無線通信ブートラボ
第13回 / 全16回 無線工学

半導体と論理回路は端子名と真理値表

ダイオード・トランジスタ・FET の穴埋めは、語が「どの素子の言葉か」で切れます。論理回路は真理値表を4行書けば外しません。

12分 確認問題 3問 図 6枚 この回で取れる問題 8問
この回のゴール

ダイオードの種類・トランジスタと FET の電極と制御のしかた・基本ゲートの出力を問う問題が、肢を切って取れる。

この回でつくる

ダイオード・トランジスタ・FET の名前と働きを組み合わせる穴埋め問題と、論理回路の記号や名前から出力の 0/1 を選ぶ問題。工学で毎回1〜2問出る型です。

STEP 1まず1問、見てみる

先生
先生

まだ答えは出さなくて大丈夫。並んだ語が「どの素子の言葉か」だけ眺めてみましょう。

問題例題No.2 工学 問18(要旨)

接合形の電界効果トランジスタ(FET)は、[A]を変化させることにより[B]を変化させ、[C]が変化する働きがある。正しい組合せはどれか。

  1. 1A:ゲート電流 B:反転層 C:ドレイン電流
  2. 2A:ゲート電流 B:空乏層 C:コレクタ電圧
  3. 3A:ゲート電圧 B:反転層 C:コレクタ電圧
  4. 4A:ゲート電圧 B:空乏層 C:ドレイン電流

どれも教科書で見た語なので、読むほど迷います。迷う原因は知識不足より、バイポーラトランジスタの語と FET の語、接合形の語と MOS 形の語が同じ肢に混ぜてあることです。

語ごとに「どの素子の言葉か」を判定できれば、知らない語が1つあっても肢は切れます。この回は、その判定表を頭に入れ、論理回路の真理値表を4行で書けるようにします。

問題オリジナルNo.3 工学 問20(要旨)

2入力の NAND 回路で、出力が 0 になる入力 X、Y の組合せはどれか(1 は電圧の高い状態、0 は低い状態)。

  1. 1X=0、Y=0
  2. 2X=0、Y=1
  3. 3X=1、Y=0
  4. 4X=1、Y=1

もう1問の代表がこちらです。暗記より手順の問題で、真理値表を1行ずつ書けば確実に取れます。

先生が論理回路の記号の出力側にある小さな丸を赤ペンで囲み、反転を示している挿絵。
記号の右端の小さな丸が「反転」。ここを見落とすと AND と NAND を取り違える

STEP 2覚えること

先生
先生

ダイオードは「順方向か逆方向か」、トランジスタと FET は「電流か電圧か」。この2本の軸で整理します。

ダイオードは P 形と N 形の半導体をつないだ PN接合 です。P 側に正、N 側に負の電圧を加えるのが順方向で、電流がよく流れます。シリコンでは約 0.6〜0.7 V を超えると急に流れ出します。

逆に N 側を正にすると逆方向で、接合部の空乏層が広がり、電流はほとんど流れません。この一方向にだけ流す性質が整流と検波に使われます。

逆方向の使い方が2つあります。1つはバラクタダイオード(可変容量ダイオード)です。逆方向電圧を大きくすると空乏層が広がり、接合部の静電容量が小さくなります。電圧で容量を変えられるので、同調回路や VCO の周波数可変に使います。

もう1つはツェナーダイオード(定電圧ダイオード)です。逆方向電圧がある値(降伏電圧)を超えると電流が急に流れ、端子電圧がほぼ一定になります。これを定電圧回路に使います。

ダイオードの種類(3アマで出る範囲)

使う向き利用する性質図記号の目印
一般のダイオード順方向一方向にだけ流す(整流・検波)三角と縦棒
バラクタダイオード逆方向逆電圧で静電容量が変わる縦棒にコンデンサの棒を重ねる
ツェナーダイオード逆方向降伏後の電圧がほぼ一定縦棒の両端が折れ曲がる

