無線通信ブートラボ
第12回 / 全16回 無線工学

電気基礎は比例関係と単位で解く

電気基礎の計算は一段で終わるものがほとんどです。落とす原因は式ではなく、何が共通で何が分かれるかの読み違いと、二乗・平方根・単位の取り違え。そこだけを順に潰します。

10分 確認問題 3問 図 7枚 この回で取れる問題 8問
この回のゴール

直列の分圧、並列コンデンサの電荷、共振周波数の倍率、電力利得の dB を計算し、クーロン力・電磁誘導・コイルの位相・コンデンサの容量の性質を選べる。

この回でつくる

直列回路の分圧、並列のコンデンサの電荷、共振周波数の倍率、電力利得のデシベルを一段の計算で出す問題と、クーロン力・電磁誘導・コイルの位相・平行平板コンデンサの性質を比例関係で選ぶ問題。

STEP 1まず1問、見てみる

先生
先生

計算は2行で終わるの。どの部品の、どの量を聞かれているかを先に指で押さえてね。

問題オリジナルNo.1 工学 問18

20 Ω と 30 Ω の抵抗を直列に接続し、両端に直流 10 V を加えた。30 Ω の抵抗の両端の電圧はいくらか。

  1. 12 V
  2. 24 V
  3. 36 V
  4. 410 V

計算は2行で終わります。それでも落とす人がいるのは、肢に「途中で出てくる別の数字」が並んでいるからです。4 V は 20 Ω 側の電圧、10 V は電源の電圧。

どの部品の、どの量を聞かれているのかを取り違えると、計算が合っていても点になりません。

電気基礎の問題は、式を覚えることより、何が共通で、何が分かれるかを図から読むことが先です。そのうえで、比例するのか反比例するのか、二乗か平方根かを確かめます。

先生が計算を始める前に、黒板の μF を 10⁻⁶ F に書き直している挿絵。
先生の挿絵。計算の前に単位をそろえる

STEP 2覚えること

先生
先生

接頭語は6つだけ。μ は 10⁻⁶、p は 10⁻¹²。式に入れる前に直すのよ。

最初に単位の接頭語です。μF のまま式に入れると、答えの桁がずれます。次の6つを使えれば足ります。

単位の接頭語

読み倍率
kキロ10³
Mメガ10⁶
mミリ10⁻³
μマイクロ10⁻⁶
nナノ10⁻⁹
pピコ10⁻¹²
オームの法則
V = IR

V は電圧〔V〕、I は電流〔A〕、R は抵抗〔Ω〕。I=V/R、R=V/I と変形して使う。10 V を 50 Ω に加えれば 0.2 A

合成抵抗
R_{\text{直列}} = R_1 + R_2,\qquad R_{\text{並列}} = \frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2}

直列は足すだけ(20 Ω+30 Ω=50 Ω)。並列は「積÷和」(30 Ω と 60 Ω なら 1,800÷90=20 Ω)。並列の合成抵抗は、小さいほうの抵抗よりさらに小さくなる

直列の回路では、どの抵抗にも同じ電流が流れ、電源の電圧が抵抗の大きさに比例して分かれます。これを分圧と呼びます。並列の回路では逆に、どの抵抗にも同じ電圧がかかり、電流が分かれます。

直列回路の分圧
V_2 = V \times \frac{R_2}{R_1 + R_2}

V は電源電圧、V_2 は R_2 の両端の電圧。大きい抵抗ほど大きい電圧を受け持つ。10 V×30/(20+30)=6 V。残りの 4 V が 20 Ω 側で、足すと電源の 10 V に戻る

10 Vの電池に20 Ωと30 Ωの抵抗を直列につないだ回路。電流0.2 Aの矢印と、各点の電位10 V・6 V・0 Vを書き込み、20 Ωの両端に4 V、30 Ωの両端に6 Vの寸法線。
直列の分圧。電流 0.2 A は共通、電圧は 4 V と 6 V に分かれる
電力
P = VI = I^2 R = \frac{V^2}{R}

P は電力〔W〕。どの形も同じもので、わかっている量に合わせて選ぶ。30 Ω に 0.2 A なら 0.2²×30=1.2 W、6 V×0.2 A でも 1.2 W

