無線通信ブートラボ
用語集 › 無線工学 › 工学B

球面波と平面波(波面・遠方界の距離 2D²/λ) きゅうめんはとへいめんは

一陸技

点の波源から出た電波は、等位相面(波面)が球面に広がる球面波。遠く離れると開口の範囲では波面が平らになり平面波とみなせる。開口面アンテナは一次放射器の球面波を反射鏡やレンズで平面波に直し、アンテナ測定は 2D²/λ 以上離して平面波で受ける。

試験ではここ

令和8年7月期 問18 は測定で距離を大きくとる理由が「平面波」とみなすため(球面波は誤り)、可逆性・オープンサイトとの組合せ。1月期 問12 はカセグレンで一次放射器の球面波が主反射鏡で平面波になる。同期 問13 は誘電体レンズの等位相条件 r = (n − 1)l/(n cos θ − 1)。

池に石を落とすと波紋が丸く広がります。電波も点から出ると、同じ位相の面(波面)が球になって広がります。ずっと遠くでアンテナの大きさ程度の範囲だけを見ると、球面はほとんど平らで、平面波とみなせます。

点の波源から広がる球面の波面が、遠くのアンテナの開口ではほぼ平らになる図
遠くでは開口の範囲で平面波とみなせる
開口の端と中央の通路差と遠方界の距離
\Delta \fallingdotseq \dfrac{D^2}{8R} \le \dfrac{\lambda}{16} \;\Rightarrow\; R \ge \dfrac{2D^2}{\lambda}

D はアンテナの開口(最大寸法)、R は距離。位相差 22.5°(λ/16)以内なら平面波とみなせる。例: D = 1〔m〕、10〔GHz〕(λ = 0.03〔m〕)で R ≥ 約 67〔m〕

開口の中央と端までの通路差 Δ から、遠方界の距離 R ≥ 2D²/λ を導く図
平面波とみなせる距離は 2D²/λ 以上

球面波と平面波の違い

アンテナが球面波を平面波に直すしくみ

  1. パラボラ 焦点(一次放射器の位相中心)から出た球面波が回転放物面で反射し、平面波になる
  2. カセグレン 副反射鏡(回転双曲面)の焦点の一方を主反射鏡の焦点、他方を一次放射器の励振点に合わせる。一次放射器の球面波 → 副反射鏡 → 主反射鏡 → 平面波
  3. 誘電体レンズ レンズ内は速度が遅い(n = V0/Vd > 1)。中心ほど厚くして遅らせ、等位相面をそろえる。r = (n − 1)l/(n cos θ − 1)
  4. ホーン 開口が大きいと開口面の中央と端で通路差ができ、球面波のままで位相がずれる(開口効率が下がる)
ひっかけ

アンテナ測定で距離をとるのは 平面波 とみなすためで、「球面波とみなすため」は誤りです。カセグレンで一次放射器から出るのは 球面波、主反射鏡で反射した後が 平面波 で、順番を逆にした肢が出ます。誘電体レンズの屈折率は n = V0/Vd で、Vd/V0 では 1 より小さくなります。

先生の挿絵。アンテナ測定で離すのは球面波で測るためと思う受験生
距離をとるのは平面波とみなすため
ポイント

2D²/λ は「D が 2 倍なら距離は 4 倍、周波数が 2 倍でも距離は 2 倍」。大きく高い周波数のアンテナほど遠方界は遠くなり、屋外のオープンサイトや電波暗室のコンパクトレンジが使われます。

この用語を押さえる問題

一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学B 問18

次の記述は、アンテナの測定をするときに考慮すべき事項について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。 (1) 被測定アンテナを、送信アンテナとして使用した場合と受信アンテナとして使用した場合のアンテナ利得及び指向性は、アンテナの[A]から...

正答: A=可逆性 B=平面波 C=オープンサイト

正しい組合せです。アンテナには相反定理に基づく可逆性があり、送信用に使っても受信用に使っても利得と指向性は等しくなります。利得・指向性の測定では、受信アンテナの開口面に到来する波が平面波とみなせるよう、送受信間の距離を 2D²/λ(D はアンテナの開口寸法)以上にとります。屋外測定では建造物や樹木の反射波の影響を避けるため、周囲に反射物のない開けた場所であるオープンサイトで実施します。

この問題を解く
一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年1月期 無線工学B 問12

次の記述は、カセグレンアンテナについて述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。 (1) 副反射鏡の二つの焦点のうち、一方の焦点は、主反射鏡の焦点と一致し、他方の焦点は、[A]の励振点と一致している。 (2) 一次放射器から放射された[B]...

正答: A=一次放射器 B=球面波 C=平面波 D=小さい

正しい組合せです。カセグレンアンテナの副反射鏡は回転双曲面で、その一方の焦点を主反射鏡(回転放物面)の焦点に、他方の焦点を一次放射器の励振点(位相中心)に一致させます。一次放射器から出た球面波は副反射鏡で反射されて主反射鏡の焦点から出たのと等価な球面波となり、放物面の主反射鏡で反射されて平面波になります。オフセット形は副反射鏡や一次放射器が主反射鏡の開口面の前方に無いため、それらによるブロッキング(遮へい)がなく、放射特性の乱れが小さくなります。

この問題を解く
一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年1月期 無線工学B 問13

次の記述は、図に示す誘電体レンズの波源 O から誘電体上の点 P までの距離を求める式の算出について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。ただし、中心線 R'F の延長線上の O からレンズ面上の点 F 及び点 P までの距離を、それぞ...

正答: A=(r cos θ − l)/Vd B=V₀/Vd C=(n−1)l/(n cos θ − 1)

正しい組合せです。点 P の軸方向の位置は r cos θ、点 F の位置は l なので、レンズ内を進む距離は P を通る経路の方が (r cos θ − l) だけ短く、その分の時間差 (r cos θ − l)/Vd を F 経路に加えると到達時間が等しくなります(等位相面の条件)。屈折率は n = V₀/Vd です。式①に代入して V₀ を掛けると l + n(r cos θ − l) = r、整理して r(n cos θ − 1) = (n−1)l、したがって r = (n−1)l/(n cos θ − 1) となります。これは双曲線の式で、θ = 0 のとき r = l です。

この問題を解く

問われた問題 3

!この用語の間違いを報告・追加要望
運営だけが読みます。「用語集に無い語」「その他」は内容を書いてください。