無線通信ブートラボ
第7回 / 全16回 無線工学

変調方式と送信機を一枚につなぐ

A1A・A3E・J3E・F3E の記号、AM・FM・SSB の電波の形、平衡変調器・帯域フィルタ・ALC・IDC。ばらばらに覚えがちな名前を、送信機の信号の通り道1本にのせて読みます。

11分 確認問題 3問 図 6枚 この回で取れる問題 8問
この回のゴール

電波の型式の記号を読み、SSBのスペクトルとAMの変調度を判定し、送信機の回路(平衡変調器・帯域フィルタ・ALC・IDC)の働きを選ぶ問題が取れる。

この回でつくる

電波の型式の記号(A1A・A3E・J3E・F3E)を読む問題、SSBのスペクトルを選ぶ問題、送信機の回路(平衡変調器・帯域フィルタ・ALC・IDC)の働きを選ぶ問題。法規と工学にまたがる型を、1枚の送信機の図で取ります。

STEP 1まず1問、見てみる

先生
先生

図の問題も文章題も、送信機の中を左から右へたどれば解けます。

例題No.1 工学 問20は、SSB(J3E)の電波の周波数成分を表した図を4つから選ぶ問題です。

問題例題No.1 工学 問20(要旨)

SSB(J3E)電波の周波数成分を表した図はどれか。ただし、点線は搬送波成分がないことを示す。

  1. 1実線の搬送波と両側波帯
  2. 2実線の搬送波と片側の側波帯
  3. 3点線の搬送波と片側の側波帯
  4. 4点線の搬送波と両側波帯

4つの図は、搬送波が実線か点線か、側波帯が両側か片側か、の組合せです。図を眺めて「なんとなくSSBっぽいもの」を選ぶと、2択までは絞れても最後で迷います。

一方、例題No.3 工学 問20は文章題です。名前の似た回路が組み合わされていて、片方だけ覚えていると取れません。

問題例題No.3 工学 問20(要旨)

SSB(J3E)送信機では、[A]増幅器の入力レベルを制限し、送信出力がひずまないように、[B]回路が用いられる。

  1. 1A:緩衝 B:IDC
  2. 2A:電力 B:IDC
  3. 3A:緩衝 B:ALC
  4. 4A:電力 B:ALC
SSBの周波数成分の図から、搬送波と不要な側波帯を順に消しゴムで消していく先生のイラスト。
SSBは、AMから搬送波を消し、片側の側波帯を消したもの

この2問は、同じ1つの事実から解けます。SSBは、AMの電波から搬送波を消し、さらに片側の側波帯を消したものです。

消すのは誰か、消したあと誰が出力を守るのか。送信機の中を左から右へたどれば、記号も図も回路名もつながります。

STEP 2覚えること

先生
先生

3文字のうち試験で効くのは1文字目と3文字目。JとH、AとEを取り違えないで。

まず電波の型式の記号です。施行規則4条の2で、3文字を「主搬送波の変調の型式」「主搬送波を変調する信号の性質」「伝送情報の型式」の順に並べると決まっています。3アマで出る文字は次の表で足ります。

電波の型式の記号(施行規則4条の2から抜粋)

表すもの主な記号
第1字主搬送波の変調の型式A=振幅変調の両側波帯、H=全搬送波による単側波帯、J=抑圧搬送波による単側波帯、F=周波数変調、G=位相変調、N=無変調
第2字変調する信号の性質0=変調信号なし、1=デジタル信号の単一チャネルで副搬送波なし、2=同じく副搬送波あり、3=アナログ信号の単一チャネル
第3字伝送情報の型式N=無情報、A=電信(聴覚受信)、B=電信(自動受信)、C=ファクシミリ、D=データ伝送等、E=電話

この表で読むと、A1Aは振幅変調・両側波帯、デジタル信号の単一チャネルで副搬送波なし、聴覚受信の電信。キーで搬送波を断続する、いわゆるモールス電信です。

A3Eは振幅変調の電話(AM)、J3Eは抑圧搬送波の単側波帯の電話(SSB)、F3Eは周波数変調の電話(FM)。3文字目がEなら電話、Aなら耳で聞く電信、と後ろから読んでも切れます。