次はコンデンサです。コンデンサに蓄えられる電荷は、容量と電圧に比例します。

コンデンサの電荷
Q = CV

Q は電荷〔C〕、C は静電容量〔F〕、V は電圧〔V〕。8 μF に 2.5 V なら Q=8×10⁻⁶×2.5=2×10⁻⁵ C。μF は 10⁻⁶ F に直してから掛ける

コンデンサの接続は、抵抗と読み方が入れ替わるので注意します。並列なら電圧が共通で、容量は足し算。直列なら電荷が共通で、容量は「積÷和」になります。

6 μF と 3 μF なら、並列で 9 μF、直列で 18÷9=2 μF です。

合成静電容量
C_{\text{並列}} = C_1 + C_2,\qquad C_{\text{直列}} = \frac{C_1 C_2}{C_1 + C_2}

抵抗とは逆で、コンデンサは並列が足し算、直列が積÷和。並列は電圧が共通なので、電荷は容量に比例して分かれる。直列は電荷が共通なので、電圧は容量に反比例して分かれる

左にコンデンサ2個の並列接続、右に直列接続を並べ、並列側に「電圧が共通」、直列側に「電荷が共通」と大きく書いた対照図。
コンデンサの並列と直列。並列は電圧が共通、直列は電荷が共通
先生が黒板に抵抗とコンデンサの合成の式を左右に並べて書き、足し算になるつなぎ方が入れ替わることを指している挿絵。
先生の挿絵。抵抗は直列が足し算、コンデンサは並列が足し算
平行平板コンデンサの静電容量
C = \varepsilon \frac{S}{d}

ε は極板の間の物質の誘電率、S は極板の面積、d は極板の間隔。面積を広く、間隔を狭く、誘電率の大きい絶縁物を入れると容量が増える。間隔を広げると減る

電気と磁気の性質も、比例の向きだけ押さえれば選べます。二つの点電荷の間に働く力(クーロン力)は、電荷の積に比例し、距離の二乗に反比例します。同じ種類の電荷は反発し、違う種類は引き合います。

クーロンの法則
F = k\frac{Q_1 Q_2}{r^2}

Q_1・Q_2 は電荷、r は距離、k は定数。距離が2倍になると力は 1/4、3倍なら 1/9。電荷のどちらかを2倍にすると力も2倍

電界の中の電子も同じ考え方です。電子は負の電荷なので、電界の向きと逆向きに力を受けます(F=qE)。進行方向と平行な電界なら、力も進行方向の線上に働くので、向きは変わらず速さだけが変わります。

例題No.1 工学 問17 の図では、電界が左向き、電子が右へ進んでいるので、力は右向きで電子は加速されます。

コイルを貫く磁束が変化すると起電力が生じます。これが電磁誘導で、起電力の大きさは磁束が変化する割合(速さ)と巻数に比例します。磁束がどれだけ大きくても、変化しなければ起電力は生じません。

コイルに交流を流すと、電流の位相は電圧より 90 度遅れ、コンデンサでは 90 度進みます。

リアクタンス
X_L = 2\pi f L,\qquad X_C = \frac{1}{2\pi f C}

X_L はコイルの誘導リアクタンス、X_C はコンデンサの容量リアクタンス〔Ω〕。周波数が高いほど、コイルは電流を通しにくく、コンデンサは通しやすい

共振周波数
f_0 = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}

X_L と X_C が等しくなる周波数。L か C を4倍にすると √4=2 で f_0 は 1/2、9倍なら 1/3。周波数は LC の積の「平方根」に反比例する

先生
先生

共振周波数は LC の平方根に反比例。4倍で 1/2、9倍で 1/3 と倍率で覚えてね。

横軸を周波数、縦軸をリアクタンスとしたグラフ。右上がりの直線X_Lと右下がりの曲線X_Cが交わる点をf₀と示し、Cを4倍にすると交点が左へ移ってf₀が1/2になる様子を点線で示した図。
コイルとコンデンサのリアクタンス。交わる点が共振周波数。C を4倍にすると f₀ は 1/2

最後はデシベルです。電力の比を常用対数で表したもので、大きな倍率を足し算で扱えるようにしたものです。

電力利得(デシベル)
G\,[\mathrm{dB}] = 10\log_{10}\frac{P_{\mathrm{out}}}{P_{\mathrm{in}}}

