無線通信ブートラボ
用語集 › 無線工学 › 工学B

方形導波管(遮断波長・TE10・管内波長) どうはかん

3アマ 一陸技

幅 a・高さ b(a>b)の金属の筒でマイクロ波を伝える線路。基本モード TE10 の遮断波長は λc=2a。管内波長 λg=λ/√(1−(λ/λc)²) は自由空間より長く、位相速度は光速より速く、群速度は遅い。

試験ではここ

令和8年7月期 工学B 問10 で「TEmn の遮断波長の式」「最も遮断波長が長いモード(TE10)の λc=2a」「管内波長 λ/√(1−(λ/2a)²)」「群速度は位相速度より遅い」の 4 空欄。m は a 方向、n は b 方向で、2b・速い・m と n の入替えが罠。同期では方向性結合器(ベーテ孔、問8)も出た。マジック T・遮断周波数の計算は定番。

導波管は芯線のない金属の筒です。電波は筒の壁で反射を繰り返しながらジグザグに進みます。筒の幅より波長が長すぎると壁の間に収まらず、進めません。この限界が遮断波長 λc です。ジグザグに進むので「壁に沿った見かけの波長」(管内波長 λg)は自由空間より長く、波の山が壁に沿って走る速さ(位相速度)は光速を超え、エネルギーが実際に運ばれる速さ(群速度)は光速より遅くなります。

方形導波管と TE10 モード
方形導波管の寸法 a(幅)・b(高さ)と、TE10 モードの電界分布。電界は b 方向に向き、a 方向に半波長 1 つ
TEmn モードの遮断波長
\lambda_c = \dfrac{2}{\sqrt{\left(\dfrac{m}{a}\right)^2 + \left(\dfrac{n}{b}\right)^2}} = \dfrac{1}{\sqrt{\left(\dfrac{m}{2a}\right)^2 + \left(\dfrac{n}{2b}\right)^2}}

m は幅 a 方向の半波の数、n は高さ b 方向の半波の数。m が a と、n が b と組になる。TE10(m=1、n=0)で λc=2a、TE20 で a、TE01 で 2b。a>b なので最も長いのは TE10=基本モード。遮断周波数 fc=c/λc

管内波長・位相速度・群速度
\lambda_g = \dfrac{\lambda}{\sqrt{1-\left(\dfrac{\lambda}{\lambda_c}\right)^2}},\quad v_p = \dfrac{c}{\sqrt{1-\left(\dfrac{\lambda}{\lambda_c}\right)^2}},\quad v_g = c\sqrt{1-\left(\dfrac{\lambda}{\lambda_c}\right)^2}

λ は自由空間波長。λ が λc に近づくと λg と vp は無限大、vg は 0 に向かう(伝わらなくなる)。vp·vg=c² の関係。λg>λ、vp>c>vg を覚える

管内波長・位相速度・群速度
波長 λ/λc に対する管内波長と速度。λ→λc で λg と vp が発散、vg が 0 に。使うのは λ<λc の範囲

導波管の使い方と性質

  • 使用範囲 TE10 だけを通すには a<λ<2a(TE20 の遮断波長 a より長く、2a より短い)。実用上は fc の 1.25〜1.9 倍程度
  • 損失 同軸より小さい(誘電体損がなく、表皮効果の導体損だけ)。大電力に向く
  • ハイパスフィルタ的 遮断周波数より低い周波数は伝わらない。同軸や平行二線にはこの性質はない
  • 整合・測定 管内の定在波は λg/2 周期。スロット付き導波管で λg を測り、λc から λ を逆算できる
導波管の部品:マジック T と方向性結合器
導波管の部品。マジック T(E 分岐と H 分岐の合成、分配・混合)と方向性結合器(進行波だけを一定比で取り出す)

導波管回路の部品(令和8年7月期 問8 のベーテ孔)

  • マジック T E 分岐(直列)と H 分岐(並列)を組み合わせた 4 ポート。E 分岐から入れると側枝 2 つに逆相で等分、H 分岐からは同相で等分。E と H の間は結合しない。バランスドミキサや整合測定に使う
  • 方向性結合器 主線路の進行波の一定割合(結合度 10〜30〔dB〕)だけを副線路に取り出す。反射波は出ない(方向性)。電力・反射の監視に使う
  • ベーテ孔方向性結合器 主・副導波管の広い面(H 面)を交差角 θ で重ね、共通壁に小さな孔をあける。電界結合の波は副導波管の両方向へ同相、磁界結合の波(cos θ に比例)は逆相で進む。θ を選んで振幅を等しくすると一方で打ち消し、他方で加わる

