STEP 1まず1問、見てみる

数字は約 73 Ω と 300/f の二つだけ。あとは「どう置いて、どこから見たか」を絵にするの。
半波長ダイポールアンテナの特性として、誤っているものはどれか。
- 1放射抵抗は 50 Ω である
- 2電圧分布は両端で最大になる
- 3大地と垂直に設置すると、水平面内の指向性は全方向性になる
- 4大地と水平に設置すると、水平面内の指向性は8字形になる
迷いどころは二つあります。一つは 50 Ω という数字です。アマチュア無線機と同軸ケーブルでいつも見る数字なので、正しく見えてしまいます。
もう一つは肢3と肢4で、「どう置いたアンテナを、どの面で見たか」が頭の中で絵にならないと、どちらも正しいのか判断できません。この回では、数字は約 73 Ω と 300/f の二つに絞り、残りは絵で覚えます。

STEP 2覚えること
まず長さの計算です。電波は1秒に約 3×10⁸ m 進むので、周波数を MHz で入れれば、波長がメートルで出る形にできます。
λ は波長〔m〕、f は周波数〔MHz〕。300 は光の速さ 3×10⁸ m/s を、MHz の 10⁶ で割った値。kHz で与えられたら 1,000 で割って MHz に直してから入れる。145 MHz なら 300÷145≒2.07 m
300 を半分にすれば半波長、4分の1にすれば 1/4 波長。半波長ダイポールの全長は 150/f、ブラウンアンテナや 1/4 波長垂直接地アンテナの素子の長さは 75/f で出る
よく使う周波数の長さ(理想値)
| 波長 | 半波長 | 1/4 波長 | |
|---|---|---|---|
| 7.05 MHz(7,050 kHz) | 約 42.6 m | 約 21.3 m | 約 10.6 m |
| 21 MHz | 約 14.3 m | 約 7.14 m | 約 3.57 m |
| 50 MHz | 6 m | 3 m | 1.5 m |
| 145 MHz | 約 2.07 m | 約 1.03 m | 約 0.52 m |
半波長ダイポールは中央で給電するので、全長が半波長、片腕はその半分です。50 MHz なら全長 3 m、片腕 1.5 m。計算した値を片腕の長さと思い込むと、2倍の大きさのアンテナを作ることになります。
なお実物のアンテナは、素子の太さなどの影響で理想値より少し短く切ります(短縮率)。試験の計算問題は、特に断りがなければ理想値で答えます。

次に半波長ダイポールの中身です。中央の給電点で電流が最大、両端で電流はゼロになります。電圧はその逆で、両端で最大、中央で最小です。
給電点から見た抵抗分である放射抵抗は、理想的な半波長ダイポールで約 73 Ω。同軸ケーブルの 50 Ω や 75 Ω とは別の数字です。

放射抵抗がわかれば、アンテナ電流と放射電力の関係は、抵抗で消費される電力と同じ式で計算できます。
P は放射電力〔W〕、I はアンテナ電流(給電点の電流)〔A〕、R は放射抵抗〔Ω〕。半波長ダイポールなら R≒73 Ω。電流を2倍にすると電力は4倍になる。電流を求めるときは、P÷R の平方根をとるのを忘れない

指向性は「アンテナの素子の延長方向には電波が出ない」の一つだけ覚えれば、残りは絵で出せます。
水平に張ったダイポールを真上から見ると(水平面)、素子と直角の方向に強く、素子の方向にはゼロなので8字形です。
垂直に立てたダイポールを真上から見ると、素子の方向は真上なので、水平面内のどの方向にも同じだけ出ます。これが全方向性(無指向性)です。問題に「水平面内」とあるか「垂直面内」とあるかを必ず確かめてください。

ブラウンアンテナ(グランドプレーンアンテナ)は、長さ 1/4 波長の垂直な放射素子と、その根元から水平または斜め下に出した数本のラジアルでできています。ラジアルが大地の代わりになります。素子が垂直なので垂直偏波で、水平面内は全方向性です。
八木・宇田アンテナは、給電する放射器(約半波長)の後ろに放射器より長い反射器、前に放射器より短い導波器を並べたものです。電波が最も強く出るのは導波器の方向で、一方向に鋭い単一指向性になります。反射器は後ろへの放射を抑える役です。

長さが合わないアンテナを共振させる方法も出ます。1/4 波長より短い垂直接地アンテナは容量性になるので、コイル(延長コイル)を直列に入れて電気的に長くします。逆に長すぎるときはコンデンサ(短縮コンデンサ)を直列に入れます。
抵抗を入れても、接地抵抗を大きくしても、熱で電力を失うだけで共振は合いません。
最後にバランです。半波長ダイポールは左右対称の平衡形、同軸ケーブルは外部導体を接地側とする不平衡形です。
直結すると同軸の外側に電流が流れて指向性が乱れるので、平衡と不平衡を変換するバランをはさみます。バランは英語の balanced と unbalanced を縮めた名前です。
STEP 3肢の切り方

