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マイクロ波・ミリ波の電子管と半導体素子 まいくろはそし

一陸技

SHF・EHF 帯で発振や増幅に使う素子。電子管は進行波管(ら旋遅延回路、広帯域増幅)、クライストロン(空洞共振器、速度変調)、マグネトロン(磁界と空洞、大電力発振)。半導体はインパット・ガン・トンネルダイオード(負性抵抗で発振)、バラクタ、HEMT など。

試験ではここ

令和8年1月期 問12・7月期 問10 とも穴埋めで、「インパットダイオード = PN 接合のなだれ現象 + キャリアの走行時間効果 → 負性抵抗」「ガンダイオード = GaAs に強い直流電界 → ガン効果」「トンネルダイオード = 順方向の負性抵抗」「進行波管 = 界磁コイル内のら旋遅延回路、雑音が少なく広帯域の増幅」。空洞共振器を使うのはクライストロンとマグネトロンで狭帯域です。

周波数が GHz を超えると、普通のトランジスタではキャリアが電極間を走る時間が信号の周期と同じくらいになり、増幅できなくなります。そこで、電子ビームと電波を一緒に走らせる電子管や、「電圧を上げると電流が減る」負性抵抗を使う特別なダイオードが登場します。問題は「どの素子が、何の現象で、何をするか」の組合せです。

進行波管(TWT)の構造
進行波管の構造。電子銃からのビームと、ら旋遅延回路を進む電波が同じ速さで走り、相互作用で電波が増幅される

電子管 3 種

  1. 進行波管(TWT) 界磁コイル(または永久磁石)で集束した電子ビームに沿って、ら旋遅延回路を電波が進む。ら旋で電波の軸方向の速度を電子の速度まで遅らせ、両者の相互作用で増幅。共振器を持たないので広帯域・低雑音。衛星の中継器や中継局の電力増幅
  2. クライストロン 空洞共振器で電子ビームの速度を変調(速度変調)し、密度の濃淡に変えて取り出す。共振器のため狭帯域。反射形は発振器、多空洞形は大電力増幅器
  3. マグネトロン 陰極の周りに空洞共振器を並べた陽極を置き、電界に直角な磁界をかける。電子がサイクロイド運動しながら空洞を励振して発振。大電力の発振専用で、レーダー送信機や電子レンジ
電子の速度(加速電圧 V で加速したとき)
v = \sqrt{\dfrac{2 e V}{m}}

e は電子の電荷、m は質量。進行波管ではら旋の巻きでこの v に電波の軸方向の位相速度を合わせる。数 kV で光速の 1/10 程度になる

負性抵抗をもつ素子の電圧電流特性
負性抵抗をもつダイオードの電圧電流特性。トンネルは順方向の山の先、ガン・インパットは走行時間や電界で生じる

半導体素子

  1. インパットダイオード(IMPATT) PN 接合に逆方向の高電圧をかけたときのなだれ現象(アバランシ)と、キャリアの走行時間効果で電流が電圧より 180° 遅れ、負性抵抗となって発振。大電力だが雑音は多い
  2. ガンダイオード GaAs などに強い直流電界(数 kV/cm)をかけると電子が高エネルギーの谷へ移り移動度が下がるガン効果で負性抵抗を示し発振。PN 接合を持たない。低雑音で小電力の局部発振
  3. トンネルダイオード 高濃度にドープした PN 接合のトンネル効果で、順方向電圧を上げると電流が減る負性抵抗領域がある。これで発振・増幅
  4. バラクタダイオード 逆方向電圧で接合容量が変わる。可変容量として周波数逓倍・パラメトリック増幅・VCO に使う(発振はしない)
  5. PIN ダイオード・ショットキーダイオード PIN は逆バイアスで高インピーダンスになる高周波スイッチ・減衰器。ショットキーは金属と半導体の接合で少数キャリアの蓄積がなく、ミクサ・検波器
  6. HEMT・GaAs FET HEMT はヘテロ接合の 2 次元電子ガスを使い電子移動度が高い。ミリ波までの低雑音増幅(LNB など)。GaAs は Si より電子移動度が高く高周波向き
マイクロ波素子の対応表
素子ごとの「現象・用途・帯域」の対応表。問題はこの組合せを入れ替えて出す

典型問題の解き方(穴埋め「素子 → 現象 → 性質」)

手順

  1. 素子名から現象を結ぶ インパット → なだれ + 走行時間、ガン → 直流電界(GaAs)、トンネル → 順方向の負性抵抗、バラクタ → 可変容量
  2. 「負性」か「バイアス」か 発振に使うのはすべて負性抵抗。「バイアス抵抗」「負荷抵抗」の肢は消す
  3. 電子管は共振器の有無 ら旋遅延回路(進行波管)→ 広帯域・低雑音。空洞共振器(クライストロン・マグネトロン)→ 狭帯域
  4. 残った肢を確認 令和8年7月期 問10 なら「らせん遅延回路・負性・電界」が残る
ひっかけ

インパットは「なだれ現象」であって「降伏現象」の肢は誤りとされます。ガン効果は「電界」であって「電流」でも「磁界」でもありません。進行波管は「広帯域」、クライストロンは「狭帯域」で、逆にした肢が必ずあります。マグネトロンは増幅器ではなく発振器です。バラクタは可変容量で、トンネルダイオードの説明に「可変容量」が入った肢は誤りです。

上部の看板「ら旋=広帯域(進行波管)、空洞=狭帯域(クライストロン)、ダイオードは負性抵抗で発振
ら旋があれば広帯域、空洞があれば狭帯域。ダイオードは負性抵抗で発振する

この用語を押さえる問題

一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年1月期 無線工学の基礎 問12

次の記述は、マイクロ波やミリ波帯の回路に用いられる電子管及び半導体素子について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。 (1) インパットダイオードは、PN 接合の[A]とキャリアの走行時間効果により発振する。 (2) トンネルダイオード...

正答: A=なだれ現象 B=負性抵抗 C=広帯域

正しい。インパットダイオード(IMPATT)は PN 接合に逆方向の高電圧を加えたときのなだれ増倍とキャリアの走行時間遅れで電流が電圧に対し遅れ、負性抵抗を生じて発振する。トンネルダイオードはトンネル効果による順方向特性の負性抵抗領域を使う。進行波管はら旋遅延回路上を進む電波と電子ビームの相互作用で増幅し、共振構造がないので広帯域である。

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一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学の基礎 問10

次の記述は、マイクロ波(SHF)帯やミリ波(EHF)帯の回路に用いられる電子管及び半導体素子について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組み合わせを下の番号から選べ。 (1) 進行波管は、界磁コイル内に置かれた[A]の作用を利用し、雑音の少ない広帯域の増幅が可...

正答: A=らせん遅延回路 B=負性 C=電界

正しい。進行波管(TWT)は、らせん遅延回路で電磁波の軸方向の位相速度を電子ビームの速度程度まで遅らせ、両者の相互作用で増幅する。共振器を使わないので広帯域・低雑音である。インパット(IMPATT)ダイオードはなだれ降伏と走行時間効果によって電圧と電流の位相が 180° ずれ、負性抵抗として発振する。ガンダイオードは GaAs などに強い直流電界を加えると電子の有効質量が増えて移動度が下がる(ガン効果)ことで負性抵抗を示し発振する。

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問われた問題 2

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