一陸技の無線工学Aは「無線機の中」、無線工学Bは「アンテナから先」を問う科目です。令和8年の過去問を数えると、工学Aは変調・復調、工学Bはアンテナが最大の分野でした。

結論:工学Aは「無線機の中」、工学Bは「アンテナから先」
一陸技(第一級陸上無線技術士)の無線工学は、無線工学A と 無線工学B の2科目に分かれています。ひとことで言うと、工学Aは送信機・受信機・電源・測定器といった「無線機の箱の中」、工学Bは給電線・アンテナ・電波伝搬といった「箱から出たあと」を扱います。どちらも25問・2時間30分、125点中75点で合格の独立した科目です。
勉強の順番に迷っているなら、先に無線工学の基礎で交流回路と dB の計算を固め、そのあと工学Bから手をつけるのが効率的です。工学Bはアンテナ・給電線・伝搬・測定の4本柱でテーマが絞られており、同じ型の計算が期をまたいで繰り返し出ます。工学Aはデジタル変調・OFDM の比重が大きく、範囲も広いので、時間を長めに見積もってください。
この記事では、令和8年(2026年)1月期・7月期の A問題(各科目20問×2期=40問)を分野ごとに数えた結果をもとに、両科目の出題傾向と勉強の進め方を具体的に示します。

出題範囲:無線従事者規則が定める工学Aと工学B
出題範囲は、無線従事者規則 第5条に資格ごとに書かれています。一陸技の工学Aは「無線設備」、工学Bは「空中線系等」が対象で、どちらも「理論、構造及び機能」「測定機器の理論、構造及び機能」「保守及び運用」の3つが「詳細」のレベルで問われます。法令の文言を表にまとめます。
一陸技の無線工学A・Bの試験科目(無線従事者規則 第5条)
| 無線工学A | 無線工学B | |
|---|---|---|
| 対象 | 無線設備 | 空中線系等 |
| (1) | 無線設備の理論、構造及び機能の詳細 | 空中線系等の理論、構造及び機能の詳細 |
| (2) | 無線設備のための測定機器の理論、構造及び機能の詳細 | 空中線系等のための測定機器の理論、構造及び機能の詳細 |
| (3) | 無線設備及び無線設備のための測定機器の保守及び運用の詳細 | 空中線系及び空中線系等のための測定機器の保守及び運用の詳細 |
| 実際の出題の中心 | 変調・復調、送受信機、電源、レーダー・航法、測定 | アンテナ、給電線・導波管、電波伝搬、アンテナ測定 |
表の最下行は法令の文言ではなく、実際の問題から見た中身です。工学Aの「無線設備」には、AM・FM・PM のアナログ変調、BPSK から 64QAM までのデジタル変調、OFDM、受信機のひずみ、PLL シンセサイザ、整流回路や UPS などの電源、レーダーと航空用無線施設が入ります。工学Bの「空中線系等」には、マクスウェルの方程式から始まる電磁波の基礎、各種アンテナ、同軸線路・導波管、自由空間の伝送損や電離層・対流圏の伝搬が入ります。
どちらの科目にも「測定」が入っている点に注意してください。工学Aでは受信機感度・周波数計・オシロスコープ・スペクトルアナライザなど機器側の測定、工学Bではアンテナ利得や入力インピーダンス、放射界の領域などアンテナ側の測定が出ます。
ちなみに二陸技(第二級陸上無線技術士)の工学A・Bも、無線従事者規則では同じ3項目が並びます。違いは語尾で、一陸技には「の詳細」が付き、二陸技には付きません。同じ題材でも、一陸技では式の導出や数値の計算まで踏み込んで問われると考えてください。
試験の形式・合格ライン・科目合格
日本無線協会が公表している資料では、一陸技の無線工学A・無線工学Bはそれぞれ 25問・2時間30分、配点 125点・合格点75点 のマークシート方式です。問題用紙の構成は、5肢から選ぶ A問題20問と、文中の空欄(ア〜オ)に語群から当てはめる B問題5問です。
合格点を取った科目は、無線従事者規則 第6条により、その試験が行われた月の翌月の初めから 3年以内 に行われる一陸技の試験で免除を申請できます。工学Aと工学Bを同じ期に両方受けてもよいし、片方ずつ取っていってもかまいません。
次回の令和9年1月期は、試験日が2027年1月19日(火)〜20日(水)、申請受付が2026年11月1日(日)〜20日(金)と日本無線協会が告知しています。日程は期ごとに変わるので、申し込みの前に必ず日本無線協会のページで確認してください。
