相互変調と混変調(受信機のひずみ) そうごへんちょうとこんへんちょう
受信機の増幅回路などの非直線性により、通過帯域外の強い妨害波から希望波の近くに新しい周波数成分が生まれるひずみ。妨害波どうしの積が相互変調、妨害波の変調信号が希望波の搬送波に乗り移るのが混変調。
穴埋めの定番。2f1−f2 と 2f2−f1 は係数の和が 3 なので「3次」の相互変調積。混変調は希望波の搬送波が「変調」を受け、成分は fd±fm。測定法(二信号法)は SG1 を f0+Δf、SG2 を f0+2Δf、無変調、1.78〔mV〕以上、入力電圧は信号源の開放電圧。衛星中継器のバックオフも同じ非直線性の話。
増幅器やミキサは、入力が大きくなると出力が比例しなくなります(非直線性)。そこに強い電波が 2 つ入ると、2 つの周波数の足し引きで新しい周波数が生まれます。これが相互変調です。生まれた成分が希望波の帯域内に落ちると、目的の信号を邪魔します。一方、強い妨害波 1 つの「変調の中身」が希望波の搬送波に乗り移るのが混変調です。

a1 が本来の増幅、a2 の項から 2 次積(f1±f2、2f1、2f2)、a3 の項から 3 次積(2f1±f2、2f2±f1、3f1)が出る。vi に f1 と f2 の 2 波を入れて展開すると確かめられる
2f1−f2 は 2+1=3 で 3 次、3f1−2f2 は 5 次。奇数次の差の成分(2f1−f2 など)だけが通過帯域のそばに落ちるので問題になる
V1、V2 は 2 つの妨害波の振幅。振幅の 3 乗に比例するので、入力を 1〔dB〕上げると 3 次積は 3〔dB〕増える(基本波は 1〔dB〕)。両者が交わる仮想の点が IP3(3 次インターセプトポイント)
2 次積と 3 次積の違い

fd は希望波の搬送波、fu は妨害波の搬送波、fu+fm は妨害波の側波帯。3 波の 3 次積から妨害波の搬送波 fu が消え、希望波のそばに fd±fm が残る。これが「妨害波の変調信号で希望波が変調される」の正体
相互変調は「妨害波どうし」の積で、希望波がなくても生じます。混変調は「妨害波の変調信号 × 希望波の搬送波」なので、希望波を受信している最中に起きます。どちらも原因は同じ非直線性で、対策も同じです。前段の利得を欲張らない、通過帯域外をフィルタで落とす、強入力時にアッテネータを入れる、が基本です。
典型問題の解き方(FM 受信機の相互変調特性の測定・二信号法)

手順
- 基準の雑音を測る SG2 を OFF、SG1 を試験周波数 f0 で規定の変調にし、20〔dBμV〕以上を加えて規定の復調出力に合わせる。次に SG1 も OFF にし、そのときの復調出力(雑音)レベルを記録する
- 妨害波を置く SG1 を f0+Δf、SG2 を f0+2Δf に設定する。2(f0+Δf)−(f0+2Δf)=f0 なので、3 次積がちょうど試験周波数に落ちる
- 無変調で上げていく SG1・SG2 を無変調にし、2 つの出力電圧を等しく保ちながら上げる。復調出力の雑音が基準より 20〔dB〕低くなった(雑音が抑圧された)ときの入力電圧を読む
- 下側でも測る SG1 を f0−Δf、SG2 を f0−2Δf にして同じ測定を行う。上・下の入力電圧がどちらも 1.78〔mV〕以上なら合格
- 単位の確認 1.78〔mV〕は 20log(1780)≒65〔dBμV〕。受信機入力電圧は信号源の開放電圧(起電力)で表す。終端電圧ならその半分(6〔dB〕低い)
SG2 を「3Δf」に置くと 2f1−f2=f0−Δf となり試験周波数に落ちません。妨害波に「規定の変調」をかける肢も誤りで、無変調が正解です。混変調の穴埋めで「搬送波が抑圧を受ける」は感度抑圧の説明なので誤り、「fd±fu」は 2 次積の形なので誤りです。
現場では、相互変調は「送信していない周波数に出る謎の妨害」として現れます。周波数を 2f1−f2 で逆算すると発生源の 2 波が特定できます。衛星中継器のように多数の搬送波を 1 台の電力増幅器で増幅する場合は、飽和点から入力を下げる(入力バックオフを大きくする)ことで相互変調積を減らしますが、出力が下がるので効率とのトレードオフになります。

この用語を押さえる問題
次の記述は、AM(A3E)スーパヘテロダイン受信機において生じることのある、相互変調及び混変調について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。 (1) 受信機に周波数が f1〔Hz〕及び f2〔Hz〕の通過帯域外にある強力な妨害波が混入し...
正答: A=3次 B=変調 C=fd±fm
正答。2f1−f2、2f2−f1 は係数の和が 3 の 3 次相互変調積で、通過帯域の近くに落ちるため問題になる。混変調は非直線性により妨害波の変調信号 fm で希望波の搬送波 fd が変調を受ける現象で、fd、fu、fu+fm の 3 波の 3 次積 fd+(fu+fm)−fu=fd+fm、fd−(fu+fm)+fu=fd−fm、すなわち fd±fm の成分が生じる。
この問題を解く次の記述は、FM(F3E)受信機の相互変調特性の測定法について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。ただし、法令等で、希望波信号のない状態で相互変調を生じる関係にある各妨害波を受信機入力電圧 1.78〔mV〕で加えた場合において、雑音抑...
正答: A=2Δf B=無変調 C=以上 D=開放
正答。SG1 を f0+Δf、SG2 を f0+2Δf に置くと、3 次相互変調積 2(f0+Δf)−(f0+2Δf)=f0 が試験周波数に一致し、相互変調特性を評価できる。妨害波は無変調とし、両 SG を等しい電圧で上げていき、復調出力の雑音が基準より 20 dB 抑圧されるときの入力電圧を求める。この電圧が規定の 1.78 mV 以上であれば合格である。受信機入力電圧は法令等で信号源の開放電圧と定義されている。
この問題を解く次の記述は、SCPC 方式の衛星通信の中継器などに用いられる電力増幅器について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。なお、同じ記号の[ ]内には、同じ字句が入るものとする。 (1) 電力効率を良くするために増幅器が非線形領域で動作するように設計されて...
正答: A=総和は減少する B=入力電力 C=大きく
正答。複数波を入力すると非線形性により相互変調積に電力が奪われるため、帯域内の各波の飽和出力電力の総和は単一波のときより減少する。入力バックオフは、単一波で飽和させる入力電力 P1 に対し実際の全入力電力 P2 をどれだけ下げたかを示す比 P1/P2〔dB〕である。バックオフを大きくとれば線形領域で動作し相互変調積は減るが、出力電力が下がって電力利用効率が低下する。
この問題を解く問われた問題 5
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