名前の似た別物も一緒に出ます。バリスタは電圧で「抵抗」が変わる素子で、静電容量ではありません。トンネルダイオードは順方向の負性抵抗を使う素子で、逆方向の定電圧とは関係がありません。例題No.1 工学 問18 は、この4つを入れ替えた穴埋めです。

PN接合ダイオードに順方向と逆方向の電圧を加えた2つの回路と、逆方向を使うバラクタとツェナーの用途を並べた説明図。
順方向は流れる、逆方向は流れない。逆方向の「容量」を使うのがバラクタ、「降伏電圧」を使うのがツェナー

トランジスタ(バイポーラトランジスタ)の電極はエミッタ(E)・ベース(B)・コレクタ(C)です。エミッタから出たキャリアの大部分がコレクタに達し、ごく一部がベースから流れ出します。

だから電流の関係は次の1本だけ覚えれば足ります。小さなベース電流で大きなコレクタ電流を動かす、つまり電流で制御する素子です。

トランジスタの3つの電流
I_E = I_B + I_C

エミッタ電流はベース電流とコレクタ電流の和。ベース電流は3つの中でいちばん小さく、コレクタ電流の数十分の一から数百分の一ほど。IE が IC より小さくなる式(IE = IC − IB など)は符号の誤り

FET(電界効果トランジスタ)の電極はゲート(G)・ソース(S)・ドレイン(D)です。ゲートに加える電圧でドレイン電流を制御する電圧制御素子で、ゲートにはほとんど電流が流れません。

そのため入力インピーダンスが高く、前の段に負担をかけません。電流を運ぶキャリアは電子か正孔のどちらか一方だけなので、ユニポーラ形と呼ばれます。

FET には接合形と MOS 形があります。接合形 FET はゲートの PN接合 に逆方向電圧をかけ、空乏層の広がりで電流の通り道(チャネル)の幅を変えます。「反転層」は MOS 形 FET の説明に出てくる語なので、接合形の問題では使いません。

電極の対応(コレクタ→ドレイン、エミッタ→ソース、ベース→ゲート)

バイポーラトランジスタFET
キャリアを送り出すエミッタソース
キャリアを受け取るコレクタドレイン
流れを制御するベース(電流で)ゲート(電圧で)
左にバイポーラトランジスタの記号と E・B・C、右に FET の記号と S・G・D を並べ、対応する電極を線で結んだ説明図。
制御する電極どうし(ベースとゲート)を先に結ぶと、残りの対応も決まる

最後に論理回路です。1 は電圧の高い状態、0 は低い状態を表します。AND は入力が全部 1 のときだけ 1、OR は入力のどれか1つでも 1 なら 1、NOT は入力を反転します。

NAND は AND の後ろに NOT を付けたもので、全部 1 のときだけ 0。NOR は OR の後ろに NOT を付けたもので、全部 0 のときだけ 1 です。

記号では、AND は左辺がまっすぐで右側が半円の形、OR は左辺が内側に反って右端がとがった形です。出力側の小さな丸が反転を表します。

2入力の真理値表

ANDORNANDNOR
X=0、Y=00011
X=0、Y=10110
X=1、Y=00110
X=1、Y=11100

表を4列とも丸暗記する必要はありません。覚えるのは AND と OR の2列だけで、NAND と NOR はそれを1つずつ反転して作ります。入力が3つに増えても、NAND は全部 1 のときだけ 0、NOR は全部 0 のときだけ 1 です。

ツェナーダイオードは次回の電源回路(安定化)にも出てくるので、ここで「逆方向で電圧を一定にする素子」と結び付けておきましょう。

先生
先生

NAND と NOR は、AND と OR の答えをひっくり返すだけ。覚える列は2本で足ります。

STEP 3肢の切り方

先生
先生

空欄は A から順に埋めなくていいんです。いちばん判定しやすい語から見て、肢を消しましょう。

例題No.2 工学 問18(接合形 FET の穴埋め)を、肢を1つずつ切って解きます。空欄の順ではなく、いちばん判定しやすい語から見ます。最初はCのコレクタ、次にAのゲート電流、最後にBです。

