無線通信ブートラボ
第14回 / 全16回 無線工学

電源と測定器で取りこぼさない

変圧・整流・平滑の順に電源回路をたどり、測定器は「何を見る器具か」を1対1で結びます。計算はどれも1段なので、検算まで含めて確実に取ります。

11分 確認問題 3問 図 7枚 この回で取れる問題 8問
この回のゴール

変圧器の巻数、整流の名称と極性、実効値と平均値、蓄電池の性質、SWR メータ・周波数カウンタ・テスタの使い方を問う問題が取れる。

この回でつくる

変圧器の巻数や整流回路の名前・極性、交流の実効値と平均値、蓄電池の性質を選ぶ「電源」の問題と、SWR メータ・周波数カウンタ・テスタの使いみちを選ぶ「測定」の問題。工学の最後の2問によく並ぶ型です。

STEP 1まず1問、見てみる

先生
先生

式は1本だけです。どこで「求めた気」になってしまうか、そこを見ておきましょう。

問題例題No.2 工学 問29(要旨)

二次側コイルの巻数が 10 回の電源変圧器の一次側に AC100 V を加えたところ、二次側に 5 V が現れた。一次側コイルの巻数は幾らか。

  1. 120 回
  2. 250 回
  3. 3100 回
  4. 4200 回

式は1本なのに、20 回を選ぶ人が少なくありません。100 ÷ 5 = 20 という「比」を出したところで、巻数を求めた気になってしまうからです。

電源と測定は、1問ごとの知識は小さいのに、数字の取り違えと器具の取り違えで落としやすい分野です。この回は前半で電源回路(変圧→整流→平滑)、後半で測定器を扱います。時間がなければ2回に分けて読んでもかまいません。

先生がテスタを持ち、抵抗を測る前に回路の電源スイッチが切れているかを指差して確かめている挿絵。
抵抗を測る前に、まず電源。通電中の抵抗測定は、テスタを壊すうえに値も正しくない

STEP 2覚えること

先生
先生

電源回路は「変圧→整流→平滑」の順番どおり。問題がどの段の話かを先に決めると迷いません。

電源回路は、交流を変圧して電圧を合わせ、ダイオードで整流して一方向の脈流にし、コンデンサとコイルで平滑して直流に近づける、という順に並びます。

さらに出力電圧を一定に保つ場合は、ツェナーダイオードや三端子レギュレータの安定化回路を後ろに足します。平滑と安定化は別の回路です。

理想変圧器の電圧と巻数
\frac{V_1}{V_2} = \frac{N_1}{N_2}

一次と二次の電圧の比は巻数の比に等しい。電圧の高い側が巻数も多い。一次の巻数を求めるなら N1 = N2 × V1 ÷ V2

整流には、ダイオード1個で正の半周期だけを通す半波整流と、両方の半周期を同じ向きにそろえる全波整流があります。全波整流は、中点タップ付きの変圧器とダイオード2個の形か、ダイオード4個のブリッジの形です。

整流後に残る波打ち(リプル)の基本周波数は、半波なら入力と同じ f、全波なら 2fです。50 Hz の電源なら、半波で 50 Hz、全波で 100 Hz になります。全波のほうがリプルの山が倍の頻度で来るので、平滑しやすくなります。

平滑回路では、大容量のコンデンサが脈流の山で充電し、谷で放電して電圧のへこみを埋めます。直列に入れたチョークコイルは電流の変化を妨げ、リプルをさらに小さくします。

オリジナルNo.2 工学 問26 はこの穴埋めで、回路名に「安定化」、部品に「抵抗」や「水晶振動子」を混ぜてきます。

交流→変圧器→整流→平滑→直流の4段のブロックと、各段の出力波形を下に並べた説明図。半波と全波のリプル周波数の違いを示す。
変圧・整流・平滑。半波のリプルは f、全波のリプルは 2f

実効値と平均値も電源の問題で出ます。電源の「交流 100 V、2 A」のように大きさだけを言うときは、実効値を指します。正弦波の最大値を Vm とすると、実効値と平均値は次のとおりです。

