妨害の正体(高調波・基本波の混入・強い妨害波)と、止める場所(送信機側・受信機側)を読み取って、入れるフィルタや正しい対策を選ぶ問題。混変調のような現象名を選ぶ問題も、この回で取ります。
STEP 1まず1問、見てみる

フィルタの名前より先に、「何を止めて、何を通したいか」を周波数で見てね。
アマチュア局が出した 435 MHz 帯の基本波が、地デジ(470〜710 MHz)のアンテナ直下型ブースタに入り込み、テレビが映らなくなった。地デジアンテナとブースタの間に入れればよいものはどれか。
- 1低域フィルタ(LPF)
- 2トラップフィルタ(BEF)
- 3SWR メータ
- 4ラインフィルタ
ここで多い間違いは、「アマチュアの電波が悪さをしたのだから、送信機の対策でよく見る LPF」と反射で選ぶことです。
この問題で止めたいのは 435 MHz、通したいのは 470〜710 MHz。止めたいほうが、通したいほうより少しだけ低いところにあります。LPF を入れると何が起きるかを、名前ではなく「どこからどこまでを止めるか」で考えないと、この肢は切れません。
もう一つ、問題文には止める場所も書いてあります。アンテナとブースタの間、つまり受信する側です。送信機の高調波対策とは場所が逆です。
今日の問題はすべて、二つの問いから解きます。何が邪魔をしているのか。そしてどこで止めるのか。この二つが決まれば、フィルタの種類はほぼ自動で決まります。

STEP 2覚えること

「低域」「高域」は通すほうの名前。「止めるほう」と読んだら全部逆になるわよ。
まずフィルタの4種類です。名前の「低域」「高域」は、通す側を言っています。ここを「低域を止める」と逆に読むのが、いちばん多い失点の原因です。
4種類のフィルタ
| 通すもの | 止めるもの | 試験でよく出る使い道 | |
|---|---|---|---|
| LPF(低域フィルタ) | 遮断周波数より低い周波数 | 遮断周波数より高い周波数 | 送信機とアンテナの間に入れ、高調波を落とす |
| HPF(高域フィルタ) | 遮断周波数より高い周波数 | 遮断周波数より低い周波数 | テレビのアンテナ端子に入れ、短波(HF)の基本波を落とす |
| BPF(帯域フィルタ) | 決めた帯域だけ | 帯域の外の上側と下側 | 必要な帯域だけを取り出す |
| BEF(帯域除去フィルタ・トラップ) | 決めた帯域以外 | 決めた狭い帯域だけ | 受信側で、特定の妨害波だけを落とす |

次に、妨害の正体を三つに分けます。問題文に出てくる言葉で、どれに当たるかを決めてください。
妨害の正体は三つ
送信機側の対策から整理します。高調波は基本波より高い周波数です。高いほうを止めて低いほう(基本波)を通すのは LPF なので、送信機とアンテナの間に LPF を入れます。
遮断周波数は基本波より高くします。基本波まで止めたら、送信そのものができなくなるからです。7 MHz の送信機を1つのバンドだけで考えるなら、7 MHz は通り、14 MHz の第2高調波は十分に落ちる位置、つまり 7 MHz と 14 MHz の間に置きます。
LPF のほかに、送信機の筐体を確実に接地してしゃへいを良くすること、終段とアンテナとの結合を疎にすること、空中線電力を必要以上に上げないことも、高調波の漏れを減らす方向の対策です。
筐体を「絶縁」する、電力を「大きくする」という肢は、どちらも逆向きです。電力を上げれば高調波も一緒に強くなります。

次は受信側の対策です。基本波の混入は送信機の故障ではないので、送信側に LPF を入れても止まりません。テレビやブースタの入口で、妨害波の周波数だけを止めます。どれを使うかは、止めたい周波数と通したい周波数の位置関係で決まります。
受信側でどれを入れるか


最後に、肢に混ぜられるダミーを片付けておきます。どれも「その妨害を止める部品」ではありません。
肢に混ぜられるダミー
送信機自体の波形の異常も、この分野でときどき出ます。電信送信機の出力波形の「見た目」と原因を組にして覚えます。
送信波形の異常4種
| 波形の見た目 | 原因・起きること | |
|---|---|---|
| キークリック | 立上りと立下りが急すぎて角ばる | 電けんを押した・離した瞬間に、広い周波数範囲に「カチカチ」という妨害が出る。キークリック防止回路で波形の肩をなだらかにして防ぐ |
| チャタリング | 符号が途切れる | リレーの接点が跳ねる |
| 寄生振動 | 頂部に細かい振動(ギザギザ)が重なる | 本来と違う周波数で発振している |
| 電源容量の不足 | 頂部が右下がり | 送信中に電源の電圧が下がっていく |
例題No.3 工学 問25 は、頂部に細かい振動が重なった波形図から原因を選ぶ問題で、正答は寄生振動でした。