接合形 FET の穴埋めを1肢ずつ切る

  1. ✕
    肢1 A:ゲート電流 B:反転層 C:ドレイン電流

    FET は電圧制御素子で、ゲート電流はほとんど流れない。反転層も MOS 形の語で、接合形の問題では使わない。

  2. ✕
    肢2 A:ゲート電流 B:空乏層 C:コレクタ電圧

    コレクタはバイポーラトランジスタの電極名。FET の問題にコレクタが出た時点で切れる。

  3. ✕
    肢3 A:ゲート電圧 B:反転層 C:コレクタ電圧

    Cのコレクタ電圧で切れる。Bの反転層も MOS 形の語。

  4. ○
    肢4 A:ゲート電圧 B:空乏層 C:ドレイン電流

    ゲート電圧で空乏層の広がりを変え、ドレイン電流を制御する。3語とも接合形 FET の言葉で揃う。

先生がホワイトボードの4つの肢のうち「コレクタ電圧」を含む2つに赤ペンで線を引き、受験生と一緒に肢を消している挿絵。
FET の問題に「コレクタ」が出たら、その肢は消してよい

例題No.3 工学 問18(電極の対応)も同じ考え方です。まずベースとゲートを結びます。ゲートをコレクタやエミッタに当てている肢はここで消えます。

次にエミッタとソース、コレクタとドレインを確かめます。ソースとドレインを逆にした肢が最後まで残りやすいので、「送り出す側どうし」で照合します。

「誤っているのはどれか」の形でも手順は同じです。オリジナルNo.3 工学 問19 は FET の記述4つから誤りを1つ選びます。電圧制御・入力インピーダンスが高い・ユニポーラ形の3つは FET の性質どおりです。

残る1つに「ベース」「コレクタ電流」というバイポーラの語が入っています。語の所属が混ざった肢が誤りです。

オリジナルNo.2 工学 問19(PN接合ダイオードの正しい記述)

  • 「N 側に正で大きな電流」 逆方向なので誤り
  • 「どちらの向きでも同じ電流」 整流作用を否定しているので誤り
  • 「逆電圧を変えても容量は変わらない」 バラクタの原理を否定しているので誤り
  • 「P 側に正で流れやすい」 順方向の説明どおり。これを残す

オリジナルNo.1 工学 問19(電流の関係式)は、IE がいちばん大きいことだけ確かめれば済みます。

IC = IE + IB は IC が IE より大きくなり、IB = IC + IE は最小のはずの IB が最大になり、IE = IC − IB は IE が IC より小さくなります。どれも大小関係で切れます。

オリジナルNo.3 工学 問20(NAND で出力 0 になる組合せ)は、真理値表を書く問題です。NAND は AND の結果を反転したもの。まず AND を4行書きます(00→0、01→0、10→0、11→1)。反転すると 1、1、1、0 です。

NAND の出力が 0 になる組合せを1肢ずつ切る

  1. ✕
    肢1 X=0、Y=0

    AND は 0、反転して出力は 1。0 にならないので切る。

  2. ✕
    肢2 X=0、Y=1

    AND は 0、反転して出力は 1。切る。

  3. ✕
    肢3 X=1、Y=0

    AND は 0、反転して出力は 1。切る。

  4. ○
    肢4 X=1、Y=1

    AND が 1 になる唯一の行で、反転して出力 0。NAND は全部 1 のときだけ 0。

AND・OR・NAND・NOR の記号を縦に並べ、それぞれの右に2入力の真理値表を置き、NAND と NOR の出力の丸を強調した説明図。
AND と NAND、OR と NOR は形が同じ。違いは出力の小さな丸だけ

例題No.3 工学 問19 は、2つの記号に X=1、Y=1 を入れたときの出力の組合せです。左の記号 A は左辺がまっすぐで丸がないので AND、出力は 1 です。

右の記号 B は OR の形で出力に丸があるので NOR、OR の結果 1 を反転して 0。「A が 1、B が 0」の組を選びます。B の丸を見落とすと「A が 1、B が 1」に引っかかります。

