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フェージング補償(ダイバーシティ・等化器・AGC) ふぇーじんぐたいさく

一陸技

デジタル無線でフェージングによる誤りを減らす技術の総称。相関の低い複数の経路を合成・選択するダイバーシティ、伝送路の振幅・遅延ひずみを打ち消す等化器、誤りを散らして訂正する誤り訂正とインターリーブ、受信レベルの変動をならす AGC など。

試験ではここ

正誤と穴埋め。合成法は選択・等利得・最大比の 3 つで、S/N に応じて重みづけし同相加算して合成後の S/N を最大にするのが「最大比合成」。RAKE 受信は「パス」ダイバーシティ。速いフェージングで受信レベルを上げても誤り率が下がらないのは「ランダム FM 雑音」。可変共振形(周波数領域)は反射波が直接波より強いと補償できない。トランスバーサル(時間領域)はタップ数に依存。バースト誤りはインターリーブでランダム化、BCH はランダム誤り向き。

フェージングで起きる誤りは、大きく 3 種類あります。受信レベルが落ちて雑音に負ける誤り(熱雑音誤り)、速い位相の揺らぎが周波数の揺らぎに見えるランダム FM 雑音、遅れて届く反射波が波形をゆがめる周波数選択性フェージングです。対策もそれぞれ違い、レベル低下にはダイバーシティと AGC、波形ひずみには等化器とマルチキャリア、残った誤りには誤り訂正で対処します。

スペースダイバーシティ
スペースダイバーシティ。高さの違う 2 本のアンテナで受け、相関の低い 2 ブランチを合成器で合成する。同時に深く落ち込む確率が下がる

ダイバーシティのブランチの作り方

  1. スペース(空間) 離れた位置(高さ)のアンテナで受ける。マイクロ波回線の定番。設備は 2 倍になるが周波数は増えない
  2. 周波数 同じ情報を離れた周波数で送る。周波数選択性フェージングに効くが周波数を 2 倍使う
  3. 偏波 垂直と水平の偏波で受ける。移動通信の基地局で使う
  4. 時間 同じ情報を時間をずらして送る。インターリーブと再送もこの仲間
  5. 角度・ルート 到来角の違い、または別の中継ルートを使う
  6. パス(RAKE 受信) CDMA で逆拡散の相関器出力から遅延の異なるパスを分離し、同相化して重みづけ加算する
3 つの合成法
3 つの合成法。選択合成は最良のブランチを選ぶ、等利得合成は同じ重みで同相加算、最大比合成は S/N に応じた重みで同相加算
最大比合成後の S/N
\left(\dfrac{S}{N}\right)_{\text{合成}} = \sum_{i=1}^{M} \left(\dfrac{S}{N}\right)_{i}

M はブランチ数。各ブランチを S/N に比例した重みで同相加算すると、合成後の S/N は各ブランチの S/N の和になり、原理上最も良い。等利得合成はこれより少し劣り、選択合成は最大のブランチ 1 つ分

等化器(波形ひずみの補償)

  1. 周波数領域: 可変共振形自動等化器 帯域内の振幅や遅延の傾き・凹みを、共振回路の逆特性で打ち消す。反射波が直接波より強い(非最小位相推移形)フェージングでは原理的に補償できない場合がある
  2. 時間領域: トランスバーサル自動等化器 遅延素子とタップ係数で遅延波の成分を引き算し、符号間干渉を減らす。補償できる振幅・遅延ひずみの範囲はタップ数で決まる。係数は誤差が最小になるよう自動で更新(適応等化)
  3. マルチキャリア(OFDM) 信号列を多数の副搬送波に分けるとシンボルが長くなり、遅延波の影響(符号間干渉)を受けにくい。周波数選択性フェージングに強い
トランスバーサル自動等化器
トランスバーサル自動等化器。遅延素子 T の列から取り出した信号にタップ係数 C を掛けて加算し、遅延波の成分を打ち消す
トランスバーサル等化器の出力
y(t) = \sum_{k=0}^{N-1} C_k\, x(t - kT)

