
法規は丸暗記より「どの法令の何条か」の地図を先に作るのが近道です。2025年に免許状は免許記録に、懲役は拘禁刑に変わったので、古い問題集の答えは現行条文で確かめてください。
無線従事者試験の法規は、丸暗記で押し切るより、「どの法令の、どの章の話か」という地図を先に作るほうが速く確実に点が取れます。出題の大半は電波法の本体と、その下の政令・総務省令から出ます。地図ができると、初めて見る問題でも「これは運用の話だから運用規則」「これは罰則だから第9章」と当たりがつけられます。
もう1つ大事なのが法改正です。2025年(令和7年)6月1日に刑罰の「懲役」が「拘禁刑」に変わり、10月1日には無線局の「免許状」が廃止されて「免許記録」と「免許事項証明書」に変わりました。それより前に作られた問題集や過去問は旧法のままなので、解説の答えが今の条文と合わない問題があります。この記事では、法令の体系、頻出テーマ、条文の覚え方、改正で変わった点の順に、法規の勉強法をまとめます。

法規は何問出る?資格ごとの重み
まず、目標の資格で法規が何問・何点か確かめましょう。日本無線協会の表によると、第一級陸上無線技術士の法規は20問・2時間で、100点満点のうち60点以上が合格です。第二級・第三級陸上特殊無線技士は無線工学と法規が各12問、第三級アマチュア無線技士は法規16問、第四級アマチュア無線技士は法規12問です。
特殊無線技士やアマチュアでは、法規は試験全体のほぼ半分を占めます。一陸技でも4科目のうちの1科目で、科目合格を使えば法規だけ先に合格しておくこともできます。どの資格でも、法規は計算がなく、勉強した時間がそのまま点に変わりやすい科目です。法規を早めに仕上げて、無線工学に時間を回す配分をおすすめします。
電波法の体系:法律・政令・省令・告示
電波法規は1本の法律ではありません。国会が作る法律(電波法)が骨格を決め、内閣が作る政令(電波法施行令)と、総務大臣が作る省令(電波法施行規則など)が細かい数字や手続を決め、さらに告示が具体的な値を補います。条文の中に「総務省令で定める」とあれば、その中身は省令を見に行く、という関係です。
試験に出る主な法令と中身
| 種類 | 主な中身(試験に出るところ) | |
|---|---|---|
| 電波法 | 法律 | 目的・定義、無線局の免許、無線設備、無線従事者、運用、監督、罰則の骨格 |
| 電波法施行令 | 政令 | 無線従事者の資格ごとの操作の範囲(第3条) |
| 電波法施行規則 | 総務省令 | 業務の分類と定義(第3条)、無線局の種別と定義(第4条)、備え付ける業務書類(第38条)、報告の手続(第42条の5) |
| 無線局免許手続規則 | 総務省令 | 免許の申請、再免許の申請期間(第18条) |
| 無線従事者規則 | 総務省令 | 国家試験、養成課程、無線従事者免許証の再交付・返納(第50条・第51条) |
| 無線局運用規則 | 総務省令 | 無線通信の原則(第10条)、呼出し・応答、試験電波の発射(第39条) |
| 無線設備規則 | 総務省令 | 電波の質(周波数の許容偏差・スプリアス発射など)や送信設備の技術基準の数値 |
電波法そのものは、第1章「総則」から第9章「罰則」まで、次の章立てになっています。試験の問題はほぼこの順番に並べられるので、章の名前をそのまま覚えてしまうのが地図づくりの第一歩です。
電波法の章立て(e-Gov の現行法)
頻出テーマの地図
特殊無線技士・アマチュア・一陸技のどれでも、よく出るテーマは章ごとにほぼ決まっています。次の表を、過去問を解くときの「住所録」として使ってください。問題を解いたら、どの章のどの条文の問題だったかを必ずメモします。
章ごとの頻出テーマ
- 総則 電波法の目的(第1条)、電波・無線局・無線従事者の定義(第2条)
- 無線局の免許 無線局の開設(第4条)、欠格事由(第5条)、予備免許(第8条)、落成後の検査(第10条)、免許の有効期間(第13条)、免許記録(第14条)、変更等の許可(第17条)
- 無線設備 電波の質(第28条)、受信設備の条件(第29条)
- 無線従事者 無線設備の操作(第39条)、資格(第40条)、免許を与えない場合(第42条)、免許の取消し等(第79条)、免許証の返納(無線従事者規則第51条)
- 運用 目的外使用の禁止等(第52条〜第55条)、混信等の防止(第56条)、擬似空中線回路の使用(第57条)、秘密の保護(第59条)、業務書類等の備付け(第60条)、無線通信の原則(運用規則第10条)
- 監督 電波の発射の停止(第72条)、検査(第73条)、非常の場合の無線通信(第74条)、運用の停止等(第76条)、電波の発射の防止(第78条)、報告等(第80条)