STEP 4ひっかけ

先生
先生

FET の肢に「ベース」「コレクタ」が混ざっていたら要注意。語の所属がずれた肢が誤りです。

ひっかけ

入れ替えられやすい組は、ゲート電圧/ゲート電流、空乏層/反転層、コレクタ/ドレイン、ツェナー/バラクタ、バラクタ/バリスタ、NAND/NOR。電流の式は IE = IB + IC だけが正しく、IC = IE + IB や IE = IC − IB は符号の入れ替えです。

先生がホワイトボードに書かれた「IE = IC − IB」に大きくバツを付け、横の「IE = IB + IC」を指し示している挿絵。
電流の式は IE = IB + IC だけ。IE がいちばん大きい
試験ではここ

この型は1問30秒が目安です。穴埋めは「その語はどの素子の言葉か」で先に切り、論理回路は計算用紙に4行の真理値表を書いてから肢を見ます。図の問題では、出力側の丸を指で押さえてから記号の名前を決めてください。

STEP 5自分で解く

確認問題

2入力の NOR 回路で、出力が 1 になる入力 X、Y の組合せはどれか。

確認問題

NPN 形トランジスタをエミッタ接地で使い、コレクタ電流 IC が 8 mA、ベース電流 IB が 0.2 mA であった。エミッタ電流 IE はいくらか。

確認問題

半導体素子についての記述で、正しいものはどれか。

STEP 6今日のまとめ

先生
先生

4つとも口に出して言えたら合格ラインです。言えないものは表に戻ってくださいね。

今日おぼえたこと

  • 順方向は P 側が正。逆方向の容量変化がバラクタ、降伏後の定電圧がツェナー
  • IE = IB + IC。トランジスタは電流制御、FET はゲート電圧でドレイン電流を制御
  • コレクタ→ドレイン、エミッタ→ソース、ベース→ゲート。反転層は MOS 形の語
  • NAND は全部 1 のときだけ 0、NOR は全部 0 のときだけ 1。出力の丸が反転

次回は電源回路と測定器です。変圧器の巻数、整流のリプル、実効値と平均値、測定器の使い分けを、1問ずつ取れる形にします。

本番の問題この回で取れるようになった問題

「例題No.」は公益財団法人日本無線協会が公表している CBT 方式の国家試験の例題、「過去問」は同協会の公表試験問題です(日本無線協会 試験問題。同協会の利用条件に基づき掲載)。「オリジナル」は当サイトの作問です。

日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.1 問18 次の記述の[ ]内に入れるべき字句の組合せで、正しいのはどれか。 (1) 加える電圧により、静電容量が変化することを利用するものは、[... 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.2 問18 次の記述の[ ]内に入れるべき字句の組合せで、正しいのはどれか。以下から選べ。 接合形の電界効果トランジスタ(FET)は、[A]を変化... 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.3 問18 次の記述の[ ]内に入れるべき字句の組合せで、正しいのはどれか。 電界効果トランジスタ(FET)の電極名をトランジスタ(バイポーラトラ... 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.3 問19 図に示す A、B の論理回路に X =1、Y =1 の入力を加えたとき、論理回路の出力 F の組合せで、正しいのは次のうちどれか。ただ... 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.1 問19 NPN 形トランジスタをエミッタ接地で動作させたときのエミッタ電流 IE、ベース電流 IB 及びコレクタ電流 IC の関係式で、正しい... 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.2 問19 PN 接合ダイオードについての記述で、正しいのは次のうちどれか。 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.3 問19 電界効果トランジスタ(FET)についての記述で、誤っているのは次のうちどれか。 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.3 問20 2 入力の NAND 回路において、出力が 0 になる入力 X、Y の組合せとして、正しいのは次のうちどれか。ただし、1 は電圧の高い... 解く →
次の回へ第14回 電源と測定器で取りこぼさない変圧器の巻数、整流の名称と極性、実効値と平均値、蓄電池の性質、SWR メータ・周波数カウンタ・テスタの使い方を問う問題が取れる。