正弦波の実効値と平均値
V_e = \frac{V_m}{\sqrt{2}} \approx 0.707\,V_m \qquad V_a = \frac{2V_m}{\pi} \approx 0.637\,V_m

実効値は最大値の 1/√2(約 0.707)倍、平均値は 2/π(約 0.637)倍。ここでの平均値は半周期(整流した波形)の平均。正と負を含む1周期全体で平均すると打ち消し合って 0 になる

家庭の 100 V は実効値なので、最大値は約 141 V、半周期の平均値は約 90 V です。0.707 と 0.637 はどちらも「0.6〜0.7」で紛らわしいので、実効値は √2、平均値は π と記号で覚え、入れ替えた肢を切ります。

1周期の正弦波に最大値・実効値・平均値の3本の水平線を引き、それぞれの倍率を書いた説明図。
最大値 Vm、実効値 0.707Vm、平均値 0.637Vm。高い順に最大値・実効値・平均値

蓄電池は数字と性質の組合せで出ます。鉛蓄電池は1セル(1個)の公称電圧が 2.0 V で、12 V の製品は6セルを直列にしたものです。ニッケルカドミウム蓄電池は 1.2 V です。

リチウムイオン蓄電池は1セル約 3.6〜3.7 V で 1.2 V より高く、自己放電が少なく、メモリー効果がないので継ぎ足し充電ができます。一方で、破損や変形による発熱・発火の危険があるので、充電は専用の充電器で行います。

蓄電池の比較

1セルの公称電圧出題されやすい性質
鉛蓄電池2.0 V12 V は6セル直列
ニッケルカドミウム蓄電池1.2 V比較の基準として出る
リチウムイオン蓄電池約 3.6〜3.7 Vメモリー効果なし・継ぎ足し充電可・発熱発火の危険あり
先生
先生

後半は測定器です。器具の名前と「何を見るか」を1対1で結ぶだけ。計算はほぼありません。

後半は測定器です。3アマで問われるのは「その器具で何を見るか」の1点で、器具ごとに目的は1つに決まっています。

名前に「周波数」が入っていなくても、ディップメータは共振周波数を測る器具だという点に注意してください。逆に SWR メータには周波数を読む機能はありません。

測定器と使う場面

何を見るか使い方の要点
SWR メータ(定在波比測定器)アンテナと給電線の整合送信機と給電線の間に入れ、進行波と反射波から SWR を読む。1 に近いほど整合
ディップメータ共振回路の共振周波数測る回路に近づけて結合させ、指示が下がる(ディップする)周波数を読む
周波数カウンタ周波数一定時間に入るサイクル数を数える
テスタ(回路計)電圧・電流・抵抗抵抗レンジは内蔵電池で測る
擬似負荷(ダミーロード)電波を出さずに送信機を調整アンテナの代わりに送信電力を受けて熱にする
周波数カウンタの原理
f = \frac{N}{T}

基準発振器で正確なゲート時間 T を作り、その間に入った被測定信号のサイクル数 N を数える。T = 1 秒なら N がそのまま周波数(Hz)

ゲート時間は長いほど細かく読めます。1 秒なら 1 Hz 単位、0.1 秒なら 10 Hz 単位です。数えた数を時間で割るだけなので、ゲート時間が 1 秒でないときは割り算を忘れないでください。

アナログ式テスタで抵抗を測るときの注意は、オリジナルNo.1 工学 問30 でそのまま問われます。回路の電源を切り、コンデンサがあれば放電させてから測ります。

測る前に2本のテストリードを短絡して指針を 0 Ω に合わせる零オーム調整をし、レンジを切り替えたらやり直します。指針が読みやすい範囲に来るレンジを選び、終わったら OFF か交流電圧の最大レンジに戻します。

SWR メータ・ディップメータ・周波数カウンタ・テスタ・ダミーロードの5つを並べ、それぞれをつなぐ相手と測る量を矢印で示した説明図。
器具ごとに目的は1つ。整合なら SWR メータ、共振ならディップメータ、周波数ならカウンタ