STEP 3肢の切り方

正解を探すより、確実に違う肢から消すほうが速いの。測る道具と電源の部品が最初の的よ。
冒頭の例題No.1 工学 問24 を、肢を1つずつ切って解きます。測定器と電源用の部品を先に外し、残った2つを周波数の位置関係で比べます。
例題No.1 工学 問24 を1肢ずつ切る
例題No.2 工学 問24 は同じ場面の穴埋めで、[A]にフィルタ、[B]に「減衰」か「増幅」を入れます。[A]は上と同じ理由で BEF。[B]は、妨害波を増幅したら障害がひどくなるだけなので「減衰」。BEF と減衰の組合せの肢3が答えです。
次に、送信側の問題として例題No.3 工学 問24 を解きます。要旨は「送信機の高調波がアンテナから出ないように[A]を用いる。その遮断周波数は基本波周波数より[B]」です。
例題No.3 工学 問24 を1肢ずつ切る
- ✕
- ✕
- ○

「誤っているもの」を選ぶ形も同じ。対策の向きが逆になっている肢を1つ探すだけよ。
同じ型の残りを一言で
- オリジナルNo.1 工学 問25(高調波による TVI の送信機側の対策で誤り):LPF の挿入、筐体の接地としゃへい、終段とアンテナの結合を疎にする、はどれも高調波を減らす向き。空中線電力を大きくする肢4だけが高調波も一緒に増やす向きで、これが誤り。
- オリジナルNo.3 工学 問25(穴埋め):LPF と接地の組合せ(肢3)。HPF と絶縁はどちらも逆向きとして切れる。
- 例題No.1 工学 問25(他の無線局の受信設備に妨害を与えるおそれがあるもの):蓄電池の使用、電源フィルタの使用、送信電力の低下は、どれも妨害を減らすか関係のない話。妨害を増やすのは高調波の発射だけで、肢4。
- 例題No.2 工学 問25(現象名):強い妨害波の変調が希望波に乗り移るのは混変調(肢1)。平衡変調は SSB 送信機で搬送波を消す回路の名前、過変調は送信機で変調度が 100 % を超えることなので、場所が違う。
STEP 4ひっかけ

LPF の文字を見ても反射で選ばないで。止めたいほうが高いか低いか、先に印をつけてね。
組合せは三つだけ覚えれば足りる
| 入れる場所 | 入れるもの | |
|---|---|---|
| 送信機の高調波 | 送信機とアンテナの間 | LPF(遮断周波数は基本波より高く) |
| HF の基本波がテレビに入る | テレビのアンテナ端子 | HPF |
| 地デジのすぐ下の 435 MHz | ブースタの前(アンテナとブースタの間) | BEF(トラップ) |

妨害の問題に計算はありません。問題文を読んだら、まず「基本波」か「高調波」かに印をつけ、周波数の数字を二つ(止めたいもの・通したいもの)拾います。次に「送信機とアンテナの間」「アンテナとブースタの間」など場所の語に印をつけます。ここまで来れば肢は機械的に切れるので、1問1分以内で済ませ、計算問題に時間を回してください。
STEP 5自分で解く

3問とも、まず「何が邪魔か」「どこで止めるか」を書き出してから肢を見てね。
7 MHz 帯で運用している送信機から 14 MHz の第2高調波が出て、他の局に妨害を与えた。送信機とアンテナの間に入れるものとして、最も適切なものはどれか。
HF 帯で運用を始めたところ、隣家のテレビ受信機に障害が出た。調べると、原因は送信機の高調波ではなく、基本波がテレビのアンテナ入力に入り込んだものだった。隣家の側で行う対策として、最も適切なものはどれか。
アマチュア局の 435 MHz 帯の基本波が、地デジのアンテナ直下型ブースタに混入して受信障害が起きた。対策として誤っているものはどれか。
STEP 6今日のまとめ
今日おぼえたこと
- LPF は低域を「通す」。送信機の高調波は、送信機とアンテナの間の LPF で止め、遮断周波数は基本波より高くする
- 基本波の混入は受信側で止める。HF の基本波ならテレビのアンテナ端子に HPF、地デジのすぐ下の 435 MHz ならブースタの前に BEF(トラップ)
- 送信側の補助の対策は、筐体の接地としゃへい、結合を疎に、電力を上げない
- 混変調は受信機の中で妨害波の変調が乗り移る現象。過変調・平衡変調とは別物
- キークリック(角ばる)・チャタリング(途切れる)・寄生振動(ギザギザ)・電源容量不足(右下がり)
次回はアンテナです。波長 300/f から長さを出し、半波長ダイポールと八木・宇田アンテナの形から指向性を読みます。
本番の問題この回で取れるようになった問題
「例題No.」は公益財団法人日本無線協会が公表している CBT 方式の国家試験の例題、「過去問」は同協会の公表試験問題です(日本無線協会 試験問題。同協会の利用条件に基づき掲載)。「オリジナル」は当サイトの作問です。