- 罰則 秘密の漏えい(第109条)、無免許の開設・運用(第110条)、無資格の操作など(第113条)
資格によって重心が少し違います。アマチュアではアマチュア局の通信(第58条「暗語を使用してはならない」)やアマチュア業務の定義、陸上特殊無線技士では主任無線従事者や業務書類、一陸技ではそれに加えて無線設備規則の技術基準の問題が出ます。自分の資格の過去問で、どの章が何問出ているかを一度数えてみてください。
条文の覚え方:3つの型
条文は、形で覚えると忘れにくくなります。ここでは試験でよく使う3つの型を紹介します。
覚え方の型
- 型1:誰が・いつまでに・何を 主体・期限・行為の3点で覚えます。無線従事者の免許の取消し等は「総務大臣が、免許を取り消し、又は3箇月以内の従事停止」(第79条)。無線従事者が免許の取消しを受けたら「処分の日から10日以内に免許証を返納」(無線従事者規則第51条第1項)、死亡・失そう宣告のときは届出義務者が「遅滞なく」返納(同条第2項)。無線従事者の免許を与えないことができるのは「電波法第9章の罪で罰金以上の刑に処せられ、執行を終わるなどしてから2年」「免許の取消しから2年」(第42条)
- 型2:原則と例外をセットで 第52条は「免許記録に記録されている目的・通信の相手方・通信事項の範囲を超えて運用してはならない」が原則で、例外が遭難通信・緊急通信・安全通信・非常通信・放送の受信など。原則だけ覚えると、例外の肢で落とされます
- 型3:似た言葉を並べて区別 第72条「電波の発射の停止」は電波の質が基準に合わないとき、第76条「運用の停止」は法令違反のとき(3月以内)、第78条「電波の発射の防止」は免許が切れたあと空中線の撤去など。第52条の非常通信は免許人の判断で行う通信、第74条の非常の場合の無線通信は総務大臣が無線局に行わせる通信
無線局運用規則第10条の「無線通信の原則」は4つだけです。必要のない無線通信は行わない、用語はできる限り簡潔に、自局の識別信号を付けて出所を明らかに、正確に行い誤りは直ちに訂正。「暗語を使用してはならない」は第10条ではなく、電波法第58条のアマチュア無線局の通信の規定です。
覚える材料は、問題集の解説だけでなく条文の原文に当たるのが近道です。e-Gov法令検索で電波法を開き、間違えた問題の条文を1本だけ読む。これを毎回くり返すと、条文の言い回しそのものに慣れて、肢の「1箇月」「遅滞なく」「直ちに」の違いに目が止まるようになります。
法改正で古い問題集の答えが変わるところ
ここが最も注意が必要なところです。電波法及び放送法の一部を改正する法律(令和7年法律第27号)により、2025年(令和7年)10月1日から無線局の紙の「免許状」が廃止されました。総務大臣は免許を与えると、免許の内容を電磁的記録の「免許記録」として作り(第14条)、免許人はそれをインターネットで閲覧できます。紙が必要なら「免許事項証明書」の交付を請求します(第14条の2)。

また刑法等の一部を改正する法律により、2025年(令和7年)6月1日から懲役と禁錮が「拘禁刑」に一本化されました。電波法の罰則も、たとえば第110条の無免許の開設は「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」になっています。
改正前(古い問題集)と現行法の違い
| 改正前の書き方 | 現行法 | |
|---|---|---|
| 免許の内容 | 紙の免許状に記載 | 免許記録(第14条、電磁的記録)。紙は免許事項証明書(第14条の2) |
| 記載(記録)事項の変更 | 免許状を提出して訂正を受ける | 免許人は遅滞なく届け出る(第21条第2項)。総務大臣が免許記録を変更 |
| 免許が効力を失ったとき | 1箇月以内に免許状を返納 | 総務大臣が免許記録に失効を記録(第24条)。返納の義務はない |
| 運用の基準 | 免許状に記載されたところによる | 免許記録に記録されているところによる(第52条〜第55条) |
| 備え付ける書類 | 免許状 | 免許記録(閲覧・写し・免許事項証明書のいずれか。施行規則第38条) |
| 罰則の刑 | 懲役 | 拘禁刑(2025年6月1日から) |
古い過去問、たとえば「免許が効力を失ったときは免許状を何日以内に返納するか」という問題は、出題当時は「1箇月以内」が正答でした。今の電波法には返納の規定がないので、現行法で問われれば答えは変わります。逆に、日本無線協会が公表している現在のCBT例題は「免許記録」の言い方で出ています。古い問題集を使うときは、免許状・懲役という言葉が出てきたら、現行法での答えを条文で確かめる習慣をつけてください。