STEP 3肢の切り方

先生
先生

計算問題は、選んだ答えを式に戻して検算します。ほかの肢も同じ式で切れますよ。

まず例題No.2 工学 問29(変圧器の巻数)です。式は V1 / V2 = N1 / N2。電圧比は 100 ÷ 5 = 20 なので、一次の巻数は二次の 20 倍で、N1 = 10 × 20 = 200 回です。

変圧器の巻数を1肢ずつ切る

  1. ✕
    肢1 20 回

    20 は電圧比そのもので、巻数ではない。二次の 10 回に掛けて初めて一次の巻数になる。

  2. ✕
    肢2 50 回

    巻数比は 50 ÷ 10 = 5 なので、二次は 100 ÷ 5 = 20 V。5 V に合わない。

  3. ✕
    肢3 100 回

    巻数比は 10 なので、二次は 100 ÷ 10 = 10 V。5 V に合わない。

  4. ○
    肢4 200 回

    巻数比は 20 で、二次は 100 ÷ 20 = 5 V。問題の数値と一致する。

先生がホワイトボードの「100 ÷ 5 = 20」の横に「N1 = 10 × 20 = 200 回」と書き足し、受験生に比と巻数の違いを示している挿絵。
20 は比。二次の巻数に掛けて、一次は 200 回

例題No.1 工学 問29 は、整流回路の図から名称と出力側 a 点の極性を選びます。図は、中点タップ付きの変圧器の両端にダイオードが1個ずつつながり、2つのダイオードのカソード(縦棒の側)が合流して a 点に出て、負荷を通って中点タップに戻る形です。

整流回路の名称と a 点の極性を1肢ずつ切る

  1. ✕
    肢1 名称:半波整流回路 a 点の極性:負

    中点タップとダイオード2個で、正負どちらの半周期でもどちらかのダイオードが導通する。全波整流なので名称で切れる。

  2. ✕
    肢2 名称:半波整流回路 a 点の極性:正

    極性は合っていても、名称が半波なので組合せとして誤り。

  3. ✕
    肢3 名称:全波整流回路 a 点の極性:負

    どちらの半周期でも電流はカソード側から a 点に入り、負荷を通って中点タップへ戻る。電流が流れ出す a 点は正。

  4. ○
    肢4 名称:全波整流回路 a 点の極性:正

    名称も極性も合う。名前と極性を別々に決めると、半分ずつ消える。

極性の問題は、ダイオードの向きを半周期ずつ追えばどんな図でも解けます。もし図のダイオードが2個とも逆向き(アノードが a 点側)なら、電流は中点タップから負荷を通って a 点に向かい、そこからダイオードへ吸い込まれます。

負荷の a 点側が低い電位になるので、a 点は負です。図を見たら最初に「縦棒がどちらを向いているか」を確かめ、名前と極性を別々に決めてから組合せの肢を探します。

周波数カウンタの時間窓。上段に被測定信号のパルス列、中段に基準発振器で作ったゲート時間の窓、下段にカウンタの表示を描いた説明図。
基準で区切るのは「時間」、数えるのは「サイクル数」。振幅や電圧値は関係ない

例題No.3 工学 問30(周波数カウンタの原理)は、周波数の定義に戻れば一瞬です。周波数は1秒あたりの繰り返しの回数なので、基準周波数で区切るのは時間、その中で数えるのはサイクル数です。

区切るものに「振幅」、数えるものに「電圧値」を入れた肢は、どれも周波数の定義から外れるので切れます。

例題No.1 工学 問30(SWR メータの使いみち)は、器具と目的の表で照合します。共振周波数ならディップメータ、送信周波数なら周波数カウンタ、寄生発射(スプリアス)ならスペクトルアナライザ。アンテナと給電線の整合を調べるときだけが SWR メータです。