電力が 2 倍なら約 3 dB、10 倍で 10 dB、100 倍で 20 dB、1,000 倍で 30 dB。dB の足し算は倍率の掛け算で、13 dB=10 dB+3 dB は 10×2=20 倍。電圧の比(同じ抵抗の条件)は 20log₁₀ を使い、電圧 10 倍が 20 dB

倍率カードを4枚並べた図。距離2倍で力は1/4、容量4倍で共振周波数は1/2、電力100倍で20 dB、電圧10倍で20 dB。
倍率カード。二乗・平方根・10log・20log の4種類の効き方

STEP 3肢の切り方

先生
先生

答えが出たら、残りの肢が「どの取り違えで出る数字か」も確かめると力がつくわよ。

冒頭のオリジナルNo.1 工学 問18 を解きます。図を読むと直列なので電流が共通。合成抵抗は 20+30=50 Ω、電流は I=10÷50=0.2 A です。

オリジナルNo.1 工学 問18 を1肢ずつ切る

  1. ✕
    肢1 2 V

    回路のどの部分の電圧でもない。

  2. ✕
    肢2 4 V

    0.2×20=4 V は 20 Ω 側の電圧。聞かれている部品が違う。

  3. ○
    肢3 6 V

    0.2×30=6 V。4+6=10 で電源と一致するのが検算。

  4. ✕
    肢4 10 V

    電源電圧そのもの。

オリジナルNo.2 工学 問18 は、直列共振回路のコンデンサの容量を4倍にしたときの共振周波数です。f₀ は √(LC) に反比例するので、√4=2 で 1/2 倍になります。

オリジナルNo.2 工学 問18 を1肢ずつ切る

  1. ✕
    肢1 4倍

    C を増やすと周波数が下がる向きを、逆にした肢。

  2. ✕
    肢2 2倍

    肢1と同じく、下がる向きを逆にした肢。

  3. ○
    肢3 1/2倍

    f₀ は √(LC) に反比例。√4=2 で 1/2 倍。

  4. ✕
    肢4 1/4倍

    平方根をとり忘れた肢。

例題No.3 工学 問17 は、直流電源に 8 μF と 2 μF のコンデンサがつながった回路で、8 μF の電荷が 2×10⁻⁵ C のときの 2 μF の電荷を問います。原図を見ると、2つのコンデンサは電源に並列です。

並列なので電圧が共通。V=Q÷C=2×10⁻⁵÷(8×10⁻⁶)=2.5 V。2 μF の電荷は Q=2×10⁻⁶×2.5=5×10⁻⁶ C で、肢1が答えです。

近道もあります。電圧が同じなら電荷は容量に比例するので、2/8=1/4 倍。2×10⁻⁵ の 1/4 で 5×10⁻⁶ です。

例題No.3 工学 問17 の肢を切る

  1. ○
    肢1 5×10⁻⁶ C

    電圧 2.5 V が共通なので、2×10⁻⁶×2.5=5×10⁻⁶ C。

  2. ✕
    肢3・4 2 μF のほうが 8 μF より多く蓄えるとした値

    電圧が同じなら電荷は容量に比例する。容量の小さい 2 μF が多く蓄えることはなく、比を逆にした誤り。

オリジナルNo.3 工学 問18 は、出力電力が入力の 100 倍のときの電力利得。100=10² なので 10×2=20 dB で肢2です。

10 dB は 10 倍、40 dB は電力 10,000 倍か電圧 100 倍、100 dB は倍率をそのまま dB と書いた誤りです。

性質を選ぶ問題を一言で

  • 例題No.2 工学 問17(コイルの性質で誤り):交流を流したとき電流が電圧より「進む」とした肢4が誤り。コイルは遅れ、進むのはコンデンサ。
  • オリジナルNo.1 工学 問17(クーロン力で正しいもの):距離の二乗に反比例する肢2。距離に比例、電荷の積に反比例、同種で引力、はどれも逆。
  • オリジナルNo.2 工学 問17(電磁誘導の穴埋め):現象は電磁誘導、起電力は磁束の時間的な変化の割合に比例、で肢2。静電誘導と「磁束の大きさ」を切る。
  • オリジナルNo.3 工学 問17(容量を大きくする方法で誤り):間隔を広くする肢4。C は間隔に反比例する。

