STEP 1まず1問、見てみる
超短波(VHF)帯の通信において、通信距離を延ばす方法として誤っているものはどれか。
- 1アンテナを高くする
- 2アンテナの放射角を高角度にする
- 3鋭い指向性のアンテナを使う
- 4利得の高いアンテナを使う
ここで迷う人は、短波(HF)の感覚が混ざっています。短波は空へ向けて出した電波が電離層で反射して遠くへ届くので、「空へ向ければ遠くへ行く」という絵が頭に残りやすいのです。
ところが VHF は通常、電離層を突き抜けてしまいます。どの周波数帯の、どの伝わり方の話なのかを先に決めると、肢はすぐ切れます。
この回は前半で給電線、後半で伝搬を扱い、どちらも「その現象で何が起きるか」から肢を選びます。

STEP 2覚えること
給電線の仕事は、送信機の電力をアンテナまで、なるべく減らさずに運ぶことです。電波を出すのはアンテナの仕事で、給電線から電波が出るのは損失であり、妨害の原因にもなります。
アマチュア無線でいちばん使う給電線は同軸ケーブルです。中心の内部導体を絶縁物が包み、その外側を網線の外部導体が覆い、いちばん外を外被が守ります。
外部導体を接地側として使う不平衡形で、外部導体がしゃへいになるので放射も誘導も少ないのが利点です。
同軸ケーブルの特性インピーダンスは、内部導体と外部導体の寸法比と、絶縁物の誘電率で決まります。アマチュア無線機では 50 Ω、テレビ受信では 75 Ω のものが多く使われます。
ケーブルを長くしても特性インピーダンスは変わりません。長さに比例して増えるのは損失(減衰量)のほうです。


給電線とアンテナのインピーダンスが合っていない(不整合)と、アンテナに届いた電力の一部が反射して送信機側へ戻ります。
行きの進行波と戻りの反射波が重なると、給電線の上に電圧の高い所と低い所が並んだ定在波ができます。その最大と最小の比が定在波比(SWR)です。
V_max は給電線上の電圧の最大値、V_min は最小値。反射波がなければ電圧はどこでも同じなので SWR=1。反射が増えるほど大きくなり、先端を開放や短絡にして全部反射させると無限大。最小値は 1 で、0 にはならない
Z_0 は給電線の特性インピーダンス、R_L はアンテナ側の抵抗(リアクタンスのない純抵抗の場合)。大きいほうを小さいほうで割る。50 Ω の同軸に 75 Ω の負荷なら 75÷50=1.5、100 Ω なら 2。負荷が 25 Ω なら 50÷25=2
整合が悪いと、送った電力の一部が反射して戻ってくるぶん、アンテナから出る電力が減ります。戻ってきた電力は送信機や給電線の負担にもなります。
そこで送信機とアンテナの間に SWR メータを入れて、SWR が 1 に近いかを確かめながらアンテナの長さや整合回路を調整します。
SWR メータは測るだけの道具で、それ自体が整合をとるわけではない、という点は第9回の妨害の問題でも肢のダミーとして出てきました。

ここから後半の伝搬。層の名前は「反射する」「吸収する」の働きと組で覚えてね。
後半は伝搬です。地上から高さ数十 km より上には、太陽の紫外線などで大気が電離した電離層があり、低いほうから D 層、E 層、F 層と呼びます。
短波(HF)の遠距離通信は主に F 層での反射によるものです。D 層は昼間に現れ、中波や短波を反射せずに吸収する側の層です。
短波を空へ向けて出すと、電離層で反射して遠くの地上に戻ってきます。送信所から、電離層反射波が初めて地上に戻る地点までの地上距離を跳躍距離といいます。
送信所の近くには地表波が届きますが、地表波が届かなくなる所から跳躍距離までの間はどちらの電波も届かず、不感地帯になります。

伝搬の現象と、取り違えやすい相手
| 何が起きるか | 取り違えやすい相手 | |
|---|---|---|
| スポラディックE層(Es 層) | 主に夏の昼間、E 層の高さに突発的に現れ、50 MHz 帯などの VHF を反射して、ふだん届かない遠方まで届かせる | E 層・F2 層(F2 層は短波の遠距離を担う層で、VHF は通常突き抜ける) |
| フェージング | 複数の経路を通った電波が干渉するなどして、受信点の電界強度が時間とともに強くなったり弱くなったりする | 跳躍(届かない場所の話)・ドップラー効果(周波数のずれ) |
| デリンジャー現象 | 太陽面の爆発で D 層の電子密度が急に増え、短波の通信が突然とぎれる | フェージング(強さが揺れるだけで、とぎれ続けはしない) |
| 空電 | 雷の放電による雑音。低い周波数ほど強く、短波(HF)帯以下で最も受けやすい | 人工雑音・受信機の内部雑音(VHF 以上で主役になる雑音) |
フェージングへの対策もセットで出ます。受信機の AGC(自動利得制御)は、入ってくる信号の強さが変わっても出力の大きさをそろえる回路で、フェージングによる音量の揺れを小さくします。
離れた場所に置いた複数のアンテナで受けて、強いほうを使うダイバーシティ受信も、同じ目的の方法です。
VHF の通常の伝わり方は、電離層で反射されない見通しの伝搬です。
だから通信距離を延ばすには、アンテナを高くして見通せる範囲を広げ、利得の高いアンテナや鋭い指向性のアンテナで電力を目的の方向へ集め、電波は空へではなく地平線へ向けて低い角度で出します。見通し距離の目安は次の式です。
h_1・h_2 は送信と受信のアンテナの高さ〔m〕、d は電波の見通し距離〔km〕。4.12 は大気による電波の曲がりを含めた係数。両方 16 m なら 4.12×(4+4)≒33 km、片方を 64 m に上げると 4.12×(8+4)≒49 km。高さは平方根で効く