工学A・Bとも合格点は125点中75点です。2科目の合計点ではなく、科目ごとに判定されます。
無線工学Aの出題傾向(令和8年の2期40問を数えた)
令和8年1月期・7月期の工学A の A問題40問を、当サイトで分野ごとに数えました(分類は筆者の判断です)。最も多いのは 変調・復調の13問 で、そのうち大半が BPSK・QPSK・16QAM・64QAM の信号点、OFDM の復調と同期、伝送速度の計算といったデジタル側の問題です。
無線工学A:分野別の問題数(令和8年1月期・7月期 A問題)
| 1月期 | 7月期 | 計 | |
|---|---|---|---|
| 変調・復調(AM・FM・PM・デジタル変調・OFDM) | 5 | 8 | 13 |
| 測定(受信機感度・減衰器・周波数計・オシロスコープ等) | 4 | 3 | 7 |
| 無線方式(地デジの伝送・回線設計・フェージング対策) | 3 | 2 | 5 |
| 送受信機の回路(ひずみ・雑音・PLL・電力増幅) | 1 | 3 | 4 |
| 電源(整流回路・UPS・定電圧回路・衛星の食) | 2 | 2 | 4 |
| レーダー・航法 | 2 | 2 | 4 |
| 信号処理(デジタルフィルタ・標本化・パルスのスペクトル) | 3 | 0 | 3 |
答え方で分けると、数値を選ぶ計算問題が12問、式を選ぶ・式の導出を穴埋めする問題が11問、語句の組合せや正誤を選ぶ問題が17問でした。半分強に計算や式が絡みますが、文章題の比重も大きいのが工学Aの特徴です。
計算問題の題材は、PM・FM の帯域幅、64QAM や OFDM の伝送速度、レーダー方程式の最大探知距離、ドプラ周波数からの速度、dBm を使った回線計算と受信機感度などです。dB 表記が問題文か選択肢に出てくる問題は40問中11問ありました。dB の足し引きで迷うと、それだけで1割以上を落とします。
両期に共通して出た題材も多く、OFDM(1月期は復調、7月期は同期)、FM・PM(帯域幅、S/N 改善、復調器)、受信機の相互変調(1月期は理論、7月期は測定法)、ダイバーシティなどのフェージング対策、整流回路や UPS の電源が続けて出ています。どれか1期を解いておけば、次の期で「見たことのある題材」に出会う確率は高い科目です。
無線工学Bの出題傾向(令和8年の2期40問を数えた)
工学Bも同じく2期40問を数えると、アンテナが15問 と全体の4割近くを占め、続いて電波伝搬9問、給電線・導波管7問、測定6問、電磁波の基礎3問でした。工学Aより分野が少なく、しかも両期でよく似た問題が並びます。
無線工学B:分野別の問題数(令和8年1月期・7月期 A問題)
| 1月期 | 7月期 | 計 | |
|---|---|---|---|
| アンテナ(実効面積・実効長・放射抵抗・各種アンテナ) | 8 | 7 | 15 |
| 電波伝搬(自由空間の伝送損・大地反射・フェージング・電離層) | 4 | 5 | 9 |
| 給電線・導波管(反射・整合・同軸線路・導波管回路) | 3 | 4 | 7 |
| 測定(利得・ハイトパターン・入力インピーダンス・放射界の領域) | 3 | 3 | 6 |
| 電磁波の基礎(マクスウェルの方程式・表皮効果) | 2 | 1 | 3 |
答え方では、数値を選ぶ計算問題が13問、式の問題が9問、語句・正誤が18問でした。両期とも第1問はマクスウェルの方程式、終盤の3問はアンテナ測定という並びで、問題の配置まで似ています。
計算の中心は自由空間基本伝送損です。距離 d、波長 λ の自由空間で、等方性アンテナどうしの間の損失は次の式で表されます。受信電力の計算、回線設計、アンテナ利得の測定まで、この式が下敷きになります。
距離 d が2倍になると損失は4倍(約6 dB 増)。たとえば周波数 14 GHz(λ≒2.14 cm)で 140 dB になる距離は、4πd/λ=10⁷ から d≒17.1 km です。
微小ダイポールと半波長ダイポールの電界強度の比は、令和8年の両期に出ました。絶対利得 1.5 と 1.64 から電界比は約0.96ですが、分子と分母が入れ替わると約1.04 になります。どちらを分子にしているかを問題文で確かめてください。