廃止されたのは無線局の「免許状」です。人の資格である「無線従事者免許証」は今もあり、再交付(無線従事者規則第50条)や返納(第51条)の規定もそのまま出題されます。総務省の令和7年9月の資料でも、無線従事者免許証の電子化は「検討中」とされています。「免許状」と「免許証」を取り違えないでください。
2025年10月1日より前に交付された紙の免許状は、免許記録の内容が変わらない限り免許事項証明書とみなされ、そのまま備え付け・掲示に使えます(総務省資料)。試験問題とは別に、実際にアマチュア局などを持っている人は覚えておくと安心です。
期間や期限の数字も、古い解説と現行条文で食い違うことがあります。たとえば再免許の申請期間は、現行の無線局免許手続規則第18条でアマチュア局が「有効期間満了前1箇月以上6箇月を超えない期間」、その他の多くの無線局が「3箇月以上6箇月を超えない期間」です。古い解説の期間と違っていたら、現行の条文を優先してください。
合格までの進め方
法規の勉強の順番
法規は、同じ条文が形を変えて何度も出ます。過去問を3〜4回分解いて条文の住所が書き込めるようになると、新しい問題でも条文が思い浮かぶようになります。そこまで来たら、あとは数字の取り違えをなくす作業です。
ブートラボでの進め方
無線通信ブートラボの法規の問題は、すべての解説を e-Gov の現行条文と照らし合わせて点検し、条文番号や期限が今の法令と合わないところを書き直してあります。問題文と正答は日本無線協会の公表どおりのまま、免許状の返納のように出題当時の法令で正答が決まる25問には、出題画面と結果画面に「法改正の注意」を出して、現行法で何が違うかを1〜2文で示しています。
法規の収録範囲
- 第二級・第三級陸上特殊無線技士 日本無線協会のCBT例題3セットと、平成31年2月期〜令和4年2月期の本試験過去問9期分(法規12問ずつ)。過去問は免許状の時代の問題なので、法改正の注意が特に役に立ちます
- 第三級アマチュア無線技士 CBT例題3セットと、例題と同じ形式・範囲のオリジナル問題3セット(法規16問ずつ)。3アマは過去問が公表されていないためオリジナルで補っています
- 第四級アマチュア無線技士 CBT例題3セット(法規12問ずつ)
- 第一級陸上無線技術士 令和8年1月期・7月期の法規のA問題(15問ずつ)。B問題は未収録です
間違えた問題は SRS 復習に自動で入り、忘れかけたころにもう一度出ます。法規の用語集では、免許記録・業務書類・主任無線従事者・罰則などを現行法で解説し、旧法の言い回しにも一言触れています。例題1セットを本番と同じく最後まで正誤を見ずに解く「本試験形式の通し」で、仕上がりを確かめてください。
よくある質問
法規は何から勉強すればいいですか?
電波法の章立て(総則・免許・無線設備・無線従事者・運用・監督・罰則)を先に覚え、過去問の各問がどの章の何条かを書き込みながら解くのが近道です。間違えた問題は e-Gov で条文の原文を読みます。
古い問題集は使えますか?
使えますが、2025年10月1日の改正で免許状が免許記録に、6月1日の改正で懲役が拘禁刑に変わっています。免許状の返納や訂正の問題は、現行法では答えが変わるので条文で確かめてください。
無線従事者免許証もなくなったのですか?
なくなっていません。廃止されたのは無線局の免許状で、人の資格の無線従事者免許証は今もあり、再交付や返納の規定も出題されます。
「暗語を使用してはならない」は運用規則の無線通信の原則ですか?
違います。無線局運用規則第10条の原則は4つで、暗語の禁止は電波法第58条のアマチュア無線局の通信の規定です。
法規だけ先に合格できますか?
一陸技・二陸技、総合・海上・航空無線通信士では、合格点をとった科目は、試験の月の翌月の初めから3年以内の同じ資格の試験で申請により免除されます。特殊無線技士とアマチュア無線技士はこの対象に入っていません。
参考にした資料
- e-Gov法令検索 電波法
- e-Gov法令検索 電波法施行令
- e-Gov法令検索 電波法施行規則
- e-Gov法令検索 無線局免許手続規則
- e-Gov法令検索 無線従事者規則
- e-Gov法令検索 無線局運用規則
- e-Gov法令検索 無線設備規則
- 総務省 報道資料 無線局の免許状等のデジタル化等(令和7年9月1日)
- 総務省 無線局の免許状等のデジタル化等について(概要)令和7年9月
- 法務省 あかれんが vol.89(拘禁刑の導入)
- 日本無線協会 表1 資格別・科目別試験問題数と試験時間
- 日本無線協会 表2 国家試験の合格基準
- 日本無線協会 国家試験についてのFAQ(科目免除)