次に変調そのものです。振幅変調(AM)は、音声の波形に合わせて搬送波の振幅を変えます。

搬送波の周波数をfc、音声の周波数をfmとすると、電波にはfcのほかにfc+fm(上側波帯)とfc-fm(下側波帯)の成分が現れます。音声の上限を3 kHzとすれば、AMの電波は搬送波の両側に3 kHzずつ、合わせて6 kHzに広がります。

AMの周波数成分
f_c - f_m,\quad f_c,\quad f_c + f_m

搬送波 fc の両脇に、音声の周波数 fm だけ離れて下側波帯と上側波帯が立つ。音声の情報は側波帯にある

AMの変調の深さは変調度で表します。包絡線(波の山を結んだ線)の一番太いところの高さをA、一番細いところの高さをBとして、同じ測り方で読みます。

たとえばA=30、B=10なら、(30-10)÷(30+10)=0.5で50 %です。B=0になると100 %、それを超えると過変調で、ひずみと帯域の広がりが出ます。

AMの変調度
m = \frac{A - B}{A + B} \times 100\ [\%]

A は包絡線の最大の高さ、B は最小の高さ。分母は「和」。A だけで割らない

先生
先生

変調度の分母は「最大+最小」の和。最大だけで割る計算ミスが定番です。

周波数変調(FM)は、音声の振幅に応じて搬送波の周波数を変えます。声が大きいほど周波数のずれ(周波数偏移)が大きく、声が高いほどずれが行き来する速さが速くなります。搬送波の振幅は一定のままです。

上段に音声の波形、中段にAM波(振幅が音声の形に変わる)、下段にFM波(振幅一定で、波の間隔が音声に合わせて詰まったり開いたりする)を、時間軸をそろえて並べた図。
AMは高さが動く。FMは高さが一定で、波の間隔が動く

ここからSSB(J3E)の送信機です。音声と搬送波を平衡変調器に入れると、搬送波が打ち消され、上下両側の側波帯だけが出てきます。

次に、通過帯域の狭い帯域フィルタ(BPF)で片側の側波帯だけを通します。これでSSBの信号ができます。

あとは周波数混合器で送信周波数に移し、励振増幅器と電力増幅器で増幅します。SSBの信号は周波数逓倍すると音声の周波数関係まで崩れるので、逓倍ではなく混合を使います。

SSBの出力を守るのがALC回路です。電力増幅器の出力側からレベルを取り出し、大きすぎるときは前段の増幅器の利得を下げて、電力増幅器への入力を制限します。電力増幅器に入力が入りすぎるとひずみ、隣の周波数まで不要な成分が広がるからです。

FM(F3E)送信機では、音声はマイク増幅のあとIDC回路を通って周波数変調器に入ります。IDCは、大きな声が入っても周波数偏移が決められた値を超えないように制限し、占有周波数帯幅が広がるのを防ぎます。

名前の頭文字で覚えるなら、ALCはレベル(Level)、IDCは偏移(Deviation)です。

横軸を周波数としたスペクトル図を4段に並べる。AM(搬送波と両側波帯)、搬送波だけ残した単側波帯、搬送波を抑圧した両側波帯、搬送波を抑圧した単側波帯(SSB)。
搬送波が「ある・ない」、側波帯が「両側・片側」の2つの問いで並べる