ほかにも、折返し半波長ダイポールの実効長や受信電圧(1月期に2問)、大地反射波を含む受信点の電界強度(両期)、自由空間基本伝送損や受信電力(両期)が計算の常連です。どれも「実効長・実効面積・利得」の定義式と自由空間基本伝送損を組み合わせれば解けるので、式の数は思ったほど多くありません。

どう勉強するか:工学Bで型を作り、工学Aで範囲を広げる
両科目とも、過去問の同じ型が形を変えて繰り返し出ます。最初から教科書を通読するより、過去問を分野ごとに解いて「この型はこの式」という対応を作るほうが早く点になります。順番の目安を示します。
おすすめの順番
- 無線工学の基礎で、交流回路・共振・dB の計算を先に固める。工学A・Bの計算はほぼすべてこの上に乗っている
- 工学Bのアンテナ(実効面積・実効長・放射抵抗)と自由空間基本伝送損を、式を自分で書けるまで解く
- 工学Bの給電線(反射係数・定在波比・1/4波長整合)と伝搬(大地反射・フレネルゾーン・電離層)へ広げる
- 工学Aのデジタル変調(信号点配置・伝送速度)と OFDM をまとめて解く。13問相当の最大分野なので最優先
- 工学Aの電源・レーダー・測定は1問ずつ独立した知識問題が多い。間違えた問題だけを繰り返す
- 最後に1期分20問を時間を計って通し、両科目とも60%(A問題20問なら12問)を安定して超えるか確かめる
文章題(語句の組合せ・正誤)は、解説を読んで終わりにせず、誤りの肢を「どこを直せば正しくなるか」まで言えるようにしてください。同じ題材が次の期に、別の肢を誤りにして出ることがよくあります。
工学Aと工学Bを同じ期にまとめて受けるか分けるかは、残り期間で決めてください。試験は1日目が基礎と法規、2日目が工学Aと工学Bなので、分けるなら「1回目は2日目の工学A・工学B、次の期で1日目の基礎・法規」のように、同じ日の2科目をセットにすると会場へ行く日が1日で済みます。科目合格は3年有効なので、こうした分け方もできます。
時間配分も練習しておきましょう。25問を2時間30分で解くので、1問あたりの平均は6分です。語句・正誤の問題を2〜3分で片づけ、浮いた時間を計算問題に回すのが基本です。計算は単位をそろえてから式に入れ、答えが出たら桁と単位を選択肢と照らし合わせて検算してください。
当サイトの通しは A問題だけで正答率60%を合格ラインに換算しています。本番は B問題を含めた125点中75点で判定されるので、練習では A問題の7割以上を目標にすると余裕が持てます。
ブートラボでの進め方
無線通信ブートラボには、一陸技の令和8年1月期・7月期の A問題 が工学A・工学Bそれぞれ40問ずつ収録されています(B問題の穴埋めは形式が合わないため未収録です)。数式や図のある問題は原本の画像を添えてあり、各肢に解説が付いています。
まずは工学Bの演習で、アンテナと伝搬の計算を1期分解いてみてください。間違えた問題を SRS に回しながら、用語集で式の意味を確かめると、次の期の問題でも同じ型に気づけるようになります。
よくある質問
一陸技の無線工学Aと無線工学Bはどちらが難しいですか?
範囲の広さでは工学Aのほうが大きく、デジタル変調・OFDM・電源・レーダー・測定と分野が分かれています。工学Bはアンテナ・給電線・伝搬・測定に絞られ、令和8年の2期でも似た型が並んだので、型を覚えれば点が安定しやすい科目です。
工学Aと工学Bは同じ期に受けないといけませんか?
いいえ。科目ごとに合否が判定され、合格点を取った科目は無線従事者規則第6条により、試験の行われた月の翌月の初めから3年以内の試験で免除を申請できます。
無線工学Aと無線工学Bの合格点は何点ですか?
日本無線協会の公表資料では、どちらも配点125点で合格点は75点です。問題数は25問、試験時間は2時間30分です。
給電線や整合回路はどちらの科目ですか?
工学Bです。無線従事者規則では工学Bの対象が「空中線系等」で、令和8年の2期でも給電線の反射・整合、同軸線路、導波管回路は工学Bで出題されました。
参考にした資料
- e-Gov法令検索 無線従事者規則(第5条 試験科目、第6条 科目合格者等に対する免除)
- 日本無線協会 表1 資格別・科目別試験問題数と試験時間
- 日本無線協会 表2 国家試験の合格基準
- 日本無線協会 無線従事者国家試験(試験日・申請受付期間)
- 日本無線協会 試験問題(令和8年1月期・7月期 一陸技 無線工学A・無線工学B)