS〕なら約 100〔Ω〕と低い

ドレイン接地の等価回路と出力インピーダンス(令和8年1月期 問13)
令和8年1月期 問13 の等価回路。出力 cd を短絡すると VGS = Vi、開放すると VGS = Vi − Vo になる

典型問題の解き方(ドレイン接地の Zo を短絡電流と開放電圧から導く)

手順

  1. 短絡電流 Iso 出力 cd を短絡するとソースが接地され VGS = Vi。電流源の電流がそのまま流れて Iso = gmVi
  2. 開放電圧の式を立てる 開放時は電流源の電流が RS に流れ Vo = gmVGS·RS。ここで VGS = Vi − Vo(ソースの電位が上がる分だけゲート・ソース間電圧が減る)
  3. Vo について解く Vo = gmRS(Vi − Vo) → Vo(1 + gmRS) = gmRS·Vi → Voo = gmRS/(1 + gmRS)×Vi
  4. 割り算する Zo = Voo/Iso = [gmRS/(1 + gmRS)]Vi ÷ gmVi = RS/(1 + gmRS)
  5. 意味を確かめる RS と 1/gm の並列と同じ形。gm が大きいほど Zo は小さく 1/gm に近づく。負帰還なので分母は 1 + gmRS で、1 − gmRS ではない
カスコード増幅回路(ソース接地+ゲート接地)
カスコード増幅回路。ソース接地 FET の負荷に、入力インピーダンスの低いゲート接地 FET を縦に積む

カスコード増幅回路は、ソース接地段の負荷としてゲート接地段をつないだものです。ゲート接地段の入力インピーダンスが低いので初段の電圧利得は小さく、ミラー効果が抑えられて入出力間の漂遊容量による結合が疎になります。入力は初段のゲートなので入力インピーダンスは高く、利得は 2 段目で稼ぎます。安定なので高周波増幅回路に多く使われます。

ひっかけ

MOS 形の穴埋めは「VGS = 0 のとき PN 接合部にあるのは空乏層」「正電圧でゲート直下にできるのが反転層」で、肢は 2 語を入れ替えて出ます。VGS = 0 で電流が流れないのはエンハンスメント形です。カスコードの 2 段目は「ゲート接地」であって「ソース接地」ではなく、用途は「高周波」です。ドレイン接地の利得は 1 未満で、出力インピーダンスは「低い」ことも押さえてください。

上部の看板「VGS = 0 は空乏層、正電圧で反転層
空乏層 → 反転層でスイッチが入る。ソースホロワの出力は 1/gm で低い

この用語を押さえる問題

一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年1月期 無線工学の基礎 問13

次の記述は、図 1 に示す電界効果トランジスタ (FET) を用いたドレイン接地増幅回路の出力インピーダンス (端子 cd から見たインピーダンス) Zo〔Ω〕を求める過程について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。ただし、FET の...

正答: A=gmVi B=gmRS/(1+gmRS) C=RS/(1+gmRS)

正しい。cd を短絡するとソースが接地されるので VGS = Vi となり、電流源の電流がそのまま流れて Iso = gmVi。cd を開放すると Vo = gmVGS·RS、かつ VGS = Vi − Vo なので Vo = gmRS(Vi − Vo)、整理して Voo = gmRS/(1+gmRS)×Vi。Zo = Voo/Iso = [gmRS/(1+gmRS)]Vi/(gmVi) = RS/(1+gmRS)。

この問題を解く
一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学の基礎 問11

次の記述は、MOS 形電界効果トランジスタ(FET)の動作原理について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。なお、同じ記号の[ ]内には、同じ字句が入るものとする。 (1) 図 1 に示すように、ゲート - ソース(G - S)間電圧 ...

正答: A=空乏層 B=エンハンスメント C=反転層

正しい。VGS = 0 のとき、ソース・ドレインの N⁺ 領域と P 形基板の PN 接合には空乏層があり、どちらか一方が逆バイアスになるので D-S 間に電流は流れない。これがエンハンスメント(増強)形で、ゲートに電圧を加えてはじめて導通する。VGS を正にするとゲート直下の P 形基板から多数キャリアの正孔が追い払われ、少数キャリアの電子が集まって N 形の反転層(チャネル)ができ、D-S 間に電流が流れる。

この問題を解く
一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学の基礎 問12

次の記述は、図に示す電界効果トランジスタ(FET)を用いたカスコード増幅回路の原理的構成について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。 (1) FET のソース接地増幅器の負荷として、入力インピーダンスの低い[A]接地増幅回路が接続され...

正答: A=ゲート B=疎 C=高い D=高周波

正しい。カスコード増幅回路はソース接地段の負荷にゲート接地段を縦積みしたもの。ゲート接地段の入力インピーダンスが低いので初段の電圧利得は小さく、ミラー効果によるゲート-ドレイン間容量の見かけの増大が抑えられ、入出力間の漂遊容量による結合は疎になる。全体として入力は初段のソース接地なので入力インピーダンスは高く、利得は2段目で稼ぐ。帰還が少なく安定なので高周波増幅に多用される。

この問題を解く

問われた問題 3

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