無線通信ブートラボ
用語集 › 無線工学 › 工学A

PLL 周波数シンセサイザ(整数 N・フラクショナル N) ぴーえるえるしんせさいざ

一陸技

VCO の出力を 1/N に分周して基準周波数 fref と位相比較し、fo=N·fref の安定な周波数を作る回路。N を変えて出力を切り替える。N と N+1 を周期的に切り替えて平均の分周比を非整数にしたフラクショナル N 型は fref より細かいステップが得られる。

試験ではここ

令和8年7月期 工学A 問17。フラクショナル N 型で fo=(N+F) fref、F=T(N+1)/(TN+T(N+1))(N+1 分周の期間の割合)。fref=10〔MHz〕、N=5、F=4/10 なら 10 サイクル中 1/5 分周が 6、1/6 分周が 4 で fo=54〔MHz〕、分子を 1 変えると 1〔MHz〕ステップ。整数 N 型のステップ=fref も定番。

水晶発振器は安定ですが周波数が固定です。送受信機はチャネルごとに違う周波数が要ります。そこで VCO(電圧で周波数が変わる発振器)を使い、その出力を 1/N に分周して水晶の基準と位相を比べ、ずれがあれば VCO を引き戻します。ロックすると fo/N=fref、つまり fo=N×fref で、水晶と同じ安定さの周波数が N の数だけ得られます。

整数 N 型 PLL 周波数シンセサイザ
整数 N 型 PLL 周波数シンセサイザ。位相比較器は fref と fo/N を比べ、差を LPF で直流にして VCO を制御する。ロック時 fo=N·fref
整数 N 型の出力周波数とステップ
f_o = N\,f_{\mathrm{ref}},\qquad \Delta f_o = f_{\mathrm{ref}}

N は可変分周器の分周数(整数)。基準発振器の出力をさらに 1/M に分周して fref を作ることが多い。チャネル間隔 12.5〔kHz〕なら fref=12.5〔kHz〕にする。fref を下げるほど細かいが、ループの応答が遅くなり位相雑音も増える

フラクショナル N 型 PLL 周波数シンセサイザ
フラクショナル N 型。アキュムレータがクロックごとにフラクションを足し、桁あふれのたびに分周比を 1/N から 1/(N+1) に切り替える
フラクショナル N 型の平均周波数
f_o = \left(N + F\right) f_{\mathrm{ref}},\qquad F = \dfrac{T_{N+1}}{T_N + T_{N+1}}

F はフラクション(0〜1 の分数)。TN は N 分周している期間、TN+1 は N+1 分周している期間。平均の分周比が N+F になるので fref より細かいステップ F×fref が得られる

fref=10 MHz、N=5、F=4/10 の分周パターン
fref=10〔MHz〕、N=5、F=4/10 のときの 10 サイクル。1/5 分周が 6 サイクル、1/6 分周が 4 サイクルで平均 5.4、fo=54〔MHz〕

典型問題の解き方(fref=10〔MHz〕、N=5、フラクション 4/10)

手順

  1. フラクションの意味 10 サイクル中 4 サイクルだけ N+1=6 分周、残り 6 サイクルは N=5 分周。F=TN+1/(TN+TN+1)=4/10
  2. 平均の分周比 (5×6+6×4)/10=54/10=5.4=N+F
  3. 出力周波数 fo=5.4×10 MHz=54 MHz
  4. ステップ 分子を 1 変えると F が 0.1 変わるので fo は 0.1×10 MHz=1 MHz ずつ動く。整数 N 型なら 10 MHz ステップだった

フラクショナル N 型の長所と短所

  1. 長所 fref を高く保ったまま細かいステップが得られる。fref が高いのでロックアップが速く、分周数 N が小さいので位相雑音(基準の雑音が 20 log N 倍される)も小さい
  2. 短所 分周比を周期的に切り替えるので F×fref の周期で位相誤差が生じ、スプリアス(フラクショナルスプリアス)が出る。ΔΣ 変調で切替パターンをランダム化して高域に追いやり、LPF で落とす
ひっかけ

フラクションは N+1 分周している期間の割合 TN+1/(TN+TN+1) です。TN/(TN+TN+1) は 1−F で、別物です。4/10 なら「1/6 分周が 4 サイクル、1/5 分周が 6 サイクル」で、4 と 6 を入れ替えた肢があります。5 と 5 だと F=0.5 で 55〔MHz〕になり 54〔MHz〕に合いません。

上部の看板「PLL シンセサイザ:fo=N·fref
整数 N は fo=N·fref でステップ fref。フラクショナルは N と N+1 を混ぜて平均 N+F

この用語を押さえる問題

一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学A 問17

次の記述は、図に示す原理的構成例のフラクショナル N 型 PLL 周波数シンセサイザの動作原理について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。ただし、N は正の整数とし、TN は N 分周する期間を、TN+1 は (N+1) 分周する期間...

正答: A=TN+1/(TN+TN+1) B=6 C=4

正答。N 分周と (N+1) 分周を切り替えると平均分周比は N+TN+1/(TN+TN+1) となるので、フラクションは TN+1/(TN+TN+1)。フラクション 4/10 では 10 サイクル中 4 サイクルが 1/6 分周、6 サイクルが 1/5 分周となる。平均分周比 5.4 より fO=5.4×10 MHz=54 MHz。分子を 1 変えるとフラクションが 0.1 変わるので fO は 1 MHz ステップで変化する。

この問題を解く

問われた問題 1

!この用語の間違いを報告・追加要望
運営だけが読みます。「用語集に無い語」「その他」は内容を書いてください。