対流圏伝搬(ダクト・散乱・フェージングの種類) たいりゅうけんでんぱん
地上約 10 km までの対流圏で、大気の屈折率が高さとともに減ることで電波が下に曲がる伝搬。標準大気では等価地球半径係数 k=4/3 で直線扱いにできる。屈折率の分布が崩れるとダクトや散乱が起き、k の変動・大地反射・大気の乱れが VHF 以上のフェージングの原因になる。
穴埋めで「シンチレーションフェージングは大気の屈折率の不規則な変動」「干渉性 k 形は直接波と大地反射波の干渉が k の変動で変わる」「回折性 k 形は k が小さくなると回折損が大きく」。太陽フレアは電離層の話で対流圏ではない。k の定義 k=1/(1+R₀·dn/dh) と標準大気の 4/3、修正屈折率 M の勾配が負になるとダクト、も問われる。
空気は上に行くほど薄く乾くので、電波の屈折率は高さとともに少しずつ下がります。屈折率の高い側(下)へ曲がる性質により、電波の通り道は地球に沿って緩くたわみます。そこで地球の半径を 4/3 倍にふくらませて考えると、電波を直線として扱えます。この 4/3 が等価地球半径係数 k です。天気で屈折率の分布が変われば k が変わり、受信レベルが揺れます。

R₀ は地球半径 6,370 km、Re は等価地球半径、dn/dh は屈折率の高さ勾配。勾配が負に大きいほど k は大きく(電波がよく曲がり地球が平らに見える)、dn/dh = −157×10⁻⁶/km で k = ∞、それ以下でダクトになる
N は屈折指数(n − 1)×10⁶。地球の丸みを足した M は通常は高さとともに増える。気温の逆転層や海上の乾いた空気で M が高さとともに減る層ができると、電波はその層に閉じ込められて見通し外まで異常伝搬する(ラジオダクト)

対流圏フェージングの種類と原因
- シンチレーションフェージング 大気の屈折率の不規則で速い変動(乱れ)で生じる。振幅は小さく周期は短い。晴れた日中の陸上で多い
- 干渉性 k 形フェージング 直接波と大地反射波の干渉が、k の変動で通路差が変わるために変化する。海面や平地の反射が強い回線で深い
- 回折性 k 形フェージング クリアランスが足りない回線で、k が小さくなると等価地球が盛り上がって見え回折損が増える。k が大きいと損失は減る
- ダクト形フェージング ラジオダクトができて電波が閉じ込められたり外れたりして生じる。長時間・深い。海上や夜間の放射冷却で起きやすい
- 散乱形フェージング 対流圏散乱波(見通し外へ届く微弱な波)が大気の乱れで変動する。対流圏散乱通信ではダイバーシティが必須
- 減衰形フェージング 降雨・霧による吸収減衰の変動。10 GHz 以上で顕著。k とは無関係

典型問題の解き方(屈折率勾配 −39×10⁻⁶/km のときの k と、見通し距離への効き方)
手順
- k の式に入れる R₀·dn/dh = 6370〔km〕× (−39×10⁻⁶/km) = −0.248
- k を出す k = 1/(1 − 0.248) = 1/0.752 ≒ 1.33 = 4/3
- 見通し距離に使う 電波の見通し距離 d = √(2kR₀)(√h₁ + √h₂)。R₀ = 6.37×10⁶〔m〕を入れると √(2×(4/3)×6.37×10⁶) ≒ 4120 なので d ≒ 4120(√h₁+√h₂)〔m〕= 4.12(√h₁+√h₂)〔km〕(h は m)
- k が変わると k が 4/3 より小さく(たとえば 2/3)なると地球が盛り上がって見え、見通し距離が縮みクリアランスも減る。これが回折性 k 形フェージング。令和8年の 2 期は穴埋めのみで、k の計算は出ていない
「k が大きくなると回折損が大きくなる」は逆です。k が大きい=地球が平らに見える=クリアランスが増える=回折損は減ります。シンチレーションの原因は「大気の屈折率の不規則な変動」で、太陽フレアやデリンジャー現象は電離層(短波)の話です。干渉性 k 形の相手は「散乱波」ではなく「大地反射波」です。衛星回線の対流圏シンチレーションは仰角が低いほど大きく、晴天時の大気減衰も仰角が低いほど大きくなります。

この用語を押さえる問題
次の記述は、対流圏伝搬におけるフェージングについて述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。ただし、等価地球半径係数を k とする。 (1) シンチレーションフェージングは、[A]の不規則な変動により生じる。 (2) 干渉性 k 形フェージ...
正答: A=大気の屈折率 B=大地反射波 C=小さく
正しい組合せです。シンチレーションフェージングは大気の屈折率の不規則で急速な変動(大気の乱れ)によって生じる小振幅・短周期のフェージングです。干渉性 k 形フェージングは、k の変動により直接波と大地反射波の通路差が変化して干渉状態が変わることで生じます。回折性 k 形フェージングでは、k が小さくなると等価地球半径が小さくなって大地が盛り上がって見え、クリアランスが減って回折損が大きくなります。
この問題を解く次の記述は、地上と衛星間の電波伝搬における対流圏及び電離圏の影響について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
正答: 電離圏の屈折率は、周波数が低くなると 1 に近づく。
誤った記述です。電離圏の屈折率は n = √(1 − 81N/f²) で表され、周波数 f が高くなるほど 81N/f² が小さくなって n は 1 に近づきます。周波数が低くなると n は 1 から離れて小さくなり、屈折や反射の影響が大きくなります。
この問題を解く問われた問題 2
- 一陸技 令和8年7月期 問17 次の記述は、地上と衛星間の電波伝搬における対流圏及び電離圏の影響について述べたものである。このうち誤ってい...
- 一陸技 令和8年1月期 問16 次の記述は、対流圏伝搬におけるフェージングについて述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せ...