一陸技の無線工学の基礎は、令和8年の2期40問のうち約7割が計算か式の問題でした。型は限られているので、公式を5つ前後に絞り、手順ごと覚えるのが近道です。

結論:基礎の7割は計算か式、型は数えるほどしかない
一陸技の 無線工学の基礎 は、令和8年(2026年)1月期・7月期の A問題40問のうち、数値を選ぶ計算問題が17問、式を選ぶ・式の導出を穴埋めする問題が12問で、合わせて 29問(約7割) が計算か式の問題でした。残りの11問は語句・正誤・図の選択です。
数字だけ見ると重く感じますが、計算の型は限られています。交流回路の電力と力率、直列共振の周波数と Q、トランジスタのバイアス、整流回路の出力電圧、計器の誤差。このあたりは2期続けて同じ型が出ました。公式を5つ前後に絞って、手順ごと体に入れるのがいちばん早い攻略法です。
この記事では、出題範囲と試験の形を一次情報で確認したうえで、2期40問の分野別の内訳を示し、頻出の型ごとに公式と自作の例題(実際の過去問とは数値を変えています)で解き方を説明します。
試験の形と出題範囲
日本無線協会の公表資料では、一陸技の無線工学の基礎は 25問・2時間30分、配点 125点・合格点75点 のマークシート方式です。問題は、5肢から選ぶ A問題20問と、空欄(ア〜オ)に語群から当てはめる B問題5問でできています。合格点を取った科目は、試験の行われた月の翌月の初めから3年以内の試験で免除を申請できます(無線従事者規則 第6条)。
出題範囲は無線従事者規則 第5条に、次の5つが「詳細」のレベルで定められています。
無線工学の基礎の試験科目(無線従事者規則 第5条)
かっこ内は実際の出題から見た中身で、法令の文言ではありません。次回の令和9年1月期は、試験日が2027年1月19日(火)〜20日(水)、申請受付が2026年11月1日(日)〜20日(金)と日本無線協会が告知しています。
令和8年の2期40問を分野別に数えた
令和8年1月期・7月期の A問題を、上の5分野で当サイトが分類しました(分類は筆者の判断です)。電気物理・電子回路・電気回路・測定がほぼ同じ重さで並び、半導体・電子管だけが少なめです。
無線工学の基礎:分野別の問題数(令和8年1月期・7月期 A問題)
| 1月期 | 7月期 | 計 | |
|---|---|---|---|
| 電気物理(電界・磁気回路・静電容量・インダクタンス) | 4 | 5 | 9 |
| 電子回路(バイアス・FET・演算増幅器・整流・論理回路) | 6 | 5 | 11 |
| 電気回路(交流電力・直列共振・ブリッジ・合成抵抗) | 4 | 4 | 8 |
| 電気磁気測定(計器・誤差・Q メータ・A-D 変換) | 4 | 4 | 8 |
| 半導体及び電子管(雑音・マイクロ波素子・MOS FET) | 2 | 2 | 4 |
両期で同じ型が続いたものを挙げると、交流回路の皮相電力と力率、直列共振回路、整流回路の出力電圧、演算増幅器の回路、マイクロ波の電子管と半導体素子、論理回路です。とくに A-14(演算増幅器)、A-15(整流回路)、A-16(論理回路)は両期とも同じ問番号に同じ分野が入っていました。
一方で、デシベルの計算は基礎の2期40問には1問も出ていません。それでも dB を最初の型として扱うのは、工学Aでは40問中11問、工学Bでは40問中4問に dB 表記が出てくるからです。基礎の勉強の段階で dB に慣れておくと、工学A・Bの計算が一気に楽になります。
計算ミスを減らす4つの手順
- 単位をそろえる。pF・μH・mA・kΩ は10のべき乗に直してから式に入れる
- 式を文字のまま整理してから数値を入れる。約分で消える量が見える
- 選択肢の桁と単位を先に見て、近似の目安を決める(「最も近いもの」なら有効数字2桁で足りる)
- 答えを元の式に戻して検算する。並列なら元の値より小さい、共振なら f と C の関係が逆、など符号と大小を確かめる
型1 デシベル:かけ算を足し算に変える