x は入力、T は遅延素子 1 段の遅延(シンボル周期)、Ck はタップ係数、N はタップ数。N が多いほど長い遅延まで補償できる

そのほかの対策

  1. AGC ゆっくりしたレベル変動を増幅度の自動調整でならす。速い変動や波形ひずみには効かない
  2. 誤り訂正とインターリーブ フェージングの誤りはバースト性がある。インターリーブで並べ替えてランダム化し、畳み込み符号などのランダム誤り訂正で直す。リードソロモン符号はバースト誤りに強く、BCH 符号はランダム誤り向き
  3. ランダム FM 雑音への対策 受信レベルを上げても誤り率がある値以下に下がらない(誤り率のフロア)。ダイバーシティで速い位相変動そのものを抑えるか、シンボルレートを上げて相対的に変動を遅くする

典型問題の解き方(ダイバーシティの原理の穴埋め)

手順

  1. A: 「速い変動」「レベルを上げても困難」 ランダム FM 雑音。周波数選択性フェージングは遅延分散による波形ひずみで、速さとは直接関係しない
  2. B: 「S/N に応じて重みづけ」「同相加算」「S/N 最大」 最大比合成。等利得合成は重みが同じ
  3. C: 「遅延時間の異なる複数の信号を同相化して重みづけ加算」 RAKE 受信はパスダイバーシティ。ルートダイバーシティは別の中継経路の切替
  4. 答え A=ランダム FM 雑音、B=最大比合成、C=パス
ひっかけ

「バースト誤りに強い BCH 符号」「畳み込みでバースト誤りをランダム化」はどちらも誤りです。バースト向きはリードソロモン、ランダム化するのはインターリーブです。可変共振形等化器が「どんなフェージングでも補償できる」も誤りで、反射波が直接波より強いと補償できません。最大比合成と等利得合成の違いは「重みづけの有無」です。

実務・現場では

固定マイクロ波回線では、鉄塔の上下 2 段にアンテナを置くスペースダイバーシティが標準で、上下の間隔は数〔m〕〜十数〔m〕です。携帯電話の基地局では偏波ダイバーシティで 1 本のアンテナにまとめ、端末側は RAKE 受信や OFDM の等化でマルチパスに対処します。等化器は伝送路の変化に追従して係数を更新し続けるので、列車のような速い移動では追従速度が性能を決めます。

上部の看板「重みづけして同相加算=最大比合成
重みづけ同相加算が最大比合成、RAKE はパス、速い変動の正体はランダム FM 雑音

この用語を押さえる問題

一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年1月期 無線工学A 問13

次の記述は、デジタル無線方式に用いられるフェージング補償(対策)技術の一般的な特徴について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。

正答: フェージングにより発生する誤りはある程度バースト性をもっているので、バースト誤りに強い BCH 符号の利用や、畳み込みとランダム誤り訂正を組み合わせてバースト誤りをランダム化し誤り訂正することが効果的である。

誤り(これが正答)。BCH 符号はランダム誤りの訂正に向く符号であり、バースト誤りに強いのはリードソロモン符号などである。また、バースト誤りをランダム化してランダム誤り訂正符号で訂正するために組み合わせるのは「畳み込み」ではなく「インターリーブ」である。

この問題を解く
一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学A 問12

次の記述は、フェージング対策等に利用されるダイバーシティの原理について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。 (1) フェージング伝送路では、受信レベル低下による C/N 劣化(熱雑音誤り)、ランダム FM 雑音による位相変動、周波数選...

正答: A=ランダム FM 雑音 B=最大比合成 C=パス

正答。ランダム FM 雑音はフェージングによる受信波の位相の速い揺らぎが周波数変動として現れるもので、受信レベルを上げても消えないため誤り率の下限(フロア)を生む。最大比合成は各ブランチを S/N に比例した重みで同相加算し、理論上最良の合成後 S/N を得る。RAKE 受信はマルチパスの各パスをフィンガで分離して合成するのでパスダイバーシティに分類される。

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問われた問題 2

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