STEP 3肢の切り方

SSB送信機とFM送信機のブロック図の前で、ALCの戻り矢印を指さす先生のイラスト。
ALCはSSBの電力増幅器を守る。IDCはFMの偏移を抑える

例題No.1 工学 問20(J3Eのスペクトル)を、「搬送波はあるか」「側波帯は両側か片側か」の2つの問いで切ります。

J3Eのスペクトルを1肢ずつ切る

  1. ✕
    肢1 実線の搬送波と両側波帯

    J3EのJは抑圧搬送波。搬送波が実線なので切る(AMの形)。

  2. ✕
    肢2 実線の搬送波と片側の側波帯

    搬送波が実線なので切る(H3Eの形)。

  3. ○
    肢3 点線の搬送波と片側の側波帯

    搬送波は抑圧、側波帯は片側。J3Eの形で、これが正解。

  4. ✕
    肢4 点線の搬送波と両側波帯

    搬送波は点線でも両側に側波帯がある(搬送波を抑圧した両側波帯)。J3Eは単側波帯なので切る。

先生
先生

ALCとIDCは「どの送信機の回路か」を先に決めれば、すぐ半分消せます。

例題No.3 工学 問20(SSB送信機のALC)は、AとBを別々に決めます。Bから先に見ます。

ALCの穴埋めを1肢ずつ切る

  1. ✕
    肢1 A:緩衝 B:IDC

    IDCはFMの周波数偏移を制限する回路。SSBの文に入るのはALCなので切る。

  2. ✕
    肢2 A:電力 B:IDC

    Aは合っていても、B:IDCはFMの回路なので切る。

  3. ✕
    肢3 A:緩衝 B:ALC

    Bは合っている。しかし緩衝増幅器は発振器を後段の影響から切り離すための段で、ひずみを抑えたい大電力の段ではない。

  4. ○
    肢4 A:電力 B:ALC

    ひずみを抑えたいのは大きな電力を扱う段。入力レベルを制限する相手は電力増幅器で、回路はALC。これが正解。

法規の例題No.2 法規 問3は、記号の3文字を言葉から組み立てる問題です。「振幅変調で両側波帯」で第1字A、「デジタル信号である単一チャネルで副搬送波を使用しない」で第2字1、「電信であって聴覚受信を目的とする」で第3字A。

答えはA1Aです。J3Eは第1字がJ、F2AとF3Eは第1字がFなので、1文字目だけで3つが切れます。

当サイトのオリジナル問題No.2 工学 問21は平衡変調器の働きです。送信機の図の上で、どの箱の説明かを指さして切ります。

平衡変調器の働きを1肢ずつ切る

  1. ○
    肢1 搬送波を抑圧し、上下両側波帯の信号を出力する

    これが平衡変調器の働き。正解。

  2. ✕
    肢2 不要な一方の側波帯を除去する

    次の段の帯域フィルタの仕事。

  3. ✕
    肢3 搬送波の周波数を整数倍に高める

    周波数逓倍器の仕事。

  4. ✕
    肢4 励振レベルを自動的に制御する

    ALCの仕事。

当サイトのオリジナル問題No.3 工学 問22は、平衡変調器の出力から片側の側波帯だけを取り出すフィルタを選びます。

上側波帯と下側波帯は搬送波をはさんで隣り合っているので、取り出すには通過帯域の上と下の両方を切らなければなりません。

ある周波数より下を全部通す低域フィルタ(LPF)も、上を全部通す高域フィルタ(HPF)も、片側だけを切ることになるので使えません。狭い帯域だけを止める帯域除去フィルタ(BEF)は逆の働きです。両側を切れるのは帯域フィルタ(BPF)だけです。

オリジナル問題No.1 工学 問21は「FM送信機では、音声信号の[A]の変化に応じて搬送波の[B]を変化させる」。Bは名前のとおり周波数です。B:振幅を含む肢はAMの説明なので先に切れます。

Aを「周波数」にした肢が迷わせますが、音声の周波数が決めるのは周波数のずれが行き来する速さで、ずれの大きさを決めるのは音声の振幅です。A:振幅、B:周波数の組を選びます。

同じ考えで、オリジナル問題No.3 法規 問3(F3EのFの意味)は周波数変調。位相変調はGです。

SSB送信機のブロック図。マイク増幅、平衡変調器(搬送波発振器から入力)、帯域フィルタ、周波数混合器(局部発振器から入力)、励振増幅器、電力増幅器、アンテナの順に並び、電力増幅器の出力から励振増幅器へALCの戻り矢印がある。
左から右へ信号をたどる。ALCだけが右から左へ戻る