典型問題の解き方(令和8年7月期 問10 の穴埋め)

手順

  1. A:TEmn の遮断波長 m と a、n と b の組。1/√((m/2a)²+(n/2b)²)。(n/2a) と (m/2b) の肢は入替え
  2. B:最も長い遮断波長 a>b なので TE10 の 2a。2b は TE01 で短い
  3. C:その管内波長 λc=2a を入れて λ/√(1−(λ/2a)²)
  4. D:群速度と位相速度 vg=c√(…)<c<vp=c/√(…) なので群速度は遅い
  5. 答え 肢 3

数値の例(a=22.86〔mm〕の X バンド導波管で 10〔GHz〕)

  1. 遮断波長・遮断周波数 λc=2a=45.7〔mm〕、fc=3×10⁸/0.0457≒6.56〔GHz〕
  2. 自由空間波長 λ=3×10⁸/10¹⁰=30〔mm〕。λ/λc=0.656、(λ/λc)²=0.431
  3. 管内波長 λg=30/√(1−0.431)=30/0.754≒39.8〔mm〕(λ より長い)
  4. 速度 vp=c/0.754≒1.33c、vg=0.754c。令和8年の 2 期には数値計算は出ていない
ひっかけ

「管内波長は自由空間波長より短い」「群速度は位相速度より速い」はどちらも逆です。遮断波長の式で m と n の対応を入れ替えた肢、基本モードの遮断波長を 2b とした肢が並びます。ベーテ孔では「E 面を重ねる」「磁界結合が θ に無関係」「電界結合が cos θ に比例」が誤りで、重ねるのは H 面、θ に無関係なのは電界結合です。

上部の看板「TE10 の遮断波長は 2a
TE10 の遮断波長は 2a。管内波長は長く、位相速度は速く、群速度は遅い

この用語を押さえる問題

一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学B 問10

次の記述は、図に示す方形導波管について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。ただし、自由空間波長を λ〔m〕とする。 (1) TEmn モードの遮断波長は、[A]〔m〕である。 (2) 最も遮断波長の長いモードにおける遮断波長は、[B]...

正答: A=1/√((m/2a)²+(n/2b)²) B=2a C=λ/√(1−(λ/2a)²) D=遅い

正しい組合せです。幅 a、高さ b の方形導波管における TEmn モードの遮断波長は λc = 2/√((m/a)²+(n/b)²) = 1/√((m/2a)²+(n/2b)²) です。a > b のとき最長の遮断波長をもつのは TE₁₀(m=1, n=0)で λc = 2a、管内波長は λg = λ/√(1−(λ/λc)²) = λ/√(1−(λ/2a)²) です。群速度は vg = c√(1−(λ/λc)²) で光速より遅く、位相速度 vp = c/√(1−(λ/λc)²) は光速より速いので、群速度は位相速度より遅くなります。

この問題を解く
一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学B 問8

次の記述は、図に示す主導波管と副導波管を交差角 θ を持たせて重ね合わせて結合孔を設けたベーテ孔方向性結合器について述べたものである。このうち正しいものを下の番号から選べ。ただし、導波管内の伝送モードは TE₁₀ とし、θ は 90 度より小さいものとする。

正答: θ をある一定値にすることで、電界結合して左右に進む一方の電磁波を磁界結合した電磁波で打ち消すと同時に他方向の電磁波に相加わるようにする。

正しい記述です。電界結合による波は副導波管の左右へ同相で、磁界結合による波は左右へ逆相で進みます。磁界結合の大きさは cos θ に比例するので、θ を適当な値にして両者の振幅を等しくすると、一方の方向では打ち消し合って零になり、他方の方向では加わって出力が得られます。これが方向性の生じる仕組みです。

この問題を解く

問われた問題 8

!この用語の間違いを報告・追加要望
運営だけが読みます。「用語集に無い語」「その他」は内容を書いてください。