dB は比を対数で表したものです。電力の比なら10倍、電圧の比なら20倍の係数を付けます。インピーダンスが同じなら、電力は電圧の2乗に比例するので、どちらで計算しても同じ dB になります。
電力2倍で約3 dB、10倍で10 dB、100倍で20 dB。電圧2倍で約6 dB、10倍で20 dB。1 mW を基準にした電力は dBm で表し、0 dBm=1 mW。
例題で確かめます。入力 −20 dBm の信号を利得 30 dB の増幅器に通し、損失 4 dB のケーブルを通したときの出力は、−20+30−4=6 dBm です。真数に戻すと 10^0.6≒3.98 なので約4 mW です。真数のままなら「0.01 mW × 1000 ÷ 2.51」と割り算が要るところが、dB なら足し引きだけで済みます。
型2 直列共振とQ:周波数・尖鋭度・帯域幅
R・L・C の直列回路は、ωL と 1/(ωC) が等しくなる周波数で共振し、インピーダンスが R だけになって電流が最大になります。令和8年は1月期に正誤問題、7月期に f₀・Q・帯域幅を順に求める問題が出ており、測定分野の Q メータや分布容量の問題も共振の式で解きます。
f₀ は √(LC) に反比例する。C を 1/4 にすると f₀ は2倍になる。
例題:L=100 μH、C=100 pF、R=10 Ω の直列回路。LC=10⁻⁴×10⁻¹⁰=10⁻¹⁴ なので ω₀=1/√(LC)=10⁷ rad/s、f₀=10⁷/(2π)≒1.59 MHz です。ω₀L=10⁷×10⁻⁴=1000 Ω なので Q=1000/10=100、帯域幅は B=1.59 MHz/100≒15.9 kHz。√(L/C)/R=√(10⁶)/10=100 でも同じ Q になることを確かめておくと、検算の習慣がつきます。
コイルの分布容量 C₀ を求める型も共振の応用です。周波数を f から 2f に上げたときに同調する可変容量が 500 pF から 116 pF に変わったなら、全体の容量は 1/4 になるので 500+C₀=4×(116+C₀)。整理すると 3C₀=36 で C₀=12 pF です(512=4×128 で検算できます)。
共振周波数より低い周波数では 1/(ωC) が ωL より大きく、回路は容量性なので電流は電圧より 進み ます。高い周波数では誘導性で遅れます。令和8年1月期はこの進み・遅れを逆にした肢が誤りでした。

型3 交流電力と力率:無効電力は進みと遅れで引く
負荷を並べて全体の皮相電力と力率を求める型は、令和8年の両期に出ました。手順は決まっていて、負荷ごとに皮相電力と無効電力を出し、有効電力と無効電力を別々に合計してから、最後に皮相電力に戻します。
S は皮相電力〔VA〕、P は有効電力〔W〕、Q は無効電力〔var〕。ここでの Q は尖鋭度の Q とは別物。負荷ごとに S=P/cosθ、Q=√(S²−P²) を出してから合計する。
例題:誘導性負荷(600 W、力率0.6)と容量性負荷(600 W、力率0.8)を同じ電源に並列につなぎます。前者は S=1000 VA、Q=800 var(遅れ)。後者は S=750 VA、Q=√(750²−600²)=450 var(進み)。有効電力は足して1200 W、無効電力は遅れと進みで打ち消し合って800−450=350 var(遅れ)。全体の皮相電力は √(1200²+350²)=1250 VA、力率は1200/1250=0.96 です。

型4 電子回路の計算:バイアス・整流・B級増幅
電子回路の計算は、トランジスタの直流バイアス、整流回路の出力電圧、B級プッシュプル(SEPP)の出力電力が軸です。どれも交流の細かい解析ではなく、「どこに何 V かかり、何 A 流れるか」を追えば解けます。
R_B をコレクタとベースの間につなぐ自己バイアス回路。R_C には I_C と I_B の両方が流れ、R_B の両端にはコレクタ電圧から V_BE を引いた電圧がかかる。