STEP 3肢の切り方
冒頭の例題No.3 工学 問28 を解きます。最初に周波数帯を確認します。VHF なので、通常は電離層で反射されず、見通しで届く伝搬です。
例題No.3 工学 問28 を1肢ずつ切る
次は給電線の例題No.2 工学 問27。給電線に必要な電気的条件で誤っているものを選びます。
例題No.2 工学 問27 を1肢ずつ切る
同じ型の残りを一言で
- オリジナルNo.1 工学 問28(同軸ケーブルで誤り):不平衡形、しゃへいで放射と誘導が少ない、50 Ω や 75 Ω が多い、はどれも正しい。「特性インピーダンスは長さに比例して大きくなる」の肢4が誤り。長さで増えるのは損失です。
- オリジナルNo.2 工学 問28(完全整合の SWR):反射がなければ最大と最小が等しく SWR=1 で肢2。0 は最小値の取り違え、50 は特性インピーダンスの数字、無限大は全反射のときです。
- 例題No.1 工学 問28(穴埋め):短波を反射するのは電離層、初めて地上に戻る地点までの距離は跳躍距離で、肢2。大地や焦点距離の肢を切ります。
- 例題No.2 工学 問28(空電を最も受けやすい周波数帯):低い周波数ほど強いので、短波(HF)帯以下の肢4。
- オリジナルNo.2 工学 問29(夏の昼間に突発的に VHF を反射):スポラディックE層の肢3。D 層は吸収、F2 層は VHF を通常突き抜け、対流圏は電離層ではありません。
- オリジナルNo.3 工学 問29(電界強度が時間とともに強弱):フェージングの肢2。デリンジャー現象はとぎれる、跳躍は届かない場所、ドップラー効果は周波数のずれです。
STEP 4ひっかけ
SWR の最小値は 1 です。「整合したら反射が 0 だから SWR も 0」と考えると落ちます。特性インピーダンスは寸法比と誘電率で決まり、長さとは無関係で、ケーブルの直流抵抗とも別物です。E 層とスポラディックE層(Es 層)は別の名前として出ます。跳躍距離は「送信所から反射波が初めて戻る地点まで」の距離で、不感地帯の幅のことではありません。

伝搬の問題は、まず周波数帯(HF か VHF か)と、問われている量(強さの時間変化か、届く距離か、雑音か)に印をつけます。HF なら電離層の話、VHF なら見通しと Es 層の話、と仕分けるだけで肢の半分は消えます。給電線とアンテナの問題は「それは給電線の仕事か、アンテナの仕事か」で切ってください。
STEP 5自分で解く
特性インピーダンス 50 Ω の同軸ケーブルの先に、100 Ω の純抵抗の負荷をつないだ。このときの定在波比(SWR)として、正しいものはどれか。
電波の伝わり方についての記述で、誤っているものはどれか。
同じ種類の同軸ケーブルを、長さだけ2倍にして使った。このときの変化として、正しいものはどれか。
STEP 6今日のまとめ
今日おぼえたこと
- 給電線は損失が少なく、絶縁耐力があり、自分からは放射しないこと。同軸ケーブルは不平衡形でしゃへいされている
- 特性インピーダンスは寸法比と誘電率で決まり、長さに無関係(長さで増えるのは損失)。アマチュアは 50 Ω、テレビは 75 Ω が多い
- SWR=V_max/V_min。完全整合で 1、全反射で無限大。純抵抗負荷なら大きいほう÷小さいほう
- HF の遠距離は F 層の反射、跳躍距離は反射波が初めて戻る地点まで。Es 層は夏の昼間に VHF を反射
- VHF は見通しが基本。高く・高利得・鋭い指向性・低い放射角で距離が延びる。空電は HF 以下で強い
次回は電気の基礎です。オームの法則、コンデンサ、共振、デシベルを、比例関係と単位だけで解きます。
本番の問題この回で取れるようになった問題
「例題No.」は公益財団法人日本無線協会が公表している CBT 方式の国家試験の例題、「過去問」は同協会の公表試験問題です(日本無線協会 試験問題。同協会の利用条件に基づき掲載)。「オリジナル」は当サイトの作問です。

