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レーダー方程式と最大探知距離 れーだーほうていしき

一陸技

送信電力・アンテナ利得・波長・物標の有効反射断面積から、距離 R の物標からの受信電力を表す式。受信電力は R の 4 乗に反比例し、受信機が検出できる最小受信電力で決まる距離が最大探知距離。

試験ではここ

計算問題。Pr=Pt G² λ² σ/((4π)³ R⁴)、または A=Gλ²/(4π) を使って Pr=Pt G A σ/((4π)² R⁴)。Pt=25〔kW〕、3〔GHz〕(λ=0.1〔m〕)、σ=π〔m²〕、A=1.6〔m²〕、Smin=−80〔dBm〕=10⁻¹¹〔W〕で R⁴=1.6×10¹⁷、R=2×10⁴=20〔km〕。「4 乗根」なので送信電力を 16 倍にしても距離は 2 倍にしかならない。

レーダーの電波は、物標まで行って薄まり、物標で散らばり、帰ってきてまた薄まります。行きで距離の 2 乗、帰りで距離の 2 乗、合わせて 4 乗で弱くなります。だから遠くの物標を見つけるには送信電力をものすごく増やすか、アンテナを大きくするしかありません。これを式にしたのがレーダー方程式です。

レーダー方程式の組み立て
レーダー方程式の構造。送信 Pt G → 距離 R で 1/(4πR²) → 物標 σ で散乱 → 距離 R でまた 1/(4πR²) → 実効面積 A で受信
レーダー方程式
P_r = \dfrac{P_t\, G^{2}\, \lambda^{2}\, \sigma}{(4\pi)^{3}\, R^{4}} = \dfrac{P_t\, G\, A\, \sigma}{(4\pi)^{2}\, R^{4}}

Pt は送信尖頭電力〔W〕、G はアンテナ利得(真数、送受共用)、λ は波長〔m〕、σ は物標の有効反射断面積〔m²〕、A はアンテナの実効面積〔m²〕、R は距離〔m〕。右の形は A=Gλ²/(4π) を代入したもので、問題で A が与えられたときに便利

最大探知距離
R_{\max} = \sqrt[4]{\dfrac{P_t\, G^{2}\, \lambda^{2}\, \sigma}{(4\pi)^{3}\, S_{\min}}}

Smin は受信機が探知できる最小受信電力(最小検出感度)〔W〕。4 乗根なので、Pt を 16 倍、または Smin を 1/16 にして R は 2 倍。アンテナ利得 G は 2 乗で効くので G を 4 倍で R は 2 倍

利得と実効面積
A = \dfrac{G\, \lambda^{2}}{4\pi}\qquad \Longleftrightarrow \qquad G = \dfrac{4\pi A}{\lambda^{2}}

問題では A の値が与えられ、この関係式も示される。λ が短い(周波数が高い)ほど同じ面積で利得が高い

4 乗根の効き方
4 乗の壁。送信電力を 16 倍にしても最大探知距離は 2 倍。アンテナ利得なら 4 倍で 2 倍

典型問題の解き方(25〔kW〕、3〔GHz〕、σ=π〔m²〕、A=1.6〔m²〕、−80〔dBm〕)

手順

  1. 波長と利得を出す λ=3×10⁸/(3×10⁹)=0.1〔m〕。G=4πA/λ²=4π×1.6/0.01=640π
  2. 最小受信電力を W に直す −80〔dBm〕=10⁻⁸〔mW〕=10⁻¹¹〔W〕
  3. 定数部分を先に計算する G A σ/(4π)²=640π×1.6×π/(16π²)=640×1.6/16=64
  4. R⁴ を出す R⁴=Pt×64/Pr=25×10³×64/10⁻¹¹=1.6×10⁶/10⁻¹¹=1.6×10¹⁷〔m⁴〕
  5. 4 乗根をとる 1.6×10¹⁷=16×10¹⁶=2⁴×(10⁴)⁴ なので R=2×10⁴〔m〕=20〔km〕
ひっかけ

4 乗根を 2 乗根と取り違えると桁が大きく狂います。R⁴ の値は「16×10¹⁶」のように 4 乗数×10 の 4 の倍数乗 に書き直すと暗算で根がとれます。dBm は 1〔mW〕基準なので −80〔dBm〕は 10⁻⁸〔mW〕、W に直すとさらに 10⁻³ 倍で 10⁻¹¹〔W〕です。π が分子に 2 つ、分母に 2 つ出て消えるのが設問の作りです。

実際の探知距離を縮めるもの

  1. 地球の曲率 見通し距離を超えた低い物標は方程式の値より手前で見えなくなる
  2. 雨や大気の減衰 周波数が高いほど大きく、方程式に減衰項を掛けて考える
  3. 受信機の雑音指数 Smin は kTBF と所要 S/N で決まる。帯域 B を狭く(パルス幅を長く)すると Smin は下がるが距離分解能は悪くなる
  4. パルス繰返し周期 次のパルスを出すまでに反射波が戻れる距離が上限(cT/2)
実務・現場では

船舶や航空のレーダーで「もう少し遠くまで見たい」とき、送信電力を上げるのは割に合いません(2 倍にしても距離は 1.19 倍)。実際はアンテナを大きくして利得を上げる、受信機の雑音を下げる、パルスを積分して S/N を稼ぐ方が効きます。ステルス機は σ を小さくして、この式の分子を削っています。

上部の看板「受信電力は R の 4 乗に反比例
受信電力は R の 4 乗に反比例。距離 2 倍には電力 16 倍、利得なら 4 倍

この用語を押さえる問題

一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学A 問11

レーダー方程式を用いて求めたパルスレーダーの最大探知距離の値として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、送信尖頭出力を 25〔kW〕、送信周波数を 3〔GHz〕、物標の有効反射断面積を π〔m²〕、アンテナの実効面積を 1.6〔m²〕、物標は受信機の受信電力が -80〔d...

正答: 20〔km〕

正答。レーダー方程式 Pr=Pt G σ A/((4π)² R⁴) を用いる。λ=3×10⁸/3×10⁹=0.1 m、G=4πA/λ²=4π×1.6/0.01=640π。Pr=−80 dBm=10⁻¹¹ W。G σ A/(4π)²=640π×π×1.6/(16π²)=64 なので R⁴=Pt×64/Pr=25×10³×64/10⁻¹¹=1.6×10¹⁷ m⁴。(2×10⁴)⁴=16×10¹⁶=1.6×10¹⁷ より R=2×10⁴ m=20 km。

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問われた問題 1

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