例題:電源 12 V、R_C=3 kΩ、h_FE=100、V_BE=0.6 V で I_C を 2 mA にしたい。I_B=2 mA/100=0.02 mA。R_C の電圧降下は 3 kΩ×2.02 mA=6.06 V なので、コレクタ電圧は 5.94 V。R_B=(5.94−0.6)/0.02 mA=267 kΩ です。I_B を無視すると 270 kΩ になり、「最も近いもの」を選ぶ問題ならどちらでも同じ肢に落ちることが多いですが、まずは正確な式で解いてください。
整流回路は「実効値 V の正弦波の最大値は √2 V」が出発点です。コンデンサ入力の半波整流なら出力は √2 V、半波倍電圧整流なら 2√2 V まで充電されます。実効値 50 V なら、それぞれ約70.7 V と約141 V です。B級 SEPP は、負荷 R_L にかかる出力電圧の最大振幅を V_m とすると出力電力は V_m²/(2R_L)、理想的な最大効率は π/4(約78.5%)です。
測定分野の計算も、回路の式で解けます。電圧計を負荷 R に並列にし、電流計で全体の電流を測って電力を IV で求めると、電圧計に流れる電流のぶんだけ大きく出ます。その誤差率は R/R_V なので、誤差を5%以下にするには R_V≧20R が必要です。
ブートラボでの進め方
無線通信ブートラボには、一陸技の令和8年1月期・7月期の無線工学の基礎の A問題40問 が収録されています(B問題の穴埋めは未収録)。式や図のある問題は原本の画像を添え、各肢に「なぜ正しいか・どこが誤りか」の解説を付けています。
- 過去問演習 科目と期を選んで1問ずつ解く。間違えた問題だけ、未解答だけ、ランダム順などの設定ができる
- SRS 復習 解いた問題を「むずい・ふつう・かんたん」で振り分けると、間隔を空けて復習キューに戻ってくる。計算の型を忘れる前に解き直せる
- 本試験形式の通し 1期20問を正誤を見ずに最後まで解き、正答数と合格ライン(125点中75点を60%に換算)で判定する
- 用語集 直列共振回路の Q と帯域幅、交流回路の複素表示、トランジスタのバイアス回路、整流回路の出力電圧など、一陸技の基礎の型を式と図つきで引ける
- 講義「作ってわかる AM 受信機」 同調回路の共振や増幅の考え方を、受信機を組み立てながら確かめられる。共振や dB が数式だけでピンとこない人向け
最初の1週間は、この記事の型2(共振)と型3(交流電力)に当たる問題だけを演習で解き、間違えたものを SRS に回してください。両期で続けて出た型なので、ここが固まると基礎の得点の土台ができます。
よくある質問
一陸技の無線工学の基礎は計算問題がどれくらい出ますか?
令和8年1月期・7月期の A問題40問を数えると、数値を選ぶ計算問題が17問、式を選ぶ・導く問題が12問で、合わせて約7割でした。残りは語句・正誤・図の選択です。
公式はいくつ覚えればいいですか?
まずはこの記事の5つ(デシベル、共振周波数、Q と帯域幅、電力三角形、自己バイアスの式)と、整流回路の √2 倍の関係で十分です。令和8年の2期では、これらで解ける型が両期続けて出ました。
無線工学の基礎の合格点は何点ですか?
日本無線協会の公表資料では、配点125点で合格点は75点です。問題数は25問(A問題20問・B問題5問)、試験時間は2時間30分です。
基礎・工学A・工学Bのどれから勉強すべきですか?
基礎からがおすすめです。共振・交流回路・dB の計算は工学A・Bの計算の前提で、基礎で型を固めておくと後の2科目が楽になります。
参考にした資料
- e-Gov法令検索 無線従事者規則(第5条 試験科目、第6条 科目合格者等に対する免除)
- 日本無線協会 表1 資格別・科目別試験問題数と試験時間
- 日本無線協会 表2 国家試験の合格基準
- 日本無線協会 無線従事者国家試験(試験日・申請受付期間)
- 日本無線協会 試験問題(令和8年1月期・7月期 一陸技 無線工学の基礎)