表皮効果と表皮厚さ ひょうひこうか
高周波の電流や電磁界が導体の表面近くに集中し、内部に入るほど指数的に減る現象。振幅が表面の 1/e(約 37〔%〕)になる深さが表皮厚さ δ=1/√(πfμσ) で、周波数 f・透磁率 μ・導電率 σ が大きいほど薄い。
令和8年1月期 工学B 問9 で「誤っているものを選べ」。定義(1/e になる距離)、「透磁率が小さいほど厚い」「減衰定数が小さいほど厚い」「周波数が高いほど薄い」は正しく、「導電率が小さいほど薄い」が誤り(小さいほど厚い)。δ=1/α、銅の 1〔GHz〕で約 2〔µm〕という数値感覚も問われる。
直流なら電流は導線の断面全体に均等に流れます。周波数が上がると、導体の中で変化する磁界がうず電流を作り、中心部の電流を打ち消して表面に押し出します。結果として電流は表面の薄い層だけに流れ、見かけの断面積が減って抵抗が増えます。この層の厚さの目安が表皮厚さです。マイクロ波帯では数 µm しかなく、導体の「中身」は何の役にも立ちません。

f は周波数〔Hz〕、μ は透磁率〔H/m〕(非磁性体なら μ0=4π×10⁻⁷)、σ は導電率〔S/m〕(銅 5.8×10⁷)。α は減衰定数で、導体内の振幅は exp(−αz) で減る。f・μ・σ のどれかが 4 倍になると δ は 1/2
何が変わると δ はどうなるか(問9 の肢の整理)

電流が厚さ δ の層だけに流れるとみなしたときの抵抗。√f に比例して増える。導波管や同軸線路の導体損失、空洞共振器の Q はこの Rs で決まる。表面を銀めっきしたり研磨したりするのは、電流が流れる表面層の σ を上げ凹凸を減らすため
典型問題の解き方(銅の 1〔GHz〕での表皮厚さ)
手順(σ=5.8×10⁷〔S/m〕、μ=4π×10⁻⁷〔H/m〕)
- 根号の中を計算 πfμσ=π×10⁹×4π×10⁻⁷×5.8×10⁷=4π²×5.8×10⁹≒2.29×10¹¹
- 平方根 √(2.29×10¹¹)≒4.79×10⁵
- 逆数 δ≒2.1×10⁻⁶〔m〕=約 2〔µm〕
- 確認 銅なら δ≒66/√f〔mm〕(f は Hz)で暗算できる。100〔MHz〕なら 6.6〔µm〕。令和8年の 2 期では数値計算は出ておらず、正誤問題だけだった
「導電率が小さいほど薄い」が誤りの肢です。導電率が小さい=電流が流れにくい=うず電流で打ち消す力が弱いので、電磁界はかえって深くまで入ります。直感と逆なので、式 δ=1/√(πfμσ) で σ が分母の根号の中にあることで確認してください。1/e は約 0.37 で、「半分になる深さ」ではありません。
表皮効果は実務の理由づけに頻出です。高周波の給電線が中空でも同じ(内部は使われない)、リッツ線(細線をより合わせて表面積を稼ぐ)、導波管内面の銀めっき、同軸の外部導体が薄い編組でよい、はすべて表皮厚さが薄いからです。

この用語を押さえる問題
次の記述は、有限な導電率の導体中へ平面波が浸透する深さを表す表皮厚さ(深さ)の一般的な特徴について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。ただし、平面波はマイクロ波(SHF)帯とし、e は自然対数の底で、e = 2.718 とする。
正答: 導体の導電率が小さいほど、薄く(浅く)なる。
誤った記述です。表皮厚さは δ = 1/√(πfμσ) で導電率 σ の平方根に反比例するので、導電率が小さいほど電磁波は深くまで浸透し、表皮厚さは厚く(深く)なります。銅のような高導電率の導体ほど表皮厚さは薄くなります。
この問題を解く