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移相器(π/2 移相・デジタル移相器) いそうき

一陸技

信号の位相を決まった量だけずらす回路。直交変調の π/2 移相器、クワドラチャ検波の周波数で移相量が変わる移相器、フェーズドアレーで給電位相を切り替えるデジタル移相器(n ビットで最小 2π/2ⁿ)などがある。

試験ではここ

令和8年7月期 工学A 問4 は 16QAM 変調器で I と Q の搬送波を「π/4」ずらすが誤り(π/2)。同期 問7 はクワドラチャ検波の移相量。工学B 問11 はデジタル移相器にスタブを使い、最小 2π/2ⁿ・最大量子化位相誤差 π/2ⁿ を選ぶ穴埋め。

移相器は波の山の位置を少し遅らせる部品です。線路を長くすれば遅れ、LC や CR の回路でも遅らせられます。いつも同じ量ずらすもの(直交変調)、周波数で量が変わることを利用するもの(FM 検波)、デジタルで段階的に切り替えるもの(フェーズドアレー)があります。

線路長による移相量
\phi = \beta l = \dfrac{2\pi l}{\lambda} \qquad l = \dfrac{\lambda}{4} \;\Rightarrow\; \phi = \dfrac{\pi}{2}

λ は線路上の波長(導波管なら管内波長 λg)。線路を λ/4 延ばすと 90° 遅れる

入力の正弦波と、λ/4 の線路を通って 90° 遅れた波を並べた図
線路を λ/4 延ばすと π/2 遅れる
デジタル移相器の分解能と量子化位相誤差
\Delta\phi_{min} = \dfrac{2\pi}{2^n} ,\qquad |\delta\phi|_{max} = \dfrac{\Delta\phi_{min}}{2} = \dfrac{\pi}{2^n}

n はビット数。3 ビットなら最小 45°・最大誤差 22.5°、4 ビットなら 22.5°・11.25°

円を8等分した3ビットのデジタル移相器の位相と、ほしい位相との最大誤差 22.5°
刻みは 2π/2ⁿ、最大誤差はその半分

どこで使われるか

  1. 直交変調・同期検波 I 軸は cos、Q 軸は π/2 移相した sin の搬送波。ちょうど π/2 でないと I と Q が混ざる
  2. SSB の移相法 信号と搬送波を両方 π/2 移相して加減算し、片側の側波帯を消す
  3. クワドラチャ検波器 同調回路で搬送波のとき π/2、周波数偏移に応じて移相量が変化
  4. フェーズドアレー 素子ごとのデジタル移相器で給電位相を変え、主ビームを電子的に振る。PIN ダイオードで線路やスタブを切り替える
  5. CR 移相形発振器 CR 3 段で合計 180° 移相し、反転増幅器と合わせて正帰還にする

典型問題の解き方(デジタル移相器・令和8年7月期 工学B 問11)

手順

  1. 素子 位相の切替えにはスタブ(線路)を使う。バランは平衡・不平衡の変換器で移相器ではない
  2. 最小ステップ 0〜2π を 2ⁿ 等分 → 2π/2ⁿ
  3. 最大誤差 最も近い値に丸めるので半分の π/2ⁿ
  4. 影響と対策 誤差が開口に周期的に並ぶと高いサイドローブ(量子化ローブ)。ビット数を多くする
ひっかけ

直交変調の I・Q の搬送波は π/2 ずれで、π/4 では直交しません。デジタル移相器の最大量子化誤差は π/2ⁿ(ステップの半分)で、π/2ⁿ⁺¹ はそのさらに半分です。周期的な誤差で増えるのは サイドローブ で、バックローブではありません。

先生の挿絵。直交変調で Q の搬送波を π/4 ずらそうとする受験生
I と Q の搬送波は π/2 ずらす
ポイント

「何 bit で何度刻みか」はすぐ出せるようにします。360° ÷ 2ⁿ が刻み、その半分が最大誤差です。

この用語を押さえる問題

一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学A 問4

図に示す 16QAM 変調器の原理的な構成例に関する次の記述のうち、誤っているものを下の番号から選べ。

正答: I 軸と Q 軸のロールオフフィルタ出力信号に、位相がπ/4〔rad〕異なる搬送波を乗算することで、互いに直交する 2 つの振幅変調波となる。

誤り。I 軸と Q 軸の搬送波は π/2〔rad〕(90 度)位相が異なる。cos と sin の関係にある搬送波を用いるからこそ両者が直交し、合成後も分離して復調できる。π/4 では直交しない。

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一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学B 問11

次の記述は、図に示す位相走査のフェーズドアレーアンテナと量子化位相誤差について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。 (1) フェーズドアレーアンテナとは、平面上に複数の放射素子を並べて固定し、それぞれにデジタル移相器を設けて給電電流の...

正答: A=スタブ B=π/2ⁿ C=サイドローブ D=多く

正しい組合せです。デジタル移相器は PIN ダイオードなどで線路やスタブを切り替えて離散的な位相を与えます。0〜2π を 2ⁿ 等分すると最小ステップは 2π/2ⁿ で、必要な位相を最も近い値に丸めるため誤差は最大でステップの半分、π/2ⁿ〔rad〕です。この誤差が開口面に周期的に現れると回折格子のように働いて高いサイドローブ(量子化ローブ)が生じるので、ビット数 n を多くしてステップを細かくし誤差を減らします。

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一陸技 ・ 日本無線協会 令和8年7月期 無線工学A 問7

次の記述は、図に示すクワドラチャ検波器の原理的な構成例について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。ただし、入力の周波数変調波を ė1、移相器の出力を ė2、乗算器の出力を e0 とし、移相器は理想的に動作するものとする。

正答: ė1 の周波数が搬送波の周波数に等しいとき、ė2 の移相量がπ〔rad〕になるようにする。

誤り。クワドラチャ(直交)検波器では、搬送波周波数において移相量が π/2〔rad〕(90 度)になるようにする。このとき乗算出力の平均値は 0 となり、周波数偏移に応じて正負に振れる出力が得られる。π では直交にならず、偏移に対して出力が対称にならない。

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問われた問題 4

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