STEP 4ひっかけ

先生
先生

ALC・IDC・AGCは頭文字が似ています。どの機械の回路かで区別して。

ひっかけ

入れ替えられやすい組。「平衡変調器=搬送波を消す」と「帯域フィルタ=片側の側波帯を選ぶ」。「ALC=SSBの電力増幅器を守る」と「IDC=FMの周波数偏移を制限」と「AGC=受信機の利得(次回)」。「FMは音声の振幅で搬送波の周波数を変える」を「音声の周波数で」と入れ替えた肢。「抑圧搬送波(J)」と「全搬送波(H)」。変調度の分母を最大値だけにした計算。

試験ではここ

図の問題は、図を見る前に「搬送波はあるか」「側波帯は両側か片側か」の2つを自分で答えてから肢を見ます。回路名の組合せ問題は、確実にわかる方の空欄から決めると、肢が半分になります。

STEP 5自分で解く

先生
先生

3問目は計算です。分母に何を置いたか、自分の式を確かめてから選んで。

確認問題

SSB(J3E)送信機で、搬送波を抑圧する回路と、不要な側波帯を除去する回路の組合せとして正しいものはどれか。

確認問題

FM(F3E)送信機で、大きな音声が入ったときに周波数偏移が規定値を超えないようにする回路はどれか。

確認問題

単一正弦波で振幅変調したAM波をオシロスコープで見たところ、包絡線の最大の高さが48、最小の高さが12(同じ目盛りで読む)だった。変調度はいくらか。

STEP 6今日のまとめ

黒板の「J」「3」「E」の3枚のカードを指して、記号の読み方を説明する先生のイラスト。
電波の型式は3文字を順に読む

今日おぼえたこと

  • 電波の型式は3文字。第1字が変調の型式(A・H・J・F)、第2字が信号の性質(1・3)、第3字が情報の型式(A=電信、E=電話)
  • A1A=モールス電信、A3E=AM電話、J3E=SSB電話、F3E=FM電話
  • 変調度 m=(A-B)/(A+B)×100 %。分母は最大と最小の和
  • SSBは平衡変調器で搬送波を消し、帯域フィルタで片側の側波帯を選ぶ。ALCで電力増幅器への入力を制限
  • FMは音声の振幅に応じて搬送波の周波数を変える。IDCで周波数偏移を制限

次回は受信機です。アンテナから入った電波がスピーカの音になるまでの通り道と、影像周波数の計算を取ります。

本番の問題この回で取れるようになった問題

「例題No.」は公益財団法人日本無線協会が公表している CBT 方式の国家試験の例題、「過去問」は同協会の公表試験問題です(日本無線協会 試験問題。同協会の利用条件に基づき掲載)。「オリジナル」は当サイトの作問です。

日本無線協会 CBT例題 法規 No.2 問3 電波の型式を表示する記号で、電波の主搬送波の変調の型式が振幅変調で両側波帯のもの、主搬送波を変調する信号の性質がデジタル信号である単一... 解く → ブートラボ オリジナル問題 法規 No.3 問3 電波の型式の記号「F3E」の第1字Fが表す主搬送波の変調の型式は、次のどれか。 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.1 問20 SSB(J3E)電波の周波数成分を表した図は、次のうちどれか。ただし、点線は搬送波成分がないことを示す。 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.2 問21 FM(F3E)送信機において、IDC 回路を設ける目的で、正しいのは次のうちどれか。 解く → 日本無線協会 CBT例題 無線工学 No.3 問20 次の記述の[ ]内に入れるべき字句の組合せで、正しいものはどれか。 SSB(J3E)送信機では、[A]増幅器の入力レベルを制限し、送信... 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.1 問21 次の記述の[ ]内に入れるべき字句の組合せで、正しいのはどれか。 FM(F3E)送信機では、音声信号の[A]の変化に応じて搬送波の[B... 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.2 問21 SSB(J3E)送信機において、平衡変調器の働きとして正しいのは次のうちどれか。 解く → ブートラボ オリジナル問題 無線工学 No.3 問22 SSB(J3E)送信機において、平衡変調器の出力から片側の側波帯だけを取り出すために用いられる回路は、次のうちどれか。 解く →
次の回へ第8回 受信機は信号の通り道で解くスーパヘテロダイン受信機の各段と補助回路の働きを選び、局部発振周波数と影像周波数を計算する問題が取れる。