STEP 4ひっかけ

先生
先生

肢の数字は、二乗と平方根、比と逆比を取り違えたときの値で作られているのよ。

ひっかけ

肢の数字は、次のような取り違えをしたときに出る値で作られています。

取り違えの5パターン

先生が「距離2倍→力1/4」「C 4倍→f₀ 1/2」の2枚のカードを持ち、二乗と平方根の違いを受講者に見せている挿絵。
先生の挿絵。二乗で効くか、平方根で効くかを先に決める
試験ではここ

電気基礎の計算は一段で終わるものが多いので、1問2分以内が目安です。式に入れる前に、単位を F・V・Ω・Hz にそろえ、答えが出たら肢の値を式に戻して検算します。倍率の問題は、数値を入れずに「2倍→1/4」「4倍→1/2」と倍率だけで解くほうが速く、間違いも減ります。

STEP 5自分で解く

先生
先生

倍率の問題は数値を入れずに、倍率だけで解くほうが速くて間違いも減るわ。

確認問題

10 Ω と 20 Ω の抵抗を直列に接続し、両端に直流 12 V を加えた。20 Ω の抵抗の両端の電圧として、正しいものはどれか。

確認問題

コイル L とコンデンサ C の共振回路で、L を変えずに C を 9 倍にした。共振周波数はもとの何倍になるか。

確認問題

増幅器の電力利得が 13 dB のとき、出力電力は入力電力の約何倍か。

STEP 6今日のまとめ

今日おぼえたこと

  • V=IR。直列は電流が共通で電圧が抵抗に比例して分かれ、並列は電圧が共通
  • Q=CV。コンデンサは並列で足し算・電圧共通、直列で積÷和・電荷共通。C=εS/d
  • クーロン力は距離の二乗に反比例、電磁誘導の起電力は磁束の変化の割合に比例、コイルの電流は電圧より 90 度遅れる
  • 共振周波数 f₀=1/(2π√(LC))。L か C が4倍で 1/2、9倍で 1/3
  • 電力利得は 10log:2倍≒3 dB、10倍=10 dB、100倍=20 dB。電圧は 20log

次回は半導体と論理回路です。ダイオードとトランジスタの端子名、AND・OR の真理値表を、図記号から読めるようにします。

本番の問題この回で取れるようになった問題

「例題No.」は公益財団法人日本無線協会が公表している CBT 方式の国家試験の例題、「過去問」は同協会の公表試験問題です(日本無線協会 試験問題。同協会の利用条件に基づき掲載)。「オリジナル」は当サイトの作問です。

ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.1 問17 真空中に置かれた二つの点電荷の間に働く静電力(クーロン力)についての記述で、正しいのは次のうちどれか。 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.1 問18 抵抗 20〔Ω〕と 30〔Ω〕を直列に接続し、その両端に直流 10〔V〕の電圧を加えた。このとき 30〔Ω〕の抵抗の両端に現れる電圧の... 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.2 問17 次の記述の[ ]内に入れるべき字句の組合せで、正しいのはどれか。 コイルを貫く磁束が変化すると、コイルに起電力が生じる。この現象を[A... 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.2 問18 コイル L とコンデンサ C からなる直列共振回路において、コンデンサの静電容量を 4 倍にすると、共振周波数はもとの何倍になるか。 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.3 問17 平行平板コンデンサの静電容量を大きくする方法として、誤っているのは次のうちどれか。 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.3 問18 増幅器の出力電力が入力電力の 100 倍になったとき、この増幅器の電力利得をデシベルで表した値として正しいのは次のうちどれか。 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.2 問17 コイルの電気的性質で、誤っているのは次のうちどれか。 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.3 問17 図に示す回路において、静電容量 8〔μF〕のコンデンサに蓄えられている電荷が 2×10⁻⁵〔C〕であるとき、静電容量 2〔μF〕のコン... 解く →
次の回へ第13回 半導体と論理回路は端子名と真理値表ダイオードの種類・トランジスタと FET の電極と制御のしかた・基本ゲートの出力を問う問題が、肢を切って取れる。