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電離層の反射機構(臨界周波数・MUF・電子密度) でんりそうのはんしゃ

4アマ 3アマ 一陸技

電離層の屈折率 n=√(1−81N/f²) は電子密度 N が大きいほど小さい。上の層ほど N が大きいので、斜めに入った電波はスネルの法則で徐々に水平に曲げられ、やがて地上に戻る。垂直入射で戻れる上限が臨界周波数 fc=9√N、斜め入射の上限が MUF=fc·secθ。

試験ではここ

穴埋めで「N が最大のとき n は最小」「nr=ni×sin i/sin r」「屈折角 r は入射角 i より大きい」。衛星回線では「電離圏の屈折率は周波数が高いほど 1 に近づく」(低くなると、は誤り)、「第 1 種減衰は VHF 以上で周波数が高いほど減る」、「電離圏シンチレーションは振幅・位相の短周期の不規則変動」。計算は N=10¹²〔個/m³〕で fc=9〔MHz〕、入射角 60° なら MUF=18〔MHz〕。

電離層は「電波を鏡のように跳ね返す板」ではありません。高さとともに電子密度 N が増え、ある高さで最大になって、また減る層です。電子が多いほど屈折率 n は 1 より小さくなります。斜めに入った電波は、屈折率の小さい上の層へ進むたびに進む向きが水平に近づき、ついに水平を越えて下向きになり、地上へ戻ります。これが「反射」の正体で、実際には徐々に曲がる屈折の積み重ねです。

電子密度と屈折率、電波の曲がり方
電子密度 N の高さ分布と屈折率 n。N が最大の高さで n は最小。斜めに入った電波は層ごとに水平へ曲げられ、やがて地上に戻る
電離層の屈折率
n = \sqrt{1 - \dfrac{81N}{f^2}}

N は電子密度〔個/m³〕、f は周波数〔Hz〕。N = 0 で n = 1、N が大きいほど n は小さく、81N/f² = 1 で n = 0(垂直入射の電波はここで戻る)。f が高いほど n は 1 に近づき、電離層をすり抜ける

層の境界での屈折(スネルの法則)
n_i \sin i = n_r \sin r\quad\Longrightarrow\quad n_r = n_i\,\dfrac{\sin i}{\sin r}

ni・i は下の層の屈折率と入射角、nr・r は上の層の屈折率と屈折角。上の層ほど N が大きく nr < ni なので sin r > sin i、つまり r は i より大きい。r = 90° に達した高さで電波は下向きに転じる(反射点)。反射の条件は sin θ₀ = n(θ₀ は電離層の下端での入射角)

臨界周波数と MUF(正割法則)
f_c = 9\sqrt{N_{\max}}\ [\mathrm{Hz}],\qquad \mathrm{MUF} = f_c\sec\theta_0 = \dfrac{f_c}{\cos\theta_0}

fc は垂直に打ち上げて戻ってくる最高の周波数(n = 0 となる f)。斜め入射では入射角 θ₀ が大きいほど高い周波数まで戻る。実際の運用は MUF の約 85 % の FOT(最適使用周波数)。吸収で使えなくなる下限が LUF

臨界周波数 fc と MUF
臨界周波数と MUF。垂直入射は fc まで戻る。入射角 θ₀ の斜め入射は fc·secθ₀ まで戻る。MUF を超えると突き抜ける

電離層による減衰と衛星回線への影響

  1. 第 1 種減衰 D 層・E 層を通過するときの吸収。電子と中性分子の衝突で生じ、おおむね周波数の 2 乗に反比例。VHF 以上では周波数が高いほど小さく、GHz 帯ではほぼ無視できる
  2. 第 2 種減衰 反射点(F 層)付近での吸収。MUF に近い周波数で大きい
  3. 電離圏シンチレーション 電子密度の不規則な分布で、通過する電波の振幅・位相・到来方向が短周期で不規則に変動。低緯度・高緯度や太陽活動期に顕著で VHF〜数 GHz の衛星回線に影響
  4. ファラデー回転・群遅延 直線偏波の偏波面が回転し、位相が遅れる。どちらも周波数の 2 乗に反比例するので、GPS は 2 周波で補正し、衛星通信は円偏波を使う
衛星回線への電離圏の影響
衛星回線での電離圏の影響。ファラデー回転・群遅延・第 1 種減衰はいずれも 1/f² で減るので、周波数が高いほど屈折率は 1 に近づく

典型問題の解き方(最大電子密度 1.0×10¹²〔個/m³〕の F 層に入射角 60° で入る電波の MUF)

手順

  1. 臨界周波数を出す fc = 9√N = 9 × √(10¹²) = 9 × 10⁶〔Hz〕= 9〔MHz〕
  2. 正割法則で斜め入射に直す MUF = fc / cos 60° = 9 / 0.5 = 18〔MHz〕
  3. 屈折率で確かめる 18〔MHz〕の電波の n は √(1 − 81×10¹²/(18×10⁶)²) = √(1 − 0.25) = 0.866 = sin 60°。反射条件 sin θ₀ = n をちょうど満たす
  4. 運用周波数 FOT ≒ 0.85 × 18 ≒ 15〔MHz〕。令和8年の 2 期は屈折率と層の境界の穴埋めが出ており、この数値計算は出ていない
ひっかけ

N が最大のとき n は「最小」です(最大と答えさせる肢が並びます)。スネルの法則は sin で、nr=ni × sin i / sin r。分母分子を逆にした sin r / sin i や cos の肢は誤りです。「周波数が低くなると屈折率が 1 に近づく」は逆で、高くなると 1 に近づきます。MUF は fc より「高い」(sec θ ≧ 1)ので、斜めに打つほど高い周波数が使えます。

上部の看板「fc=9√N、MUF=fc·secθ
fc=9√N、MUF=fc·secθ。N が最大の高さで屈折率は最小

この用語を押さえる問題

一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学B 問16

次の記述は、電離層における電波の反射機構について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。 (1) 電離層の電子密度 N の分布は、高さと共に徐々に増加し、ある高さで最大となり、それ以上の高さでは徐々に減少している。N が零のとき、電波の屈...

正答: A=最小 B=sin i / sin r C=大きい

正しい組合せです。電離層の屈折率は n = √(1 − 81N/f²) で N が大きいほど小さく、N が最大の高さで n は最小になります。隣接する層の境界ではスネルの法則 ni sin i = nr sin r が成り立ち、nr = ni × sin i / sin r です。上の層ほど N が大きく nr < ni なので sin r > sin i、すなわち r は i より大きくなり、電波は高さとともに水平方向へ曲げられ、やがて全反射して地上に戻ります。

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一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学B 問17

次の記述は、地上と衛星間の電波伝搬における対流圏及び電離圏の影響について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。

正答: 電離圏の屈折率は、周波数が低くなると 1 に近づく。

誤った記述です。電離圏の屈折率は n = √(1 − 81N/f²) で表され、周波数 f が高くなるほど 81N/f² が小さくなって n は 1 に近づきます。周波数が低くなると n は 1 から離れて小さくなり、屈折や反射の影響が大きくなります。

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問われた問題 7

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