「誤っているもの」は、数字の肢から先に見るのが近道。73 Ω を覚えていれば一発よ。
冒頭の例題No.1 工学 問26 から解きます。「誤っているもの」を選ぶ問題なので、正しい肢を3つ見つける作業でもあります。数字の肢を先に見て、残りは絵で確かめます。
例題No.1 工学 問26 を1肢ずつ切る
- ○
- ✕肢2 電圧分布は両端で最大
電流は中央で最大、電圧は両端で最大。正しい記述なので答えから外す。
- ✕肢3 垂直設置で、水平面内は全方向性
垂直に立てて真上から見ると、素子の方向は真上。水平面内のどの方向にも同じだけ出るので正しい。
- ✕肢4 水平設置で、水平面内は8字形
水平に張って真上から見ると、素子と直角の方向に強く、素子の方向はゼロ。8字形で正しい。
次は計算の問題です。答えを出したら、肢の値を式に戻して逆算します。
半波長ダイポールアンテナの放射電力を 12 W にするためのアンテナ電流の値として、最も近いものはどれか。
- 10.4 A
- 20.8 A
- 31.2 A
- 41.6 A
使う式は P=I²R、R は約 73 Ω。I=√(12÷73)=√0.164…≒0.405 A です。
例題No.3 工学 問26 を逆算で切る
- ○肢1 0.4 A
I=√(12÷73)≒0.405 A で最も近い。逆算しても 0.16×73≒11.7 W で、12 W にほぼ一致する。
- ✕肢2 0.8 A
0.64×73≒47 W。12 W を大きく超える。
- ✕肢3 1.2 A
1.44×73≒105 W。12 W を大きく超える。
- ✕肢4 1.6 A
2.56×73≒187 W。12 W を大きく超える。

電流を2倍にすると電力は4倍。肢の値を P=I²R に戻せば、30秒で検算できるわ。
例題No.1 工学 問27 は、長さ 8 m の 1/4 波長垂直接地アンテナで 7,050 kHz を出すときの共振のさせ方です。7,050 kHz=7.05 MHz なので、1/4 波長は 75÷7.05≒10.6 m。
アンテナの 8 m はこれより短いので、延長コイルを直列に入れる肢4が答えです。コンデンサの肢3はさらに短くする向き、抵抗の肢2と接地抵抗の肢1は損失を増やすだけです。
オリジナルNo.2 工学 問27 は 145 MHz の 1/2 波長。300÷145≒2.07 m の半分で約 1.03 m、肢4の 1.0 m です。2.1 m の肢2は1波長、0.5 m の肢3は 1/4 波長の値なので、何分の何を聞かれているかで切ります。
構造の問題は一言で切れる
STEP 4ひっかけ

全長と片腕、73 Ω と 50 Ω。肢の数字は、こういう取り違えで作られているのよ。
取り違えやすい五つ
| 正しくは | 取り違えやすい相手 | |
|---|---|---|
| ① 長さ | 150/f は全長。片腕はその半分 | 150/f を片腕の長さと思う |
| ② 放射抵抗 | 約 73 Ω | 同軸ケーブルの 50 Ω・75 Ω |
| ③ 指向性 | どう置いたかと、どこから見たかの組で決まる | 水平面と垂直面の取り違え |
| ④ 八木・宇田 | 反射器は長く後ろ、導波器は短く前。最大放射は導波器の方向 | 反射器の方向に飛ぶと思う |
| ⑤ 分布 | 電流は中央で最大、電圧は両端で最大 | 電流と電圧を逆にする |

長さの計算は、周波数を MHz に直してから 300・150・75 のどれかを割るだけです。kHz のまま 300 を割ると桁が千倍ずれるので、最初の一手で単位をそろえます。電流と電力の計算は、答えを出したら肢の値を P=I²R に入れて逆算すると、30秒で確かめられます。
STEP 5自分で解く

周波数は MHz に直してから割る。答えを選んだら、式に戻して検算してから次へね。
周波数 430 MHz の電波の 1/4 波長の長さとして、最も近いものはどれか。
半波長ダイポールアンテナのアンテナ電流が 0.5 A のとき、放射電力に最も近いものはどれか。ただし、放射抵抗は 73 Ω とし、導体の損失は無視する。
P=I²R=0.5²×73=0.25×73≒18 W です。12 W は放射抵抗を同軸の 50 Ω で計算した値(0.25×50=12.5 W)、37 W は電流を二乗し忘れた値(0.5×73)、73 W は電流が 1 A のときの値です。
3素子の八木・宇田アンテナについての記述で、正しいものはどれか。
STEP 6今日のまとめ
今日おぼえたこと
- 波長 λ≒300/f、半波長≒150/f、1/4 波長≒75/f(f は MHz、長さは m)。kHz は先に MHz に直す
- 半波長ダイポールは、電流が中央で最大・電圧が両端で最大、放射抵抗は約 73 Ω。P=I²R で電流と電力を行き来する
- 水平設置は水平面で8字形、垂直設置は水平面で全方向性。ブラウンアンテナは 1/4 波長の垂直素子とラジアルで全方向性
- 八木・宇田は、反射器が長く導波器が短く、導波器の方向へ放射
- 短いアンテナには延長コイルを直列、ダイポールと同軸ケーブルの間にはバラン
次回はアンテナにつながる給電線と、出た電波の伝わり方です。SWR の最小値と電離層の名前を、現象から選べるようにします。
本番の問題この回で取れるようになった問題
「例題No.」は公益財団法人日本無線協会が公表している CBT 方式の国家試験の例題、「過去問」は同協会の公表試験問題です(日本無線協会 試験問題。同協会の利用条件に基づき掲載)。「オリジナル」は当サイトの作問です。