例題No.2 工学 問30 は、電源の「100 V、2 A」が実効値であることを先に決め、平均値 2/π・実効値 1/√2 を入れ替えた肢を切ります。

例題No.3 工学 問29 は、リチウムイオン蓄電池が「1.2 V より高い・継ぎ足し充電ができる・発熱発火の危険がある」の3点セットです。

STEP 4ひっかけ

先生
先生

テスタの肢で「通電したまま抵抗を測る」と見えたら、その時点で誤りです。

ひっかけ

入れ替えられやすいのは、巻数比の上下(比の 20 をそのまま巻数にする)、半波 f と全波 2f、0.637 と 0.707、実効値と平均値、平滑回路と安定化回路、SWR メータとディップメータ。テスタで「通電したまま抵抗を測る」は誤りの定番です。

先生が「実効値 Vm/√2 ≒ 0.707 Vm」と「平均値 2Vm/π ≒ 0.637 Vm」の2枚のカードを両手に持ち、取り違えないよう示している挿絵。
実効値は √2、平均値は π。0.707 と 0.637 を記号で区別する
試験ではここ

計算は1段で終わる問題ばかりです。式を書いたら、選んだ答えを式に戻して検算してから次へ進みます。測定器の問題は器具の名前と目的を1対1で結び、目的が2つ書いてある肢は疑ってください。

STEP 5自分で解く

確認問題

60 Hz の交流を全波整流したとき、出力に残るリプルの基本周波数はいくらか。

確認問題

周波数カウンタのゲート時間を 0.01 秒にしたところ、その間に 100,000 サイクルを数えた。被測定信号の周波数はいくらか。

確認問題

最大値が約 141 V の正弦波交流の、実効値と(半周期の)平均値の組合せとして正しいものはどれか。

STEP 6今日のまとめ

先生
先生

5つ、式や数字まで言えるか確かめましょう。詰まったものは表と図に戻ってください。

今日おぼえたこと

  • V1 / V2 = N1 / N2。比を出したら、もう一方の巻数に掛ける
  • リプルは半波 f、全波 2f。平滑はコンデンサとチョークコイル、安定化は別の回路
  • 実効値 Vm/√2(0.707)、平均値 2Vm/π(0.637)。電源の 100 V は実効値
  • 鉛 2.0 V/セル、リチウムイオンは 1.2 V より高く継ぎ足し充電可、発火の危険あり
  • SWR メータは整合、ディップメータは共振、カウンタは時間内のサイクル数。抵抗は電源を切って零オーム調整

次回は法規に戻り、処分・返納・罰則です。「誰に対する措置か」を先に読む練習をします。

本番の問題この回で取れるようになった問題

「例題No.」は公益財団法人日本無線協会が公表している CBT 方式の国家試験の例題、「過去問」は同協会の公表試験問題です(日本無線協会 試験問題。同協会の利用条件に基づき掲載)。「オリジナル」は当サイトの作問です。

日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.1 問29 図に示す整流回路において、その名称と出力側 a 点の電圧の極性との組合せで、正しいのは次のうちどれか。 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.1 問30 測定器を利用して行う操作のうち、定在波比測定器(SWR メータ)が使用されるのは、次のうちどれか。 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.2 問29 二次側コイルの巻数が 10 回の電源変圧器において、一次側に AC100〔V〕を加えたところ二次側に 5〔V〕の電圧が現れた。この電源... 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.2 問30 次の記述の[ ]内に入れるべき字句の組合せで、正しいのはどれか。 (1) 電源回路で、交流入力電圧 100〔V〕、交流入力電流 2〔A... 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.3 問29 次の記述は、リチウムイオン蓄電池の特徴について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の組合せで、正しいのはどれか。 リチウムイオン... 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.3 問30 次の記述は、周波数カウンタの測定原理について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の組合せで、正しいのはどれか。以下から選べ。 周... 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.1 問30 アナログ式テスタ(回路計)で抵抗を測定するときの注意事項として、誤っているのは次のうちどれか。 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.2 問26 次の記述の[ ]内に入れるべき字句の組合せで、正しいのはどれか。 整流回路の出力は脈流であり、これを直流に近づけるために[A]回路を用... 解く →
次の回へ第15回 処分・返納・罰則は対象者を先に読む発射の停止・運用の停止・従事停止・免許の取消しの区別、免許証の返納、無免許開設や秘密の漏えいの罰則を問う問題が取れる。